蒼き英雄

雨宮結城

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第一章

Part8

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ヒナを助ける、その意志が固まった三人、アスタ、ユキ、ミユキ。三人は、ヒナを救う為、第十五階層へと向かった。その頃、ヒナは。

「んっ、うっ、ん~、!?、ここは…」

ヒナは鎖で縛られていた。

「目が覚めたかい」

「・・何者だ、お前は」

「名乗る程の者じゃない。でもそうだね、強いて言うなら、君を消す者だ」

「…何故すぐに殺さなかった」

「あそこでは人目が多かったからね。人目がない場所で、確実に殺さねばならなかった。イレギュラーの存在である君をね」

「なるほど、どうしても私を消したいらしいな」

「あぁ、それほどまでに君は、イレギュラーの存在と言う訳だ」

「ふっ」

「何がおかしい」

「このまま私が、ただ黙って殺されると思うか?」

「抵抗しようと言うのか?」

「違うさ、アスタは、人を見殺しにするような人間じゃない。私は信じている、アスタがきっと助けにきてくれるとな」

「ふっ、それは無駄な願いだな。ヤツにはもうそこまでの力はない。親友も仲間も失い、ヤツにはもう何もない」

「力の問題じゃない。アスタは、アスタは確かに大事な親友も仲間も失ってしまった。だが、それでも、私や誰かが困っていたり、ピンチの時は、必ず助けに来る。それがアスタと言う男だ」

ヒナは三ヶ月という短い付き合いではあるが、それまでのアスタと過ごした時の中で、確かに感じていた。

「何故そこまで言いきれる」

「ふん、私はアスタのパートナー、仲間だからな。伊達にアスタと一緒にいないさ」

「そうか、だが残念だな。おしゃべりの時間はもう終わりだ」

「っ(アスタ)」

「さらばだ。イレギュラーの少女よ」

「(アスタ!)」

ヒナは最期まで、アスタを信じながらも、死を覚悟した、その時。この謎の男に連絡が入る。

「応答してください!」

「んっ、なんだ」

「緊急事態です。何者か分かりませんが、正体不明の二名の者に襲撃を受けています!」

「…なんだと」

「!?アスタ」

ヒナは、助けに来たのがアスタと予感し、嬉しくなる。その頃外では、何者かによる襲撃が続いていた。

「くっ、何だこの鎖」

「う、動けん」

 謎の男の部下の二人は、一人の鎖使いの剣士の能力によって、動けずにいた。

「ハァー!」

そこを一人の剣士に狙われ、敗れる。

「うわー」

この二人組の正体は、ヒナを助けに来た、ユキとミユキだった。二人もまた、正体がバレないよう、マントのようなもので身体を隠し、フードで顔を隠していた。

「何者なんだ、コイツら」

「強すぎる!」

「ボス!我々だけでは対処できません!どうかボスも!」

「仕方ない、お前ら、コイツをしっかり監視しとけ」

「はっ!」

ボスは部下二人にヒナの監視を命じ、外へと向かった。しかし、それこそが、ユキ達の狙いだった。遡ること数分前・・・

〈数分前〉

「あそこか」

アスタ達は、洞窟の岩の陰に隠れ、建物と周りの様子をうかがっていた。

「これからどうするかだが、ユキ、ユキの言ってた考えって何なんだ?」

「それはね、ボクとミユキがバレないように、建物の外にいるヤツらを相手して囮になるから、アスタには、その間に建物の中へ入ってほしい。そしてヒナさんを助けて。こんな感じなんだけど、どうかな」

