蒼き英雄

雨宮結城

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第二章

Part14

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アスタは復活する前、意識不明の中、精神世界で眠っていた。

「…ここは」

アスタはゲータと戦い、プレイヤーを逃がした事は覚えていたが、そこから先の記憶を忘れていた。

「ここは、夢か?俺、まさか死んだのか。でも、俺のすべき事は、もう終わったからな。これで、俺は…」

アスタは、このまま精神世界で消えようとしていた。そんな時、声が聞こえた。

「アスタ」

「!?」

アスタは後ろを振り返る。振り返ると、そこには死んだはずのフェイがいた。

「フェイ、あぁ、やっぱり、俺は死んだのか」

「ううん、ここは、君の精神世界、そして僕は、君の思い出の中のフェイだよ」

「精神、世界?」

「あぁ、君はまだ死んでいない。それに、まだ君には、やるべき事がある」

「やるべき事?」

「あぁ」

「でも、俺は、俺とユウマさんは、ゲータを倒した。だから、もういいんだ。俺はもう、役目を」

「ホントに、そうかな」

「え?…!?」

アスタはもうすべき事はした。もう自分は必要ない。そう言おうとした時、アスタはユキの事を思い出した。

「ユキ」

「今、ユキさん達はモルドというモンスター達と、戦争している」

「戦争…」

「あぁ、それに、今ユキさんや、ヒナさんは絶望的な状況にある」

「え…」

「アスタ、君の、力が必要だ」

「でもフェイ、俺はもう」

「アスタ、君は、人を見捨てるような人間じゃないだろ?僕は知ってるよ。ここから君の事を見てきた、だからこそ言える、アスタ、君はユキさんやヒナさん、ミユキにサオリさんと、たくさんの人に必要とされている。それに、君の人生のレールは、まだ終点じゃない。人生のレールは、自分で作っていくんだ、君はまだ立てる。だから、ほら」

「…」

フェイはアスタに手を差し伸べた。

「俺の人生のレールは、まだ終点じゃない。これから、自分で作っていくんだな」

「あぁ、だから、行こう、皆を助けに」

「…あぁ、分かった。行こう、皆を助けに」

アスタは差し伸べられたフェイの手を握り、精神世界から目覚めた。

「ガアー!」

「うっ、アー!」

「ヒナさん!」

「ガアー!」

モンスターは、ヒナを傷つけ、カオリまでをも傷つけようと、襲ってきた。

「!?…!」

だがその瞬間、車椅子に座っていたアスタが目覚め、剣でモンスター達を倒した。

「…?、!?」

「…」

「アス、タ」

「大丈夫か、ヒナ」

「…全く、お前は、人を待たせるな。でも、おかえり、アスタ」

「あぁ、ただいま、ヒナ。それに、貴方も」

「?私ですか?」

「あぁ、貴方の名前は?」

「私は、カオリです」

「カオリさんか。ありがとう二人共、俺をここで守ってくれて」

「…そんなの当然だろ」

「私も、大した事は」

「でも実際、俺を守ってくれた。ホントに、ありがとう」

「…それよりアスタ」

「あぁ、分かってる。ユキのこの魔力の感じ、大変な状況だ。俺は向こうに行ってくる。ヒナ達はここで、信じて待っていてくれ」

「あぁ」

「はい!」

「…」

アスタは、ヒナとカオリを助けた後、すぐにユキの元へと飛んで行った。そしてモルドの触手を斬り、モルドを蹴り飛ばし、ユキを救い、ユキをミユキに任せ、モルドとの戦いに挑んだ。

