ずっと夢を

菜坂

文字の大きさ
上 下
1 / 13

1話

しおりを挟む
ずっと夢を見ていたい。
そう思っている。
だってそこには君がいるから。


─────



「ねぇ、奏兄そうにいそろそろ僕たちのことお母さんたちに話そうよ」

「そうだね、そろそろなのかな⋯⋯」

「うん、それにずっと隠し続けのも裏切ってるみたいで⋯⋯」

「⋯⋯よし、じゃあ明日話すか!」

「ありがとう!奏兄」





────その翌日兄は不慮の事故で亡くなった。



心にぽっかりと大きな穴が空いたようだった。

兄の葬式が終わった後も魂が抜けたような感覚のままだ。

「ねぇ、話ってなんだったの?」

母が僕に問いかける。

「昨日奏ちゃんと一緒に話があるって言ってたじゃない」

母の声は少し震えている。

「なんでもないよ」

僕はそう答えた。



──────



さくちゃん、そろそろ学校に行きなさいよ」

奏兄が亡くなってそろそろ1ヶ月が経つ。

あの日以来僕は何をするにも活力が湧かず、ずっと自分の部屋に引きこもっていた。

「そういえば奏ちゃんの部屋片付けようと思うけど何か残しておいて欲しいものとか咲ちゃんのものとかある?確認しといてね」

「分かった」

僕は奏兄の部屋に早速向かった。

部屋に入って早速目につくのはベッドだった。

僕はベッドに入って寝転んだ。
少しだけ奏兄の香りを感じる。

落ち着く匂いだ。

そのまま僕はいつのまにか眠りに落ちていた。


─────


「ふわぁ」

目が覚めた。

辺りを軽く見回す。
いつもと違う景色だ。

そういえばあのまま寝ちゃったのか。

目線を本棚にやるとある小説のタイトルが目についた。

『舞ノ沢学園~僕と生徒会~』

何だこれは。

その小説を手に取る。

珍しいな。
奏兄がこんな小説を読んでいたなんて。

僕は自分の部屋に戻ってその小説を読み始めた。





─────


僕は成沢光希なるさわみつき
今日、僕はこの舞ノ沢学園に転入する。

「ふう」

僕は緊張でバクバクした胸を落ち着かせるために大きく一息吐いた。

「よし!いくぞ!」

覚悟を決めて僕は門に手をかけた。

「あれ?開かない!」

ぐっと力を精一杯いれて門を引っ張っても開かなかった。

「⋯⋯どうしよう」

この高さなら⋯⋯

登れるかな?

「よいしょっ、あとちょっと」

門の上に手をかけ身体を引っ張る。

よし、いけそうだ。

「うわっ」

少し気が抜けてバランスを崩した。
そのまま僕の身体は地面に叩きつけられた。

⋯⋯はずだった。



⋯⋯あれ?痛くない?