「あぁ、文句ないぜ」

「私も良い考えだと思う」

「ありがとう、じゃあ、これでいこう」

作戦は決まり、実際に作戦は、相手をひきつけ、そこに敵のボスまでひきつける事に成功し、大成功の形となった。

〈現在〉

敵のボスと入れ替わりのような形で、アスタは別ルートで地下に潜入し、ヒナの救出に向かった。

「ん?誰だ貴様」

「ヒナはかえしてもらうぜ」

「アスタ!」

アスタは敵の部下達に迫り、剣を振るった。戦力差は明らかにアスタの方が敵を上回っていた為、難なく敵を倒すことができた。

「コイツっ、うわぁ!」

「貴様っ、うわぁ!」

敵の部下二名を倒したアスタは、鎖で縛られていたヒナの方へ行き、剣で鎖を斬り、ヒナを助けだすことに成功した。

「んっ」

鎖を斬り、落ちてきたヒナを、アスタは受け止めた。

「大丈夫か、ヒナ」

「あぁ、私は大丈夫だ」

「悪い、待たせた」

「気にするな、今こうして助けてくれたじゃないか」

「…ヒナ」

「アスタ…私は、信じて待っていたぞ」

「あぁ、ありがとう、俺を信じてくれて」

「…他にも誰か来てくれたのか?」

「あぁ、ユキとミユキが、ヒナを助ける為に、協力してくれたんだ」

「そうだったのか」

「あぁ、さあ、逃げるぞ」

「あぁ、そうだな」

ヒナを助けだしたアスタ、アスタはヒナと共に、外へと向かった。同じ頃、外ではまだ、戦闘が行われていた。

「うわー!」

敵を確実に一人ずつ倒していくユキ達。そこへ敵のボスがとうとう姿を現した。

「んっ」

ボスの気配を察知したユキ。

「…」

敵のボスは、味方の有様に落胆していた。

「君が首謀者か」

「…君達が何者か知らないが、やってくれたな」

フードから顔が見え、目を見開き、睨む敵のボス、そこに凄まじい殺気を感じ、警戒するユキ。

「んっ…」

既に警戒していたユキだが、ボスも戦闘態勢に入り、腰に付けていた剣を抜き、ユキに向かって、全速力で向かっていった。

「んっ!」

敵から振り下ろされた剣を避け、ユキも反撃する。ユキも敵に剣を振り下ろした。そしてその剣は、見事敵を斬った。

「くっ、何だ、今の攻撃は」

「…」

「ふんっ、これがお前の実力か」

「(この人、まだ何か隠してるな)」

「まさか、これを使う時がくるとはな」

「…」

「ふんっ、ふん!」

「!?」

ボスは、戦いを早く終わらせ、ヒナを殺す為に、ある行動をとった。それは、自分の腕を切り落とす行為だった。

「!?なにを」

いきなりの行動に、ユキも驚く。

「これで、貴様ら全員、終わりだ」

ボスの目的は、ボス自身にある覚醒の力を呼び覚ますことだった。そして、ボスの斬られた腕は、白いエネルギーの集合体のような腕となった。そして、その腕を使い、ユキによって倒されたボスの部下達を自身に取り込み、吸収していき、先程までの魔力量やパワーが、部下を吸収した事により、パワーアップしていった。

「んっ!」

さすがのユキも、警戒をしていなかった訳ではないが、より警戒せざるおえない状況となった。同じ頃、アスタとヒナも、外へと脱出した。

「何なんだよ、アレ」

「あれが、ヤツにとっての切り札か」

「お姉ちゃん」

ミユキも戦っていたが、敵のボスの行動に、自分では足でまといになると判断し、姉であるユキを見守ることにしたミユキ。ボスの部下を吸収し終わったボスは、身体全体が白いエネルギーに覆われた、とても人とは思えない姿に変化を遂げていた。

「ハァーハハハハ」

「…」

険しい顔で、ボスを見るユキ。ユキは何か打開策がないか考えていた。

「(何か、何かないか、ヤツを倒す方法は)」

「あの力は、一体」

「あれは恐らく、完成形ではない、ヤツの覚醒した姿だ」

「あれが、覚醒。…あれで完成形じゃないって」

「あぁ、今のヤツは、魔力を周りに放出していても、魔力が溢れる程ある化け物だ。だが本来の覚醒は、ものすごい魔力量を内に留めることで完成となる」

「内に留める…」

「ふっ、とっとと終わらせてしまおう」

ボスは、早くヒナを殺す為、手短に終わらせることにした。右手の人差し指を、ユキに向け、魔力による光線をユキの心臓に、向かって放った。

「っ!」

ユキは反応し、剣で防いだ。

「くっ、ハアー!」

ユキは何とかボスの光線を防ぎ、ボスの向かっていき、剣を振るった。

「…」

そんなユキの攻撃を、敵のボスは片手で止めようとしたが、未完成の覚醒の状態ですら、ユキの攻撃にはかなわなかった。ボスはユキに斬られる。そしてボスとユキは一旦距離をとった。

