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7章 普通の勇者とハーレム勇者

穂花の悩みとユリウスの目的

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~穂花サイド~

ブローノ、ネネコ、ルナリアと合流を果たしたユリウス達一行は馬車で獣人国へと向かっていた。
途中、魔族達が至る所に設置してあるワープ装置を通ったので、普通では有り得ないほど速く目的地に到着しそうだ。

本来なら魔族領から獣人国までの道のりは馬車移動だと少なくとも一月は掛かるのだが、このペースなら2日程で辿り着くだろう。
因みに、わざわざ馬車を使って移動してる理由は、穂花やブローノ……あとは次いでにウインターに気を遣っての事だ。ユリウスやフェイルノート、四天王の二人ならば自力で移動した方が今よりもっと速い。

馬車の中は王族専用だけあって広く、7名が乗ってもスペースはかなり空いている。
馬車を操縦してるのがユリウスで、穂花はフェイルノートとルナリアと会話をしており、ブローノが読書、ネネコとウインターは仮眠をとっていた。


「──フェイルノートとルナリアさんが凄く羨ましいです……とってもお綺麗ですから」

「なにを言うとるん?穂花はんも中々の可愛さやで?」

「そうじゃぞ。何を気にしておるのじゃ全く……」

三人は大きなソファーで、穂花をフェイルノートとルナリアが挟み込む様に座っている。

ガチ目なガールズトーク。
穂花は年齢的に問題ないとして、長寿なフェイルノートは如何なものか?
因みにルナリアは二十三歳なのでギリセーフ。


「いえ、この世界は出会う人皆んな本当に美人揃いですよ?一緒に転移して来た由梨お姉ちゃんと、美咲さんが向こうの世界ではとんでもない美人と言われてましたけど、この世界には二人なみの綺麗さんが沢山居ますよ……だから孝志さんが目移りしないか少し不安です」

「いや、お主は王宮に居たんじゃろ?他国から客人が集まって来るような場所なのだ、あえて綺麗どころを揃えてるに決まっておろう。下町に行けば割と女子の容姿は普通じゃぞ?」

「そうどすえ。それにお嬢ちゃん、割と可愛らしい容姿しとるやんか。もっと自信持ちいや」

「フェイルノートさん……ルナリアさん……ありがとうございます……」

穂花は涙目で、慰めてくれた二人に感謝の言葉を述べる。
橘穂花は孝志さえ絡まなければ、極めてまともで可愛らしく、それに加えて優しい女の子なのだ。

因みに余談だが、フェイルノートとルナリアは互いの口調が若干被ってる事を気にしていた。



──そして少し離れた所では、先程まで読者を嗜んでたブローノと、馬車を操縦しているユリウスが何やら話をしていた。
どうやら乗馬しているユリウスに対し、ブローノが窓越しに話し掛けている様だ。


「──そろそろ教えてくれないかユリウス。獣人国でいったい何があると言うんだ?」

「………それは………ゼクス王の許可なくお話する事は出来ません……申し訳ないです、ブローノ王子」

(うむ……完全に裏切った感じでもない……しかし、それでも話せない事となれば……だいぶ絞られる。加えて父が暴走して何かを企むとすれば……もしかしたら──)

「──母上に関する事か?」

「……!」

ユリウスに動揺が走る。
剣帝なのに冷静さのカケラもない男だ。

そしてブローノは驚くユリウスを見て、抱いていた疑惑が確信へと変わった。

「なるほど……だいたい馬鹿な事を企んでるのが分かったよ。目的地からして、どうせ『禁忌』を犯してでも母上を生き返らせる……とか考えているんだろう?」

もはやユリウスが驚くことは無かった。
その代わり理解する。ブローノが100年に一度の秀才と謳われている事は何も大袈裟な話では無かったんだと。
自分の中途半端な裏切り方や、質問に対する言い淀み、そして獣人国へ向かってること……たったそれだけのヒントでゼクスの野望に辿り着いたのだ。その洞察にはユリウスも感服する他なかった。

「………流石はブローノ王子です……貴方も、その方法を知っていたのですか?」

問い掛けにブローノは頷きながら答える。


「当然だ。私だって最初は考えたさ──けどね、ユリウス。そのうちの一つは決して手に入らないよ?」

「……異世界から呼び出した勇者……王族の血を引く者……そして『ラクスール遺跡』に眠る遺物を、獣人国の秘宝と共にその地の祭壇に捧げる……何処が難しいのでしょうか?一番時間の掛かりそうなラクスール遺跡の秘宝の回収には既にゼクス王が向かってます」

「──けど手に入れたと連絡はないだろう?」

「……それは」

思わずユリウスは手綱を握り締めた。連絡が未だない理由がユリウスにも分からないからだ。

そしてブローノは話を続ける。

「ラクスール遺跡の秘宝……それの封印を解除するには、全知全能者でなければならないんだ……それは知らなかったのかい?」

「全知全能者……ですか?」

「その能力者の存在すら知らないのか?──いやしかし、存在していたこと自体がもう随分と昔の事さ……知らなくても仕方あるまい──此処まで言えば解ると思うが、その存在も知らないのに、解錠に必要な全知全能者をどうやって用意する?」

「……っ」

ユリウスには答える事が出来なかった。
遺跡最奥の秘宝が眠る扉は、王国で保管されていた鍵を使えば開けるものだとばかり考えていたのだ。
もちろん、ゼクスも同じである。

「つまり不可能なんだ。父から連絡が来ないのは、まだ開けてないからだよ」

──ユリウスは額を抑え、馬車の走る方向……真っ直ぐを見詰めた。1日、2日経ったにも関わらず、ゼクスと音信不通なのはそう言う事かと納得する。


「──なんの連絡も無ければ、通信にトラブルが発生した可能性が有るからと、獣人国で待ち合わせの約束をしていたんですが……」

「父上とか?」

ユリウスは黙って頷く。


「そうか……まぁ好きにするがいい。恐らく獣人国には居ないと思うけどね」

「…………」


──ユリウスはそれ以上は怖くて聞けず、黙って馬車を走らせたるのであった。


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