8 / 78
第一章
Part8
しおりを挟む
ヒナを助ける、その意志が固まった三人、アスタ、ユキ、ミユキ。三人は、ヒナを救う為、第十五階層へと向かった。その頃、ヒナは。
「んっ、うっ、ん~、!?、ここは…」
ヒナは鎖で縛られていた。
「目が覚めたかい」
「・・何者だ、お前は」
「名乗る程の者じゃない。でもそうだね、強いて言うなら、君を消す者だ」
「…何故すぐに殺さなかった」
「あそこでは人目が多かったからね。人目がない場所で、確実に殺さねばならなかった。イレギュラーの存在である君をね」
「なるほど、どうしても私を消したいらしいな」
「あぁ、それほどまでに君は、イレギュラーの存在と言う訳だ」
「ふっ」
「何がおかしい」
「このまま私が、ただ黙って殺されると思うか?」
「抵抗しようと言うのか?」
「違うさ、アスタは、人を見殺しにするような人間じゃない。私は信じている、アスタがきっと助けにきてくれるとな」
「ふっ、それは無駄な願いだな。ヤツにはもうそこまでの力はない。親友も仲間も失い、ヤツにはもう何もない」
「力の問題じゃない。アスタは、アスタは確かに大事な親友も仲間も失ってしまった。だが、それでも、私や誰かが困っていたり、ピンチの時は、必ず助けに来る。それがアスタと言う男だ」
ヒナは三ヶ月という短い付き合いではあるが、それまでのアスタと過ごした時の中で、確かに感じていた。
「何故そこまで言いきれる」
「ふん、私はアスタのパートナー、仲間だからな。伊達にアスタと一緒にいないさ」
「そうか、だが残念だな。おしゃべりの時間はもう終わりだ」
「っ(アスタ)」
「さらばだ。イレギュラーの少女よ」
「(アスタ!)」
ヒナは最期まで、アスタを信じながらも、死を覚悟した、その時。この謎の男に連絡が入る。
「応答してください!」
「んっ、なんだ」
「緊急事態です。何者か分かりませんが、正体不明の二名の者に襲撃を受けています!」
「…なんだと」
「!?アスタ」
ヒナは、助けに来たのがアスタと予感し、嬉しくなる。その頃外では、何者かによる襲撃が続いていた。
「くっ、何だこの鎖」
「う、動けん」
謎の男の部下の二人は、一人の鎖使いの剣士の能力によって、動けずにいた。
「ハァー!」
そこを一人の剣士に狙われ、敗れる。
「うわー」
この二人組の正体は、ヒナを助けに来た、ユキとミユキだった。二人もまた、正体がバレないよう、マントのようなもので身体を隠し、フードで顔を隠していた。
「何者なんだ、コイツら」
「強すぎる!」
「ボス!我々だけでは対処できません!どうかボスも!」
「仕方ない、お前ら、コイツをしっかり監視しとけ」
「はっ!」
ボスは部下二人にヒナの監視を命じ、外へと向かった。しかし、それこそが、ユキ達の狙いだった。遡ること数分前・・・
〈数分前〉
「あそこか」
アスタ達は、洞窟の岩の陰に隠れ、建物と周りの様子をうかがっていた。
「これからどうするかだが、ユキ、ユキの言ってた考えって何なんだ?」
「それはね、ボクとミユキがバレないように、建物の外にいるヤツらを相手して囮になるから、アスタには、その間に建物の中へ入ってほしい。そしてヒナさんを助けて。こんな感じなんだけど、どうかな」
「あぁ、文句ないぜ」
「私も良い考えだと思う」
「ありがとう、じゃあ、これでいこう」
作戦は決まり、実際に作戦は、相手をひきつけ、そこに敵のボスまでひきつける事に成功し、大成功の形となった。
〈現在〉
敵のボスと入れ替わりのような形で、アスタは別ルートで地下に潜入し、ヒナの救出に向かった。
「ん?誰だ貴様」
「ヒナはかえしてもらうぜ」
「アスタ!」
アスタは敵の部下達に迫り、剣を振るった。戦力差は明らかにアスタの方が敵を上回っていた為、難なく敵を倒すことができた。
「コイツっ、うわぁ!」
「貴様っ、うわぁ!」
敵の部下二名を倒したアスタは、鎖で縛られていたヒナの方へ行き、剣で鎖を斬り、ヒナを助けだすことに成功した。