僕は受けるはずだった衝撃を感じなかった。
そっと目を開けた。

「大丈夫ですか?」

僕は、今声をかけてくれた人に横抱きで受け止められていた。

「う、うわあぁぁ」

僕は驚いて、叫んだ。

「すみません、直ぐ下ろしますね」

「ごめんなさい、ありがとうございました!」

僕を助けてくれた人は綺麗な笑顔のまま僕を優しく下ろしてくれた。

「いえ、こちらこそすみませんでした。あなたは、転校生ですよね?」

「はい!成沢光希です!みつきって呼んで下さい!」

「私は副会長の野崎蓮のざきれんです。裏門にいると聞いていたのですがいなかったのでどこにいるかと思い、探しました。正門と間違えたようですね」

「裏門?そーいえばそー言われたような⋯。ごめんなさい!間違えちゃいました!」

「まあいいです。転校初日で分からなかったでしょうし。しょうがないです。まずは、職員室へ案内します。ついて来て下さい」

そのまま僕は副会長と一緒に歩き出した。

それよりずっと気になっていることがある。

「蓮って呼んでもいいですか?」

「はい。構いません。同学年ですので敬語も使わなくて構いませんよ」

「ありがとう!蓮!あと、ちょっと質問あるけどいい?」

「はい。大丈夫です。聞きたいことがあれば気軽に聞いてください」

「なんで、蓮はずっとハリボテの笑顔のままでいるの?僕の前ではそんな表情してなくてもいいよ!」

「⋯⋯それは⋯そうですね。そうします」

蓮がそう言った直後僕の唇に何かがあたった。

そして、目の前には蓮の綺麗な顔があった。

「⋯⋯え?」

「すみません。つい。さぁ行きますよ」

蓮はハリボテじゃない綺麗な笑顔でそう言って僕の手を引いた。

「⋯⋯え?」

僕はその言葉しか出てこなかった。



─────



パタンと僕は本を閉じた。

何これ?

主人公はいきなり人の言われたくないようなこと言うし、副会長ってやつもいきなりキスとかするし。

これ以上の続きを僕には読む気がなかった。

それにしてもこれ、BL小説だよな?
奏兄が読んでるとは驚いた。

僕にはまだまだ奏兄の知らないこといっぱいあったんだな⋯⋯。

「はぁ」

と僕はため息をついた。

奏兄を思い出すだけで胸が苦しくなる。

これでも前までは直ぐに泣いていたから少しは落ち着いてきたんだな。と実感する。


「咲ちゃん、ご飯できたよ!」

その言葉を聞いて僕は一階のリビングへと降りていった。



明日からちゃんと学校行くか。そう思った。



その日の夜夢を見た。

奏兄がいる夢。

『好きだよ。咲』

そう言って欲しい人はもうどこにもいない。

『僕も奏兄がすきだよ』

『ありがとう。でも俺の方が好きかな』

『僕の方が好き!』

『そうだね、じゃあどっちも好き』

『うん!』


「好き」

無意識に小さく口からでたその言葉。

でももう届かない。



─────



「じゃあ、行ってきます」

「いってらっしゃい」

そう母と挨拶を交わし僕は家を出た。


久しぶりに学校に行く。

勉強ついていけるかな?

そんな不安を募らせつつ僕は道路を渡り学校へと向かった。


キィーー


車のブレーキ音が聞こえた。

その直後ドンッと何かと何かがぶつかる鈍い音が鳴った。

そのまま僕の意識はなくなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

BlueRose

雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会 しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。 その直紘には色々なウワサがあり…? アンチ王道気味です。 加筆&修正しました。 話思いついたら追加します。

王道学園にブラコンが乗り込んでいくぅ!

玉兎
BL
弟と同じ学校になるべく王道学園に編入した男の子のお話。

BL学園の姫になってしまいました!

内田ぴえろ
BL
人里離れた場所にある全寮制の男子校、私立百華咲学園。 その学園で、姫として生徒から持て囃されているのは、高等部の2年生である白川 雪月(しらかわ ゆづき)。 彼は、前世の記憶を持つ転生者で、前世ではオタクで腐女子だった。 何の因果か、男に生まれ変わって男子校に入学してしまい、同じ転生者&前世の魂の双子であり、今世では黒騎士と呼ばれている、黒瀬 凪(くろせ なぎ)と共に学園生活を送ることに。 歓喜に震えながらも姫としての体裁を守るために腐っていることを隠しつつ、今世で出来たリアルの推しに貢ぐことをやめない、波乱万丈なオタ活BL学園ライフが今始まる!

アリスの苦難

浅葱 花
BL
主人公、有栖川 紘(アリスガワ ヒロ) 彼は生徒会の庶務だった。 突然壊れた日常。 全校生徒からの繰り返される”制裁” それでも彼はその事実を受け入れた。 …自分は受けるべき人間だからと。

王道学園なのに、王道じゃない!!

主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。 レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ‪‪.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

真冬の痛悔

白鳩 唯斗
BL
 闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。  ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。  主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。  むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。

眠り姫

虹月
BL
 そんな眠り姫を起こす王子様は、僕じゃない。  ただ眠ることが好きな凛月は、四月から全寮制の名門男子校、天彗学園に入学することになる。そこで待ち受けていたのは、色々な問題を抱えた男子生徒達。そんな男子生徒と関わり合い、凛月が与え、与えられたものとは――。

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

処理中です...