167 / 217
7章 普通の勇者とハーレム勇者
デッドエンドボーイズ
しおりを挟む♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
~穂花視点~
「はぁ~……孝志さん……はぁぁぁ~……」
窓の外を眺めながら大きな溜息を吐くのは橘穂花14歳。出会った瞬間から孝志に恋をし、それを抉らせストーカーとなった純情な乙女である。
「ああぁ~えっと……橘穂花、あまり溜息を吐くと幸せが逃げてしまうぞ?」
「もう逃げてますけど、なにか?」
「……たしかにのう」
穂花に正論を言われてバツが悪そうなのは、年齢不詳の邪神フェイルノート。穂花の狂気的な孝志語りの被害を受けてる事が多い。また、その役割を押し付けるユリウスを若干恨む。
「フェ、フェイルノートさん……!!変に話し掛けると、また例のふざけた話を聞かされてしまいますよ……!!」
怯えながらフェイルノートに話し掛けるのはウインター。年齢は若い。いじめられっ子。
主人なので、何だかんだフェイルノートも彼を信頼している。
三人とも全く違った思惑で魔王城に居るのだが、無理矢理連れて来られた穂花は、孝志と会えない現状が死ぬほど不満のようだ。
「ウェイターさん、例のふざけた話って何ですか?………まさか有り得ないと思いますけど、孝志さんの──」
「ち、違います!!孝志さんの話は実に良いですっ!!……あと、僕はウインターです。ははは……!!」
「ふふ」
孝志の話を褒められて、穂花はニッコリと笑う。
「どの話が良かったですか?」
「……え?」
「良い話だと思ったんですよね?……特に、どの辺が良かったですか?」
「……えぇと……」
「まさか……適当に誤魔化した……だけ?」
ガラリと空気が変わる。
普段、兄に絡まれても、嫌な事を言われても笑ってやり過ごす穂花だが、こと孝志の話題だとそれを許さない……可憐な乙女は修羅へと変わる。
そんな穂花から放たれる殺気にウインターは怯え、フェイルノートは内心ウインターを馬鹿者だと呆れながら距離を空けて様子を伺う。
「ウィンナーさん……?」
「ウウウ、ウインターです、はいぃ……」
絶対絶命のピンチ。
ウインターは踏まなくても良い地雷を、自らの余計な一言で踏みまくり、徐々に逃げ道を塞がれて行く。
救いなのは孝志以外の男を苦手としている穂花と距離がある事位だろう。
「……死んだなウインター……短い付き合いだったのじゃ。南無三」
「おいいいぃぃ!!!フェイルノート!!!」
「ドサクサ紛れに誰を呼び捨てにしとるんじゃ。妾が引導を渡すぞ」
「返答次第では私が引導を渡します」
「ご、ごわいぃ……狂人に挟まれて怖いよぉ~……ううううぇぇん……」
「「誰が狂人やねん」」
ウインターは追い詰められる。
しかし、ここで救世主現れる。
「……なに揉めてんだ、お前ら」
やって来たのはユリウスだ。
彼を見つけたウインターは、鼻水を垂らしながらユリウスの綺麗に洗濯したばかりの服に抱き着いた。
「ユリウスさんっ!!だ、助けてッッ!!」
「ちょっ、お前、汚ねぇっ!!」
──鼻水付いたじゃねぇかよ……ばっちぃ。
でも俺まで怒ったら可哀想だし、許してやるか。
「……ユリウスさん、その人を引き渡して下さい。その人、孝志さんを馬鹿にした疑惑が掛けられてます」
「え?お前、橘穂花の前で孝志バカにしたのか?命知らずにも限度があるぞ?お前ヤバくね?」
「うぇぇん、そんな事してないですよぉ~……引き渡さないでぇ~……」
──な、なんか、流石に気の毒だな。
あの孝志狂いの前で孝志を侮辱したのは大悪手だけど、泣いてるし、今回は助けてやるか……ただ、俺も橘穂花は普通に怖いんだけどな……しやーないかぁ。