「おかえり、アスタ」

「あぁ、ただいま、ユキ」

「あ、お姉ちゃん」

「アイツを倒してくる、だから悪い、もう少しだけ待っていてくれ」

「うん」

アスタは背中にあった剣を抜き、それと同時に、覚醒状態へと入った。

「さぁ、俺とお前の戦いを!今始めよう」

「あぁ、ここで終わらせる」

アスタとモルドは、お互いに構え、戦闘態勢に入った。今ここに、アスタとモルドの決戦が始まろうとしていた。

「そう言えば、この戦場の奥の村で、モンスター共が村の住人を襲っていたはずだが、それは良いのか?」

「心配いらねーよ。さっき倒してきたからな」

「なるほど、倒してここに来たのか」

「あぁ、お前を倒す為にな」

「そうか、なら、来い!アスタ!」

「っ!ハァーァ!」

アスタは覚醒した状態でモルドへと向かっていった。それと同じ頃、サオリの方も、ミョルドとサキとの決着をつけようとしていた。

「何だ、一体何が」

「(この魔力、アスタさんのにスゴく似てる、ひょっとして、これはアスタさん、良かった、目が覚めて、ユキちゃんを助けてくれたんですね)なら、私も」

サオリは刀を鞘に収め、構えた。

「ん?何を」

「神道流抜刀術、阿修羅」

「!?」

「…」

サオリはこの技を決めるべく、集中した。

「!何て魔力量、このままでは、っ!殺しなさい!」

「はい」

サキは構えて動かないサオリに攻撃をしかけ、殺そうとした。だが、サオリの頸をサキの刀の刃が通ろうとした瞬間、サオリは刀を抜き、サキを斬るのではなく、サキの持っていた刀を狙い、サキの攻撃をはじいた。

そしてサキの刀は空高く飛び、隙だらけになったサキを、サオリは刀の茎の部分をサキの腹に当て、サキを気絶させた。そして気絶したサキを、サオリは受け止めた。

「ウッ!アッ…」

「…よく、一人で頑張りましたね。お疲れ様です。サキさん、あなたはとても強い剣士ですが、まだ内に秘めている力を感じます、その力を引き出す為にも、もっともっと自身を鍛え、剣を磨き、高めていってください。そうすればあなたは、誰にも負けない強い剣士になります。だから、頑張ってください。応援しています。そして、今はゆっくりと、自分を休めていてください」

そう言うと、サオリはサキを抱え、瞬間移動で、ヒナ達がいる村まで行き、ヒナにサキを託した。

「!?サオリ」

「ヒナちゃん、サキさんをお願いします」

「!?サキ様!」

「では」

サオリはミョルドとの勝負をつける為、すぐミョルドのいた場所に戻った。

「!?」

「…」

「くっ、まさか彼女が敗れるとは」

「他のモンスター達は、皆さんに任せるとして、あとは、あなただけですね、ミョルド」

「くっ、こうなったら」

「?」

「…ふん」

ミョルドは、手に持っていた杖を上にあげ、何かをしようとしていた。

「何を」

ミョルドは、一対一の戦いではサオリには勝てないと、先程のサキとの戦いを見て確信し、最後の手段として、モルドと融合することにしたのだ。そしてミョルドは、紫の球体の光に包まれ、モルドの元へと向かって行った。

「!?しまった!」

サオリは、ミョルドを逃がすまいと、ミョルドを追った。

「くっ、逃がしませんよ」

そして、少し時は戻り、アスタとモルドは。

「っ!」

「ふんっ!」

アスタとモルドは、ほぼ互角の戦いをしていた。

「ハァ!」

「っ!おらっ!」

「っ!」

「ふん、流石だな、アスタ!」

「っ!」

「ここまでの実力、さすがゲータを倒した英雄だな、俺と戦うに値する、さすが俺が認めた漢の力だ」

「そりゃあどうも、でも悪いが、遊びはここまでだ」

ほぼ互角ながらも、相手の弱点を常に攻撃しているアスタと、純粋に戦いを楽しんでいるモルド。両者の戦いの圧に、ユキとミユキが入る余地は無かった。

「凄い」

「アスタさんに、ここまでの力が」

ユキとミユキは、アスタとモルドの戦いを、ただ見ている事しかできなかった。そんな中、モルドと融合すると決めたミョルドが、モルドの体内に入り、モルドと融合してしまう。