「んっ」
鎖を斬り、落ちてきたヒナを、アスタは受け止めた。
「大丈夫か、ヒナ」
「あぁ、私は大丈夫だ」
「悪い、待たせた」
「気にするな、今こうして助けてくれたじゃないか」
「…ヒナ」
「アスタ…私は、信じて待っていたぞ」
「あぁ、ありがとう、俺を信じてくれて」
「…他にも誰か来てくれたのか?」
「あぁ、ユキとミユキが、ヒナを助ける為に、協力してくれたんだ」
「そうだったのか」
「あぁ、さあ、逃げるぞ」
「あぁ、そうだな」
ヒナを助けだしたアスタ、アスタはヒナと共に、外へと向かった。同じ頃、外ではまだ、戦闘が行われていた。
「うわー!」
敵を確実に一人ずつ倒していくユキ達。そこへ敵のボスがとうとう姿を現した。
「んっ」
ボスの気配を察知したユキ。
「…」
敵のボスは、味方の有様に落胆していた。
「君が首謀者か」
「…君達が何者か知らないが、やってくれたな」
フードから顔が見え、目を見開き、睨む敵のボス、そこに凄まじい殺気を感じ、警戒するユキ。
「んっ…」
既に警戒していたユキだが、ボスも戦闘態勢に入り、腰に付けていた剣を抜き、ユキに向かって、全速力で向かっていった。
「んっ!」
敵から振り下ろされた剣を避け、ユキも反撃する。ユキも敵に剣を振り下ろした。そしてその剣は、見事敵を斬った。
「くっ、何だ、今の攻撃は」
「…」
「ふんっ、これがお前の実力か」
「(この人、まだ何か隠してるな)」
「まさか、これを使う時がくるとはな」
「…」
「ふんっ、ふん!」
「!?」
ボスは、戦いを早く終わらせ、ヒナを殺す為に、ある行動をとった。それは、自分の腕を切り落とす行為だった。
「!?なにを」
いきなりの行動に、ユキも驚く。
「これで、貴様ら全員、終わりだ」
ボスの目的は、ボス自身にある覚醒の力を呼び覚ますことだった。そして、ボスの斬られた腕は、白いエネルギーの集合体のような腕となった。そして、その腕を使い、ユキによって倒されたボスの部下達を自身に取り込み、吸収していき、先程までの魔力量やパワーが、部下を吸収した事により、パワーアップしていった。
「んっ!」
さすがのユキも、警戒をしていなかった訳ではないが、より警戒せざるおえない状況となった。同じ頃、アスタとヒナも、外へと脱出した。
「何なんだよ、アレ」
「あれが、ヤツにとっての切り札か」
「お姉ちゃん」
ミユキも戦っていたが、敵のボスの行動に、自分では足でまといになると判断し、姉であるユキを見守ることにしたミユキ。ボスの部下を吸収し終わったボスは、身体全体が白いエネルギーに覆われた、とても人とは思えない姿に変化を遂げていた。
「ハァーハハハハ」
「…」
険しい顔で、ボスを見るユキ。ユキは何か打開策がないか考えていた。
「(何か、何かないか、ヤツを倒す方法は)」
「あの力は、一体」
「あれは恐らく、完成形ではない、ヤツの覚醒した姿だ」
「あれが、覚醒。…あれで完成形じゃないって」
「あぁ、今のヤツは、魔力を周りに放出していても、魔力が溢れる程ある化け物だ。だが本来の覚醒は、ものすごい魔力量を内に留めることで完成となる」
「内に留める…」
「ふっ、とっとと終わらせてしまおう」
ボスは、早くヒナを殺す為、手短に終わらせることにした。右手の人差し指を、ユキに向け、魔力による光線をユキの心臓に、向かって放った。
「っ!」
ユキは反応し、剣で防いだ。
「くっ、ハアー!」
ユキは何とかボスの光線を防ぎ、ボスの向かっていき、剣を振るった。
「…」
そんなユキの攻撃を、敵のボスは片手で止めようとしたが、未完成の覚醒の状態ですら、ユキの攻撃にはかなわなかった。ボスはユキに斬られる。そしてボスとユキは一旦距離をとった。
「くっ、これでも勝てないか、なら」
ボスは、攻撃の矛先をユキから、ミユキに変えた。そしてミユキに向かって、ボスは光線を放った。
「ふんっ!」
「っ!ミユキ!」
ユキはミユキを守る為、ボスの光線からミユキを守った。
「…!?お姉ちゃん!」
