蒼き英雄

雨宮結城

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第三章

Part4

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「菊池が、刑務所から何者かと共に脱獄したと、連絡が入った」

「!?菊池が脱獄!?一体誰が…」

「分からない。だが、菊池が何者かと共に脱獄したと言うのは、事実だ」

「その何者って言うのは、菊池の仲間、じゃ、ないんだよな」

「あぁ、何者かと言うのは、今の所不明だが、少なくとも菊池が前に組んでいた者達ではないようだ。何せ、その仲間達は今も刑務所の中だからね」

「菊池は、どうやって脱獄したんだ」

「分からない。連絡で言われたのは、突然、姿が消えたそうだ」

「姿が、突然」

「ねえ青山さん」

「どうしたんだい、ユキ君」

「この司令室に侵入してきた者達がいるって聞いたけど、ここの監視カメラに音声は入ってないの?」

「音声?音声なら、ここの監視カメラがちゃんと記録している…!?そうか」

「はい、もしかしたら、その二人組のどちらか、かもしれません。監視カメラ、見せてもらってもいいですか?」

「あぁ、構わないよ」

ユキは青山に、監視カメラの映像を見せてもらうことができた。そして、その監視カメラから、カインとメギドの会話を聞くことができた。

「カイン、メギド」

「この二人、考えうる限り、いえ、間違いなく、ゲータの知人ですね」

「カインと言う人は、あの世界に向かったようですが、もう一人のメギドと言う人は、こちらの世界に残っていますね」

「恐らく、菊池を逃がしたのは、そのメギドってヤツの仕業だろう」

アスタは、現実世界に留まったメギドが、菊池の一件に関係があるのではと考えていた。

「青山さん、青山さんも、考えてる事は俺達と同じだろ?」

「そうだね、君達が来る前は、僕の推測でしかなかったが、君達も同じ考えなら、確信に近い」

「でもなんにせよ、向こうの世界もこっちの世界も、危険な状況なのは変わらない」

「何か考えがあるの、アスタ」

「そうだな、ユキ、ユキは向こうの世界にいた時、瞬間移動みたいな能力は使えたか?」

「え、うん、瞬間移動なら使えたよ」

「アスタ、一応私も、瞬間移動なら使えます」

「そうか、二人もいるなら大丈夫だ」

「?」

「青山さん、俺達は、ひとまず向こうの世界に行ってくるけど、青山さん達はどうするんですか?」

「僕達は、菊池の行方を探るよ。どこにいるかは分からないが、何かあれば僕の所に連絡が来るし、それに、菊池が何も行動を起こさないとは考えにくいからね」

「分かった。でも行く前に少し待っていてくれないか」

「構わないが、何か作戦があるのか?」

「あぁ」

「分かった。どれくらい待っていればいいんだ?」

「こっちの世界に戻ってくるまでの間だけ、待っていてくれ、長くはかからない」

「分かったよ」

「ありがとう。じゃあ、俺達は行ってくる」

「あぁ、気をつけて」

「あぁ」

アスタ達は、ひとまず向こうの世界に行く為、カプセルの中に入り、向こう側の世界、ソウルワールドへと向かった。

〈そして五分後〉

「…?」

青山達が、司令室でアスタ達を待っていると、瞬間移動で、ユキとサオリが戻ってきた。

「!?まさか、能力を使って戻ってくるとは、ユキ君にサオリ君。…あれ、アスタ君とミユキ君はどうしたんだい?」

「アスタ達は、向こうの世界、ソウルワールドの調査をする為、向こうに残りました。ボクとサオリちゃんは、青山さん達の手伝いをする為に、戻ってきたんです」

「手伝い?」

「はい、アスタが言っていたんです」

〈ソウルワールドにて〉

「…戻ってきた」

「無事皆いるね」

「そうね」

「はい、あれ、なんでアスタさんだけ、初期装備の格好なんですか?」

「ん?あぁこれか、多分だけど、一度この世界で死んじゃっているからな。それがセーブされたから、初期装備なんだと思う」

「…なるほど」

「でも、戦い方は身体も知識も覚えているから、大丈夫だ」

「…それなら良かったです」

「…ところでアスタ、アスタが考えてた作戦って何なの?」

「あぁ、そうだったな。作戦って言うのは、ユキとサオリが使える瞬間移動の能力で、ユキ達には、現実世界、リアルワールドに戻ってほしいんだ」

「!?この姿で戻れるの?」

「あぁ、多分可能だ」

「…でも、何でこの姿で戻るの?」

「それは、リアルワールドに残ったメギドってヤツは、会話を聞いた限り、ゲータの世界から来た。このソウルワールドに来たカインってヤツも同じだが、カインはこのソウルワールドに来たから、この世界の力で戦えるが、メギドの場合はそうはいかない。だから一回この世界に来た。この世界の力で戦う為に」

「ですが、どうしてユキちゃんや私の能力で戻れると思ったんですか?」

「それは、この世界に来たカインも、瞬間移動を使っていたし、ユキもサオリもレベル九十九だろ。だからユキとサオリも同じように、この世界からリアルワールドに行けると思ったんだ」

「なるほど、そういう事ですか」

「…ん?待って」

「どうした?ユキ」

「戻ってもらうって言ったけど、この世界は、アスタ一人で調べるの?」

「あぁ、こっちは一人だし、俺一人で何とかしてみせる」

「一人って、こっちもメギド一人じゃないの?」

「気になったんだ、何でわざわざメギドが菊池を脱獄させたのか。メギドと違って、菊池は普通の人間だ、支配するのが目的なら、菊池がいた所で、足でまといでしかない」

「!?言われてみれば、何故でしょう」

「もしかすると、メギドには魔力を分け与える能力があるんじゃないかな」

「!?」

「もしそうなら、リアルワールドの方が、危険が十分にある。だからユキ達には、リアルワールドでメギド達を止めてほしい。この世界は、俺が何とかする」

「でも…」

「…それなら、私も残ります」

「…ミユキ…」

「アスタさんは強いですが、一人はやっぱり心配ですし」

「ミユキ、ホントに?」

「うん(任せてお姉ちゃん。アスタさんは、私が守るから)」

「…(うん、よろしくね。でもミユキ、無茶はしないで)」

「(うん、もちろん)」

「じゃあ、行こう、サオリちゃん」

「いいの?ユキちゃん」

「うん、ミユキがアスタと一緒にいてくれるなら、大丈夫だから」

「…分かったわ」

「じゃあ、気をつけてな」

「うん、そっちもね」

こうして、アスタとミユキはソウルワールドに残り、ユキとサオリがリアルワールドへと戻ってきたのだった。

「という訳で、手伝いにきました」

「なるほど、確かにそれだと、我々だけではとても止められない。メギドらの相手は、ユキ君達にお願いするよ。我々もできる限りサポートする」

「はい」

そう話していると、青山の元に、一つの連絡が入る。

「ん?これは」

「どうかしたんですか?」

気になり声をかけるサオリ。

「銀座駅で、菊池を見つけたそうだ」
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