「ん、何だ」

「!この魔力、ミョルドか」

「これは、融合」

「ふんっ、ミョルドよ。この俺をここまで最高な気分にしてくれるとはな!最高だよ、ミョルド!」

「っ(融合して、さらに魔力が上がった)」

「ハーハッハッハ!」

「…(ちと厄介になったな)」

「助太刀します」

「!?アンタは」

「私はサオリです。時間がないので手短に話しましょう。アスタさん、私がヤツの弱点をついて、隙をつくります」

「!アンタも気づいたのか」

「はい。ヤツの魔力量、確かに上がりはしましたが、ミョルド自身の魔力の部分だけがとても弱い。私はそこを狙います。アスタさんは、隙が出来次第、ヤツの核を破壊してください」

「あぁ!分かった!」

「ハーハッハ!止められるものなら止めてみろ、この強大な力、この力があれば、俺は無敵だぁー!」

「いきますよ、アスタさん」

「あぁ!」

「ハァー、神道流奥義、神道!」

サオリの神道流奥義、神道は、サキがモルドに対して使った時よりも、遥かに強く、最速の剣となった。そしてそれを、ミョルドと融合したモルドに対して、サオリが神道をぶつけ、見事モルドの隙をつくることに成功した。

「ハァーァ!」

「うっ、ぐは!な、なに!?」

「!(ここだ)、ハァー!」

モルドに隙ができ、このチャンスを生かす為、アスタはすかさず集中し、覚醒状態の魔力を剣に込め、それをモルドの核めがけて、攻撃を仕掛けた。そして見事、モルドの核に剣が刺さった。

「うっ、くっ、こんな、こんな所で」

「いや、これで終わりだぁ!」

「うっ、アーーー!」

ついにモルドの核を貫き、ミョルドとモルド、二人を倒すことに成功した。そして、ミョルドを倒したことにより、ミョルドによって、復活、召喚されたモンスターは、全てキューブへ戻った。この戦争は、剣士達の活躍により、終わったのだった。

「終わった、のか」

「…良かっ、た…」

アスタとサオリの戦いを近くで見ていたユキは、嬉しさと疲労により、一人眠りについた。

「お姉ちゃん?あ、寝ちゃった」

「…ユキはしょうがないな、こんな状況で寝ちゃうとは、いや、こんな状況だから、かもな」

「はい、そうですね、アスタさん」

アスタとミユキは、安心そうに寝ているユキを見て、ふと安心する。戦いが終わり、協力し、生き残った剣士達は、それぞれ帰るべき所へ帰っていく者もいれば、死んでしまった剣士に対して、合掌する剣士もいた。

サオリとアスタは、そんな剣士達にお礼をしに行った。ミユキの分も、サオリがお礼していた。無事感謝も終え、ユキとミユキの元へと戻ってきたアスタとサオリ。

「ユキ、ぐっすりだな」

「はい、余程安心したんだと思います」

「ユキちゃんたら、こんな時に寝ちゃうなんて、流石ユキちゃんね」

「あぁ、そうだな。…サオリさん、さっきはありがとう、お陰でモルド達に勝てた」

「私は大した事はしていませんよ、アスタさんの力があったからこそ、勝てたんです」

「…ありがとう」

「いえ、あと、私の事は、サオリで良いですよ」

「…あぁ」

アスタとサオリは初対面だったが、戦いを通して仲良くなり、名前で呼び合える仲になった。

「さて、俺達も、ヒナ達のいる所へ…」

会話が終わり、皆でヒナ達のいる所へ行こうとした時、空から何かが飛んできた。

「!?」

「何だ」

地面に強く降り立ったソレは、土煙をおこし、ソレはまだ見えなかった。しかし、だんだんとなくなり、ソレがついに見えてきたアスタ達。その姿は、男の異世界人のようだった。

「…誰だ」

「やっと会えたな、アスタ」

「?誰だ」

「俺の名前はゲータだ」

「!?」
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