ずっと夢を

菜坂

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13話

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「はあ⋯⋯」

俺は誰もいない自分の部屋で一人大きくため息をついた。

あのあと俺は何も手を打つことが出来ず、新聞記事の内容は広まっていく一方だった。

響也にがんばると言ったのに情けない⋯⋯。

多分今頃には全生徒にあの内容が広まっているだろうなぁと思う。

もう良いかなぁ。

だって俺は既にヤリチンだとかって噂がもうあるし、それに加えて俺は生徒会を崩壊させる人っていうのが追加されるだけでしょ。

印象がマイナスからマイナスになっても何も変わらないと思う。

響也たちはあの新聞のことを信じてないみたいだし。

新聞記事の内容も時間が経てばみんな薄れていくし、もう良いかなぁ。

俺にはもう新聞記事の内容が嘘だと弁明する気がなくなっていた。

「寝るかー⋯」

俺はベッドの上に大きく大の字で寝転がった。

今日も夢見れるかな。

ここのところ いつもそんな期待をしながら俺は眠りにつく。



──────


生徒会選挙当日になり俺は数日ぶりに学校に行った。

体育館には既にほとんどの生徒が集まっている。

全生徒が集まったころに選挙は始まった。

立候補者は今回4人いるようでその中には会長もいる。
今は会長ではないかもしれないが。

立候補者のスピーチが始まった。

俺は誰に投票しようかと考えながらスピーチを聞く。

最後に会長の番だ。

「今回生徒会がリコールすることになってしまったのは佐倉ではなく俺の責任だ。申し訳ありませんでした」

頭を深く下げる会長。

そんな謝罪から会長のスピーチは始まった。

「少し前にあった体育祭で沢山あった生徒会の業務を佐倉以外のみんなが放り出し、全てを佐倉にやらせてしまった。俺はそのころ生徒会会長としての仕事が嫌になってきていた」

会長は語る。

「そんな思いから俺は生徒会長としての仕事をせずにずっと遊んでいた。だがそんな時 佐倉がせめて体育祭の宣誓だけはしてくれと頼んできた。佐倉は全ての仕事をしていたのに宣誓だけは会長がしなければならないと意味がないと言っていた。俺はそこでやっと自分が会長であることの自覚が薄れていきていたということに気がついた。しかしその時の俺は、もう既に会長としての自覚が殆どない状態だった。そんな時、リコールの宣言がされた。そこで俺は、初めて会長を任されたときにみんなに頼られることが嬉しかったことを思い出した。そしてもっとみんなに頼って欲しくて会長を続けていたことも」

会長は俺が2年のころから今まで、ずっと会長を続けてきていた。

「俺は今三年で会長になってもあと少しで会長を辞めることになる。それでもあと少しだけ会長でいさせてくれないだろうか。俺の我儘だと分かっているが、引退までの間でみんなの信用を取り戻したい。そして佐倉に迷惑をかけてしまった償いをしたい」

会長は頭を再び下げた。

「この度は申し訳ありませんでした。俺にもう一度チャンスを下さい」

会長は頭を深く下げたままだ。

パチパチと拍手が起こる。

「会長!よかったよ!応援してる!」

「俺らの会長は会長だけだ!」

そんな声が次々と湧き上がってくる。

会長のスピーチは終わり、全員が舞台をおりた。

この後の投票は教室に戻ってから行われる。

結局俺が投票したのは会長だった。

会長の演説に胸を打たれて票を入れたわけではない。
ただ、俺がこの学校に入学したときからずっと会長だった人が会長じゃない想像ができなかった。

それだけだ。



その後日、選挙の結果が発表された。

選ばれたのは成瀬亮悟、会長だった。

会長への票は全生徒の半分以上を占めていたらしい。

これで、会長はもう一度リコールがない限り最後まで、続けて会長をすることになる。


そう思いながら俺は廊下を歩いているとみんながひそひそと何かを話している様子を何度か見かけた。

ただ、前とは少し違ってその話の内容が俺に関することじゃないようだ。

耳を澄ませてよく聞くと偶に「光希」という言葉が聞こえる。

でも、俺は特に気にしなかった。

どうせまた直ぐに噂は薄れていくだろう。
そう思っていたからだ。



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