「くっ、うっ」
「お姉ちゃん!」
「ふっ、さすがのヤツもこの光線は効いたようだな」
「お姉ちゃん!お姉ちゃん!」
「うっ…」
「ふっ、これで、終わりだ」
「!?…!」
「ん?」
「…」
ミユキは、ユキを守る為、ユキを守る姿勢をとった。
「ミ、ミユキ」
ユキも立ち上がろうとするが、ボスによる光線の影響で立てずにいた。そんな状況をアスタは見ることにしたできなかった。そしてアスタは、そんな何もできない自分に怒りを感じていた。
「くっ(俺は、何もできないのか、こんな状況なのに、俺は…)!?」
「…アスタ?」
アスタはヒナを下ろし、ある賭けに出る。
「ちょっと賭けになるかもだけど、やってみる」
そう言うとアスタは、少し前に出て、背中の剣を抜き、ヤツに向かって構えた。ここで魔力剣を使おうとも考えたが、ボスの中の闇の力がとても戻せるレベルではなくなっていた為、アスタは常に持ってる剣を選び、抜いた。
「(今の俺にできるのか、いや、できるかできないかじゃない、やるんだ!)」
そうアスタは自分に言い聞かせ、前にダンジョンで練習した覚醒状況になる為、集中した。
「…」
だが、化け物に変わったとは言え、元は人間だった者にやったことがない為、アスタは緊張と不安で、手が震え、集中できずにいた。
「(ダメだ、今のままじゃ、アイツを倒せない。集中しなきゃ、ダメなのに)何で、集中できない」
アスタは、やってみるとは言ったものの、緊張と不安で、少し諦めてかけてしまいそうだったその時、ヒナがアスタの手を握り、アスタを支えた。
「大丈夫だアスタ、自分を信じるんだ。アスタならできる、私もいる。一人じゃ無理でも、二人でなら、きっとできる。さあ、アイツを倒すぞ」
「…おう!」
その言葉に支えられ、アスタはヒナに感謝し、アスタは再び、緊張と不安、どちらとも消し飛んで、集中することができた。
「ハァー」
アスタは全身からでる、魔力を感じ、それを極限まで上げる為、集中した。すると、前に感じ、味わった覚醒の力が、全身にみなぎってくるのが分かった。
「(くっ、このままじゃ)!?アスタ…」
その言葉を聞き、ボスもミユキも、アスタの方を向いた。
「ハァー」
「…アスタさん」
「ハァーァー」
アスタの極限までの集中で、アスタは遂に、覚醒の力をその身に宿すことに成功した。そして、アスタの姿も、白い髪に赤い瞳と、変化した。そして、それに合わせるかのように、魔力量やパワーも格段に上がった。
その脅威に気づいたボスは、標的をアスタへと変えた。だが、アスタの方へ光線を打とうとしたその瞬間、アスタの姿が消えた。だがアスタは消えたのではなく、通常の目では見えない速さで、ボスに接近し、ボスの核に剣を刺した。
「うっ、この、こんな力に」
「ハァー!」
「うっ、殺られる?この、俺がー!」
「ハァー!」
「うっ、アー!」
アスタはボスの核を貫き、ボスは、白い光と共に、消滅した。
「ハァ、ハァ、ハァ」
集中が切れ、アスタは黒い髪に黒い瞳の通常の状態へと戻った。
「アスタ…」
「アスタ、さん」
ユキもミユキも、あまりの出来事に、言葉が出てこなかった。
「勝ったな、アスタ」
「あぁ、ありがとう、ヒナ」
「お礼なんていいさ、私達はパートナーだろ?」
「あぁ、そうだな。あ、二人共、大丈夫か」
「は、はい。私は大丈夫ですが、お姉ちゃんが」
「大丈夫だよミユキ、ボクも大丈夫だから」
「…良かった」
「…」
二人共何とか無事で、安心するアスタ。
「アスタさん、さっきのは、一体」
「さっきのは、俺の中にあった覚醒の力なんだ」
「覚醒の力…」
「なあ二人共、この後時間あるか?」
「はい、私は大丈夫です」
「ボクも大丈夫。でも、どうして?」
「二人に話したいことがあるんだ」
「話すのか、アスタ」
「あぁ、二人なら信用できる」
「…まあ確かに、そうだな」
「話って?」
「この世界の秘密について」
アスタは、ヒナの他に、信用に値するユキとミユキには、話すべきだと判断し、二人に、この世界の秘密について、話すことに決めた。
