ずっと夢を

菜坂

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12話

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「先輩!大変です!」

食堂のいつもの場所に行くと、先にいた響也が声を荒げて言った。

響也の手には新聞紙があり、俺の目の前に大きく広げて突き出した。

その新聞紙の記事には『リコールの真実‼全ての原因は佐倉会計にあった⁉』と大きく見出しで書かれていた。

俺は響也から新聞をもらい記事を詳しく見せてもらった。

「これ、どういうことー⁉」

「分かりません⋯。けど、許せないですね!嘘を書いて先輩を貶めるとは⋯!」

響也は尖り声で言った。

「ありがとう、響也」

俺は響也の頭をポンポンと撫でた。

俺は響也が記事が嘘だと信じてくれているのが嬉しかった。

「じゃあ、がんばるねー」

俺はそう言ってその場を離れた。

俺は記事の内容を見て、どうしてみんなが俺に対して避けたりあんな態度になっていたのかが腑に落ちた。

新聞には俺が生徒会の仕事を奪ったとかなんとか書いていていた。

普通に考えてわざわざ そんな面倒なことするはずないでしょ。


俺はその日の放課後 今日の新聞を手に、さっそく新聞部の部室に足を運んだ。

ドアの前まで来ると教室の中からは会話をしている声がきこえてくる。

俺はその教室のドアをコンコンとノックする。

崎田亮太さきだりょうたさんはいますかー?」

教室の中まで聞こえるくらいの声の大きさで問いかける。

崎田亮太という人は今日に見た新聞の例の記事を書いた人だ。

ドアはガラガラと中側から開けられた。

「何ですか?って佐倉会計⋯⋯」

「はじめましてー。あなたが崎田亮太さんですかー?」

「あ、はい」

中からは崎田亮太が頭を掻きながら出てきた。

ネクタイを見ると色の違いで崎田亮太は俺の一つ上の三年生だということが分かる。

「一先ず、話があるんですけど今からいいですか?」

俺はにっこりと笑みを浮かべながら先輩に問いかけた。

「いやぁ、まぁ俺には話なんかないけど⋯⋯」

「じゃあ、今この場で話しても大丈夫ですかー?」

俺は言葉を被せて喋った。

「いや、中に入ってくれ。そこで話そう」

そう言って先輩は教室の方へ俺を手招きした。

教室に入ると数人部員が椅子に座っていた。

先輩はその奥にあった部屋に俺を案内してくれた。

その部屋は大きな机と椅子しか置いていない殺風景な部屋だった。

俺は先輩に促されて椅子に座った。

先輩も向かい側にあった椅子に一緒に座る。

先輩が椅子に座ったのを確認をすると俺はさっそく話を切り出した。

「で、この新聞はどういうことですか?」

俺は響也からもらった新聞を先輩の目の前につけて問いかけた。

「どういうことって?普通にタレコミが入ったからそれを記事にしただけだけど」

先輩はひとつも悪びれることなく言った。

「あの記事の内容を全て真実だと思ってるんですか?」

「別に?」

「⋯は?」

俺その言葉に少し驚いた。

たとえ思っていなくても肯定すると思っていたからだ。

「じゃあ何であんなことを書いたんですか?」

俺は思うままに先輩に聞いた。

「記事を書くのに、本当か本当じゃないかなんて関係ないんだよ。大事なのは人気が出るかでないかだ」

先輩は堂々とした表情で言う。

「それ本気で言ってるんですか⋯⋯?」

俺は思わず問いかけた。

先輩の表情は変わらない。

「それが俺のやり方だ。で、結局のところ何をしにきたんだ?俺に説教じみたことでもしにきたのか?」

「違います。今日は先輩に頼みたいことがあってきました」

先輩の俺にとってはありえない発言で忘れかけたが、俺は今日 目的があってここに来た。

「今日の新聞の内容が全て嘘だったと訂正してまた新聞を出してください」

俺もあんな嘘を吹聴されたままなんて嫌だし、響也が信じてくれているのを無駄にしたくない。

「無理だ」

先輩は一刀両断に俺の話を断った。

「どうしてですか?俺の話は多分 今話題になってるので、その記事を出せば人気でるんじゃないんですか?」

「確かに今その記事を出せば人気は出ると思う。だが、その代わりに信用を失うことになる。一回だけの人気じゃ意味がない」

「はあ?⋯⋯」

俺は言葉を失った。

先輩を見て、俺はもう記事を書いてもらうことは無理だと思った。

「じゃあ、そのタレコミをした人だけでも教えて下さい」

俺はそのことだけでも聞き出そうとした。

「個人情報だから教えることはできない」

イラッとした。

だがそれを表に出すことはしなかった。

俺は先輩にこれ以上何を言っても無駄だと思い、席を立ち上がった。

「もう失礼します。これ以上話すこともないと思うんで」

そのまま部屋を出ようとドアに手をかけたとき先輩が言った。

「一つ言えることがあるとしたら、俺にそのネタをリークした人物は余程 佐倉会計を嫌っている人物だろうな。」

そんなの分かってるつーの。

と心の中で思いながら俺はその教室から出て行った。



♦︎──♦︎
違和感があったため口調を変更致しました。

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