「くっ、これでも勝てないか、なら」

ボスは、攻撃の矛先をユキから、ミユキに変えた。そしてミユキに向かって、ボスは光線を放った。

「ふんっ!」

「っ!ミユキ!」

ユキはミユキを守る為、ボスの光線からミユキを守った。

「…!?お姉ちゃん!」

「くっ、うっ」

「お姉ちゃん!」

「ふっ、さすがのヤツもこの光線は効いたようだな」

「お姉ちゃん!お姉ちゃん!」

「うっ…」

「ふっ、これで、終わりだ」

「!?…!」

「ん?」

「…」

ミユキは、ユキを守る為、ユキを守る姿勢をとった。

「ミ、ミユキ」

ユキも立ち上がろうとするが、ボスによる光線の影響で立てずにいた。そんな状況をアスタは見ることにしたできなかった。そしてアスタは、そんな何もできない自分に怒りを感じていた。

「くっ(俺は、何もできないのか、こんな状況なのに、俺は…)!?」

「…アスタ?」

アスタはヒナを下ろし、ある賭けに出る。

「ちょっと賭けになるかもだけど、やってみる」

そう言うとアスタは、少し前に出て、背中の剣を抜き、ヤツに向かって構えた。ここで魔力剣を使おうとも考えたが、ボスの中の闇の力がとても戻せるレベルではなくなっていた為、アスタは常に持ってる剣を選び、抜いた。

「(今の俺にできるのか、いや、できるかできないかじゃない、やるんだ!)」

そうアスタは自分に言い聞かせ、前にダンジョンで練習した覚醒状況になる為、集中した。

「…」

だが、化け物に変わったとは言え、元は人間だった者にやったことがない為、アスタは緊張と不安で、手が震え、集中できずにいた。

「(ダメだ、今のままじゃ、アイツを倒せない。集中しなきゃ、ダメなのに)何で、集中できない」

アスタは、やってみるとは言ったものの、緊張と不安で、少し諦めてかけてしまいそうだったその時、ヒナがアスタの手を握り、アスタを支えた。

「大丈夫だアスタ、自分を信じるんだ。アスタならできる、私もいる。一人じゃ無理でも、二人でなら、きっとできる。さあ、アイツを倒すぞ」

「…おう!」

その言葉に支えられ、アスタはヒナに感謝し、アスタは再び、緊張と不安、どちらとも消し飛んで、集中することができた。

「ハァー」

アスタは全身からでる、魔力を感じ、それを極限まで上げる為、集中した。すると、前に感じ、味わった覚醒の力が、全身にみなぎってくるのが分かった。

「(くっ、このままじゃ)!?アスタ…」

その言葉を聞き、ボスもミユキも、アスタの方を向いた。

「ハァー」

「…アスタさん」

「ハァーァー」

アスタの極限までの集中で、アスタは遂に、覚醒の力をその身に宿すことに成功した。そして、アスタの姿も、白い髪に赤い瞳と、変化した。そして、それに合わせるかのように、魔力量やパワーも格段に上がった。

その脅威に気づいたボスは、標的をアスタへと変えた。だが、アスタの方へ光線を打とうとしたその瞬間、アスタの姿が消えた。だがアスタは消えたのではなく、通常の目では見えない速さで、ボスに接近し、ボスの核に剣を刺した。

「うっ、この、こんな力に」

「ハァー!」

「うっ、殺られる?この、俺がー!」

「ハァー!」

「うっ、アー!」

アスタはボスの核を貫き、ボスは、白い光と共に、消滅した。

「ハァ、ハァ、ハァ」

集中が切れ、アスタは黒い髪に黒い瞳の通常の状態へと戻った。

「アスタ…」

「アスタ、さん」

ユキもミユキも、あまりの出来事に、言葉が出てこなかった。

「勝ったな、アスタ」

「あぁ、ありがとう、ヒナ」

「お礼なんていいさ、私達はパートナーだろ?」

「あぁ、そうだな。あ、二人共、大丈夫か」

「は、はい。私は大丈夫ですが、お姉ちゃんが」

「大丈夫だよミユキ、ボクも大丈夫だから」

「…良かった」

「…」

二人共何とか無事で、安心するアスタ。

「アスタさん、さっきのは、一体」

「さっきのは、俺の中にあった覚醒の力なんだ」

「覚醒の力…」

「なあ二人共、この後時間あるか?」

「はい、私は大丈夫です」

「ボクも大丈夫。でも、どうして?」

「二人に話したいことがあるんだ」

「話すのか、アスタ」

「あぁ、二人なら信用できる」

「…まあ確かに、そうだな」

「話って?」

「この世界の秘密について」

アスタは、ヒナの他に、信用に値するユキとミユキには、話すべきだと判断し、二人に、この世界の秘密について、話すことに決めた。
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