「因みにユリウスよ。ウインター、お主の事を三十路童貞と言っておちょくっておったぞ?」
「橘穂花、俺のレーヴァテイン貸そうか?切れ味バツグンだぞ?」
「言うわけないでしょぉ!!!エモノを渡そうとしないでぇぇ!!!」
「因みに、俺が童貞なのはモテないからじゃないぞ?仕事と剣帝の役割で忙しかったからさ。あとアリアンも邪魔して来たし俺に言い寄る女も沢山居るからな実際。あとオーティスも童貞だからな?後はアリアンも未通だからな?これで如何に王国三大戦力が忙しいのか解ってしまうだろ?」
「ユリウスさん、喋りすぎですよ。しかもアリアンさんと魔法使いの人を売るなんて最低です……それに未通って……何で知ってるんですか……ドン引きです」
「そうじゃそうじゃ。今のお主は、スイッチが入った時の穂花なみに喋っておるぞ」
「……ん?」
「あ、いや、松本孝志をバカにした訳じゃないぞ?!!信じて欲しいのじゃッッ!!!」
「……なら良いですけど」
「え!?僕の時は信じてくれなかったのに!?」
「待てお前ら、ウインターは本当に俺の事を三十路童貞と言ったのか?そこは重要なところだからそれだけは教えてっ!」
──意味不明な口論は、なんと、これから30分以上も続いた。
0
お気に入りに追加
4,052
あなたにおすすめの小説
【完結】飛行機で事故に遭ったら仙人達が存在する異世界に飛んだので、自分も仙人になろうと思います ー何事もやってみなくちゃわからないー
光城 朱純
ファンタジー
空から落ちてる最中の私を助けてくれたのは、超美形の男の人。
誰もいない草原で、私を拾ってくれたのは破壊力抜群のイケメン男子。
私の目の前に現れたのは、サラ艶髪の美しい王子顔。
えぇ?! 私、仙人になれるの?!
異世界に飛んできたはずなのに、何やれば良いかわかんないし、案内する神様も出てこないし。
それなら、仙人になりまーす。
だって、その方が楽しそうじゃない?
辛いことだって、楽しいことが待ってると思えば、何だって乗り越えられるよ。
ケセラセラだ。
私を救ってくれた仙人様は、何だか色々抱えてそうだけど。
まぁ、何とかなるよ。
貴方のこと、忘れたりしないから
一緒に、生きていこう。
表紙はAIによる作成です。
きっとそれだけが私たちの答えだと思うのです
奏穏朔良
恋愛
例えば、この身に流れる血を抜き去ったとして。
この地に立つ足を切り取ったとして。
果たして私に、どれだけのものが残るのだろうか。
****
お互い都合のいい関係だったと思っていた、マフィアの幹部とボスの従姉妹の話。
【注意】直接的な描写はありませんが、匂わせ程度の肉体関係描写があります。
死を回避したい悪役令嬢は、ヒロインを破滅へと導く
miniko
恋愛
お茶会の参加中に魔獣に襲われたオフィーリアは前世を思い出し、自分が乙女ゲームの2番手悪役令嬢に転生してしまった事を悟った。
ゲームの結末によっては、断罪されて火あぶりの刑に処されてしまうかもしれない立場のキャラクターだ。
断罪を回避したい彼女は、攻略対象者である公爵令息との縁談を丁重に断ったのだが、何故か婚約する代わりに彼と友人になるはめに。
ゲームのキャラとは距離を取りたいのに、メインの悪役令嬢にも妙に懐かれてしまう。
更に、ヒロインや王子はなにかと因縁をつけてきて……。
平和的に悪役の座を降りたかっただけなのに、どうやらそれは無理みたいだ。
しかし、オフィーリアが人助けと自分の断罪回避の為に行っていた地道な根回しは、徐々に実を結び始める。
それがヒロインにとってのハッピーエンドを阻む結果になったとしても、仕方の無い事だよね?
だって本来、悪役って主役を邪魔するものでしょう?
※主人公以外の視点が入る事があります。主人公視点は一人称、他者視点は三人称で書いています。
※連載開始早々、タイトル変更しました。(なかなかピンと来ないので、また変わるかも……)
※感想欄は、ネタバレ有り/無しの分類を一切おこなっておりません。ご了承下さい。
(新)師匠、弟子にして下さい!〜その魔女、最強につき〜
ハルン
恋愛
その世界では、何千年も前から魔王と勇者の戦いが続いていた。
ーー世界を手に入れようと魔を従える魔王。
ーー人類の、世界の最後の希望である勇者。
ある時は魔王が、またある時は勇者が。
両者は長き時の中で、倒し倒されを繰り返して来た。
そうしてまた、新たな魔王と勇者の戦いが始まろうとしていた。
ーーしかし、今回の戦いはこれまでと違った。
勇者の側には一人の魔女がいた。
「何なのだ…何なのだ、その女はっ!?」
「師匠をその女呼ばわりするなっ!」
「……いや、そもそも何で仲間でも無い私をここに連れて来たの?」
これは、今代の勇者の師匠(無理矢理?)になったとある魔女の物語である。
【完結】皆様、答え合わせをいたしましょう
楽歩
恋愛
白磁のような肌にきらめく金髪、宝石のようなディープグリーンの瞳のシルヴィ・ウィレムス公爵令嬢。
きらびやかに彩られた学院の大広間で、別の女性をエスコートして現れたセドリック王太子殿下に婚約破棄を宣言された。
傍若無人なふるまい、大聖女だというのに仕事のほとんどを他の聖女に押し付け、王太子が心惹かれる男爵令嬢には嫌がらせをする。令嬢の有責で婚約破棄、国外追放、除籍…まさにその宣告が下されようとした瞬間。
「心当たりはありますが、本当にご理解いただけているか…答え合わせいたしません?」
令嬢との答え合わせに、青ざめ愕然としていく王太子、男爵令嬢、側近達など…
周りに搾取され続け、大事にされなかった令嬢の答え合わせにより、皆の終わりが始まる。
落ちこぼれ[☆1]魔法使いは、今日も無意識にチートを使う
右薙光介
ファンタジー
領主お抱えの立派な冒険者となるべく『バーグナー冒険者予備学校』へ通っていた成績優秀な少年、アストル。
しかし、アストルに宿った『アルカナ』は最低クラスの☆1だった!?
『アルカナ』の☆の数がモノを言う世界『レムシリア』で少年は己が生きる術を見つけていく。
先天的に授かった☆に関わらない【魔法】のスキルによって!
「よし、今日も稼げたな……貯金しておかないと」
☆1の烙印を押された少年が図太く、そして逞しく成長していく冒険ファンタジー。
異世界転生? いいえ、チートスキルだけ貰ってVRMMOをやります!
リュース
ファンタジー
主人公の青年、藤堂飛鳥(とうどう・あすか)。
彼は、新発売のVRMMOを購入して帰る途中、事故に合ってしまう。
だがそれは神様のミスで、本来アスカは事故に遭うはずでは無かった。
神様は謝罪に、チートスキルを持っての異世界転生を進めて来たのだが・・・。
アスカはそんなことお構いなしに、VRMMO!
これは、神様に貰ったチートスキルを活用して、VRMMO世界を楽しむ物語。
異世界云々が出てくるのは、殆ど最初だけです。
そちらがお望みの方には、満足していただけないかもしれません。
俺の幼馴染みが悪役令嬢なはずないんだが
ムギ。
ファンタジー
悪役令嬢?
なにそれ。
乙女ゲーム?
知らない。
そんな元社会人ゲーマー転生者が、空気読まずに悪役令嬢にベタぼれして、婚約破棄された悪役令嬢に求婚して、乙女ゲーム展開とは全く関係なく悪役令嬢と結婚して幸せになる予定です。
一部に流血描写、微グロあり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる