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7章 普通の勇者とハーレム勇者

デッドエンドボーイズ

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~穂花視点~

「はぁ~……孝志さん……はぁぁぁ~……」

窓の外を眺めながら大きな溜息を吐くのは橘穂花14歳。出会った瞬間から孝志に恋をし、それを抉らせストーカーとなった純情な乙女である。


「ああぁ~えっと……橘穂花、あまり溜息を吐くと幸せが逃げてしまうぞ?」

「もう逃げてますけど、なにか?」

「……たしかにのう」

穂花に正論を言われてバツが悪そうなのは、年齢不詳の邪神フェイルノート。穂花の狂気的な孝志語りの被害を受けてる事が多い。また、その役割を押し付けるユリウスを若干恨む。


「フェ、フェイルノートさん……!!変に話し掛けると、また例のふざけた話を聞かされてしまいますよ……!!」

怯えながらフェイルノートに話し掛けるのはウインター。年齢は若い。いじめられっ子。
主人なので、何だかんだフェイルノートも彼を信頼している。


三人とも全く違った思惑で魔王城に居るのだが、無理矢理連れて来られた穂花は、孝志と会えない現状が死ぬほど不満のようだ。


「ウェイターさん、例のふざけた話って何ですか?………まさか有り得ないと思いますけど、孝志さんの──」

「ち、違います!!孝志さんの話は実に良いですっ!!……あと、僕はウインターです。ははは……!!」

「ふふ」

孝志の話を褒められて、穂花はニッコリと笑う。


「どの話が良かったですか?」

「……え?」

「良い話だと思ったんですよね?……特に、どの辺が良かったですか?」

「……えぇと……」

「まさか……適当に誤魔化した……だけ?」

ガラリと空気が変わる。
普段、兄に絡まれても、嫌な事を言われても笑ってやり過ごす穂花だが、こと孝志の話題だとそれを許さない……可憐な乙女は修羅へと変わる。

そんな穂花から放たれる殺気にウインターは怯え、フェイルノートは内心ウインターを馬鹿者だと呆れながら距離を空けて様子を伺う。


「ウィンナーさん……?」

「ウウウ、ウインターです、はいぃ……」

絶対絶命のピンチ。
ウインターは踏まなくても良い地雷を、自らの余計な一言で踏みまくり、徐々に逃げ道を塞がれて行く。
救いなのは孝志以外の男を苦手としている穂花と距離がある事位だろう。

「……死んだなウインター……短い付き合いだったのじゃ。南無三」

「おいいいぃぃ!!!フェイルノート!!!」

「ドサクサ紛れに誰を呼び捨てにしとるんじゃ。妾が引導を渡すぞ」

「返答次第では私が引導を渡します」

「ご、ごわいぃ……狂人に挟まれて怖いよぉ~……ううううぇぇん……」


「「誰が狂人やねん」」


ウインターは追い詰められる。
しかし、ここで救世主現れる。


「……なに揉めてんだ、お前ら」


やって来たのはユリウスだ。
彼を見つけたウインターは、鼻水を垂らしながらユリウスの綺麗に洗濯したばかりの服に抱き着いた。


「ユリウスさんっ!!だ、助けてッッ!!」

「ちょっ、お前、汚ねぇっ!!」

──鼻水付いたじゃねぇかよ……ばっちぃ。
でも俺まで怒ったら可哀想だし、許してやるか。


「……ユリウスさん、その人を引き渡して下さい。その人、孝志さんを馬鹿にした疑惑が掛けられてます」

「え?お前、橘穂花の前で孝志バカにしたのか?命知らずにも限度があるぞ?お前ヤバくね?」

「うぇぇん、そんな事してないですよぉ~……引き渡さないでぇ~……」

──な、なんか、流石に気の毒だな。
あの孝志狂いの前で孝志を侮辱したのは大悪手だけど、泣いてるし、今回は助けてやるか……ただ、俺も橘穂花は普通に怖いんだけどな……しやーないかぁ。


「因みにユリウスよ。ウインター、お主の事を三十路童貞と言っておちょくっておったぞ?」

「橘穂花、俺のレーヴァテイン貸そうか?切れ味バツグンだぞ?」

「言うわけないでしょぉ!!!エモノを渡そうとしないでぇぇ!!!」

「因みに、俺が童貞なのはモテないからじゃないぞ?仕事と剣帝の役割で忙しかったからさ。あとアリアンも邪魔して来たし俺に言い寄る女も沢山居るからな実際。あとオーティスも童貞だからな?後はアリアンも未通だからな?これで如何に王国三大戦力が忙しいのか解ってしまうだろ?」

「ユリウスさん、喋りすぎですよ。しかもアリアンさんと魔法使いの人を売るなんて最低です……それに未通って……何で知ってるんですか……ドン引きです」

「そうじゃそうじゃ。今のお主は、スイッチが入った時の穂花なみに喋っておるぞ」

「……ん?」

「あ、いや、松本孝志をバカにした訳じゃないぞ?!!信じて欲しいのじゃッッ!!!」

「……なら良いですけど」

「え!?僕の時は信じてくれなかったのに!?」

「待てお前ら、ウインターは本当に俺の事を三十路童貞と言ったのか?そこは重要なところだからそれだけは教えてっ!」




──意味不明な口論は、なんと、これから30分以上も続いた。
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