「んっ、うっ、ん~、!?、ここは…」
ヒナは鎖で縛られていた。
「目が覚めたかい」
「・・何者だ、お前は」
「名乗る程の者じゃない。でもそうだね、強いて言うなら、君を消す者だ」
「…何故すぐに殺さなかった」
「あそこでは人目が多かったからね。人目がない場所で、確実に殺さねばならなかった。イレギュラーの存在である君をね」
「なるほど、どうしても私を消したいらしいな」
「あぁ、それほどまでに君は、イレギュラーの存在と言う訳だ」
「ふっ」
「何がおかしい」
「このまま私が、ただ黙って殺されると思うか?」
「抵抗しようと言うのか?」
「違うさ、アスタは、人を見殺しにするような人間じゃない。私は信じている、アスタがきっと助けにきてくれるとな」
「ふっ、それは無駄な願いだな。ヤツにはもうそこまでの力はない。親友も仲間も失い、ヤツにはもう何もない」
「力の問題じゃない。アスタは、アスタは確かに大事な親友も仲間も失ってしまった。だが、それでも、私や誰かが困っていたり、ピンチの時は、必ず助けに来る。それがアスタと言う男だ」
ヒナは三ヶ月という短い付き合いではあるが、それまでのアスタと過ごした時の中で、確かに感じていた。
「何故そこまで言いきれる」
「ふん、私はアスタのパートナー、仲間だからな。伊達にアスタと一緒にいないさ」
「そうか、だが残念だな。おしゃべりの時間はもう終わりだ」
「っ(アスタ)」
「さらばだ。イレギュラーの少女よ」
「(アスタ!)」
ヒナは最期まで、アスタを信じながらも、死を覚悟した、その時。この謎の男に連絡が入る。
「応答してください!」
「んっ、なんだ」
「緊急事態です。何者か分かりませんが、正体不明の二名の者に襲撃を受けています!」
「…なんだと」
「!?アスタ」
ヒナは、助けに来たのがアスタと予感し、嬉しくなる。その頃外では、何者かによる襲撃が続いていた。
「くっ、何だこの鎖」
「う、動けん」
謎の男の部下の二人は、一人の鎖使いの剣士の能力によって、動けずにいた。
「ハァー!」
そこを一人の剣士に狙われ、敗れる。
「うわー」
この二人組の正体は、ヒナを助けに来た、ユキとミユキだった。二人もまた、正体がバレないよう、マントのようなもので身体を隠し、フードで顔を隠していた。
「何者なんだ、コイツら」
「強すぎる!」
「ボス!我々だけでは対処できません!どうかボスも!」
「仕方ない、お前ら、コイツをしっかり監視しとけ」
「はっ!」
ボスは部下二人にヒナの監視を命じ、外へと向かった。しかし、それこそが、ユキ達の狙いだった。遡ること数分前・・・
〈数分前〉
「あそこか」
アスタ達は、洞窟の岩の陰に隠れ、建物と周りの様子をうかがっていた。
「これからどうするかだが、ユキ、ユキの言ってた考えって何なんだ?」
「それはね、ボクとミユキがバレないように、建物の外にいるヤツらを相手して囮になるから、アスタには、その間に建物の中へ入ってほしい。そしてヒナさんを助けて。こんな感じなんだけど、どうかな」
「あぁ、文句ないぜ」
「私も良い考えだと思う」
「ありがとう、じゃあ、これでいこう」
作戦は決まり、実際に作戦は、相手をひきつけ、そこに敵のボスまでひきつける事に成功し、大成功の形となった。
〈現在〉
敵のボスと入れ替わりのような形で、アスタは別ルートで地下に潜入し、ヒナの救出に向かった。
「ん?誰だ貴様」
「ヒナはかえしてもらうぜ」
「アスタ!」
アスタは敵の部下達に迫り、剣を振るった。戦力差は明らかにアスタの方が敵を上回っていた為、難なく敵を倒すことができた。
「コイツっ、うわぁ!」
「貴様っ、うわぁ!」
敵の部下二名を倒したアスタは、鎖で縛られていたヒナの方へ行き、剣で鎖を斬り、ヒナを助けだすことに成功した。
「んっ」
鎖を斬り、落ちてきたヒナを、アスタは受け止めた。
「大丈夫か、ヒナ」
「あぁ、私は大丈夫だ」
「悪い、待たせた」
「気にするな、今こうして助けてくれたじゃないか」
「…ヒナ」
「アスタ…私は、信じて待っていたぞ」
「あぁ、ありがとう、俺を信じてくれて」
「…他にも誰か来てくれたのか?」
「あぁ、ユキとミユキが、ヒナを助ける為に、協力してくれたんだ」
「そうだったのか」
「あぁ、さあ、逃げるぞ」
「あぁ、そうだな」
ヒナを助けだしたアスタ、アスタはヒナと共に、外へと向かった。同じ頃、外ではまだ、戦闘が行われていた。
「うわー!」
敵を確実に一人ずつ倒していくユキ達。そこへ敵のボスがとうとう姿を現した。
「んっ」
ボスの気配を察知したユキ。
「…」
敵のボスは、味方の有様に落胆していた。
「君が首謀者か」
「…君達が何者か知らないが、やってくれたな」
フードから顔が見え、目を見開き、睨む敵のボス、そこに凄まじい殺気を感じ、警戒するユキ。
「んっ…」
既に警戒していたユキだが、ボスも戦闘態勢に入り、腰に付けていた剣を抜き、ユキに向かって、全速力で向かっていった。
「んっ!」
敵から振り下ろされた剣を避け、ユキも反撃する。ユキも敵に剣を振り下ろした。そしてその剣は、見事敵を斬った。
「くっ、何だ、今の攻撃は」
「…」
「ふんっ、これがお前の実力か」
「(この人、まだ何か隠してるな)」
「まさか、これを使う時がくるとはな」
「…」
「ふんっ、ふん!」
「!?」
ボスは、戦いを早く終わらせ、ヒナを殺す為に、ある行動をとった。それは、自分の腕を切り落とす行為だった。
「!?なにを」
いきなりの行動に、ユキも驚く。
「これで、貴様ら全員、終わりだ」
ボスの目的は、ボス自身にある覚醒の力を呼び覚ますことだった。そして、ボスの斬られた腕は、白いエネルギーの集合体のような腕となった。そして、その腕を使い、ユキによって倒されたボスの部下達を自身に取り込み、吸収していき、先程までの魔力量やパワーが、部下を吸収した事により、パワーアップしていった。
「んっ!」
さすがのユキも、警戒をしていなかった訳ではないが、より警戒せざるおえない状況となった。同じ頃、アスタとヒナも、外へと脱出した。
「何なんだよ、アレ」
「あれが、ヤツにとっての切り札か」
「お姉ちゃん」
ミユキも戦っていたが、敵のボスの行動に、自分では足でまといになると判断し、姉であるユキを見守ることにしたミユキ。ボスの部下を吸収し終わったボスは、身体全体が白いエネルギーに覆われた、とても人とは思えない姿に変化を遂げていた。
「ハァーハハハハ」
「…」
険しい顔で、ボスを見るユキ。ユキは何か打開策がないか考えていた。
「(何か、何かないか、ヤツを倒す方法は)」
「あの力は、一体」
「あれは恐らく、完成形ではない、ヤツの覚醒した姿だ」
「あれが、覚醒。…あれで完成形じゃないって」
「あぁ、今のヤツは、魔力を周りに放出していても、魔力が溢れる程ある化け物だ。だが本来の覚醒は、ものすごい魔力量を内に留めることで完成となる」
「内に留める…」
「ふっ、とっとと終わらせてしまおう」
ボスは、早くヒナを殺す為、手短に終わらせることにした。右手の人差し指を、ユキに向け、魔力による光線をユキの心臓に、向かって放った。
「っ!」
ユキは反応し、剣で防いだ。
「くっ、ハアー!」
ユキは何とかボスの光線を防ぎ、ボスの向かっていき、剣を振るった。
「…」
そんなユキの攻撃を、敵のボスは片手で止めようとしたが、未完成の覚醒の状態ですら、ユキの攻撃にはかなわなかった。ボスはユキに斬られる。そしてボスとユキは一旦距離をとった。
「くっ、これでも勝てないか、なら」
ボスは、攻撃の矛先をユキから、ミユキに変えた。そしてミユキに向かって、ボスは光線を放った。
「ふんっ!」
「っ!ミユキ!」
ユキはミユキを守る為、ボスの光線からミユキを守った。
「…!?お姉ちゃん!」
「くっ、うっ」
「お姉ちゃん!」
「ふっ、さすがのヤツもこの光線は効いたようだな」
「お姉ちゃん!お姉ちゃん!」
「うっ…」
「ふっ、これで、終わりだ」
「!?…!」
「ん?」
「…」
ミユキは、ユキを守る為、ユキを守る姿勢をとった。
「ミ、ミユキ」
ユキも立ち上がろうとするが、ボスによる光線の影響で立てずにいた。そんな状況をアスタは見ることにしたできなかった。そしてアスタは、そんな何もできない自分に怒りを感じていた。
「くっ(俺は、何もできないのか、こんな状況なのに、俺は…)!?」
「…アスタ?」
アスタはヒナを下ろし、ある賭けに出る。
「ちょっと賭けになるかもだけど、やってみる」
そう言うとアスタは、少し前に出て、背中の剣を抜き、ヤツに向かって構えた。ここで魔力剣を使おうとも考えたが、ボスの中の闇の力がとても戻せるレベルではなくなっていた為、アスタは常に持ってる剣を選び、抜いた。
「(今の俺にできるのか、いや、できるかできないかじゃない、やるんだ!)」
そうアスタは自分に言い聞かせ、前にダンジョンで練習した覚醒状況になる為、集中した。
「…」
だが、化け物に変わったとは言え、元は人間だった者にやったことがない為、アスタは緊張と不安で、手が震え、集中できずにいた。
「(ダメだ、今のままじゃ、アイツを倒せない。集中しなきゃ、ダメなのに)何で、集中できない」
アスタは、やってみるとは言ったものの、緊張と不安で、少し諦めてかけてしまいそうだったその時、ヒナがアスタの手を握り、アスタを支えた。
「大丈夫だアスタ、自分を信じるんだ。アスタならできる、私もいる。一人じゃ無理でも、二人でなら、きっとできる。さあ、アイツを倒すぞ」
「…おう!」
その言葉に支えられ、アスタはヒナに感謝し、アスタは再び、緊張と不安、どちらとも消し飛んで、集中することができた。
「ハァー」
アスタは全身からでる、魔力を感じ、それを極限まで上げる為、集中した。すると、前に感じ、味わった覚醒の力が、全身にみなぎってくるのが分かった。
「(くっ、このままじゃ)!?アスタ…」
その言葉を聞き、ボスもミユキも、アスタの方を向いた。
「ハァー」
「…アスタさん」
「ハァーァー」
アスタの極限までの集中で、アスタは遂に、覚醒の力をその身に宿すことに成功した。そして、アスタの姿も、白い髪に赤い瞳と、変化した。そして、それに合わせるかのように、魔力量やパワーも格段に上がった。
その脅威に気づいたボスは、標的をアスタへと変えた。だが、アスタの方へ光線を打とうとしたその瞬間、アスタの姿が消えた。だがアスタは消えたのではなく、通常の目では見えない速さで、ボスに接近し、ボスの核に剣を刺した。
「うっ、この、こんな力に」
「ハァー!」
「うっ、殺られる?この、俺がー!」
「ハァー!」
「うっ、アー!」
アスタはボスの核を貫き、ボスは、白い光と共に、消滅した。
「ハァ、ハァ、ハァ」
集中が切れ、アスタは黒い髪に黒い瞳の通常の状態へと戻った。
「アスタ…」
「アスタ、さん」
ユキもミユキも、あまりの出来事に、言葉が出てこなかった。
「勝ったな、アスタ」
「あぁ、ありがとう、ヒナ」
「お礼なんていいさ、私達はパートナーだろ?」
「あぁ、そうだな。あ、二人共、大丈夫か」
「は、はい。私は大丈夫ですが、お姉ちゃんが」
「大丈夫だよミユキ、ボクも大丈夫だから」
「…良かった」
「…」
二人共何とか無事で、安心するアスタ。
「アスタさん、さっきのは、一体」
「さっきのは、俺の中にあった覚醒の力なんだ」
「覚醒の力…」
「なあ二人共、この後時間あるか?」
「はい、私は大丈夫です」
「ボクも大丈夫。でも、どうして?」
「二人に話したいことがあるんだ」
「話すのか、アスタ」
「あぁ、二人なら信用できる」
「…まあ確かに、そうだな」
「話って?」
「この世界の秘密について」
アスタは、ヒナの他に、信用に値するユキとミユキには、話すべきだと判断し、二人に、この世界の秘密について、話すことに決めた。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる