132 / 217
6章 勇者と、魔族と、王女様
おいしい場面で狙ったように現れる男
しおりを挟む「──あっ」
「ふぇぇ???」
転移装置で王宮内の適当な場所へ転移した。
そしたら
なんと
マリア王女が居るでは有りませんか。
いきなり知り合いに出会えるなんて超ラッキー!やっぱアレだね、日頃の行いが良いからこういう幸運に恵まれるんだよ!いつもありがとう俺!
俺は自分に感謝しつつ腹黒王女へ近付いた。
……え?でもなんか涙目じゃない?どうしたん?
「お久しぶりですマリア王女。でも泣きそうですがどうしました?あっ、もしかしてアクビ我慢してますか?王族っていろいろ我慢しなきゃいけなくて大変っすね」
「──ぷっ……その敬語を使いつつも失礼な物言い……ふふっ……本物の孝志様ですね……数日ぶりです」
状況を全く理解出来てない癖に、相変わらずな孝志の物言いに我慢出来ず、気が付くとマリアは吹き出してしまった。
まさかこんな状況下で笑い出すなんて、マリア自身もビックリしている。
魔物が止まっているのも有るが、松本孝志が現れただけでこの場に安心感が生まれていた。
「ダークエルフに連れ去られたと聴いて心配してました。元気そうで良かったです」
「…………」
「どうしましたか?」
「いえ……メイドさんが一緒だと良い王女演じてるのでやっぱり腹黒だなぁ~と」
「なんですってっ!?しばくわよっ!?」
「すいませんでした……え?しばく?」
あっ、そう言えばマリア王女ってエセ日本人だったな。
「って、和んでる場合じゃないわ!そもそもどうやって此処に!?」
もう素を隠そうとしないのな。
でもこの女、こっちがタメ口だとキレるから酷いんだよ。
それにどうやって来たかって?
「オカマに送って貰いました」
「本当に何事ッ!?それとオカマって実在するの!?」
「するよ。俺も出会ってビックリしたからな」
「はぁ?なんでタメ口なのかしらぁ?」
「え?本当にキレるの?……タメ口はだめですか?」
「だめよ」
ほんと理不尽……もう人間が怖い。
「……何なんすか?わたしキレそうよ?」
「え……口調がオカマになってる……?」
「あ、やべ」
アレクセイさんの口調が移ったみたい。
でも相変わらずフェアじゃないな、自分は結構な言葉遣いの癖に俺には敬語で話せとか。
「ふふ」
「あん?」
俺が理不尽さに嘆いていると、マリア王女は唐突に笑い出した。
今のはもしかして馬鹿にした笑いだろうか?
だとしたら王族の間には実に素晴らしい教育が行き届いてるようだ。もちろんブローノ王子以外。
「貴方とこうしたやり取りが出来るなんて……さっきまで死んだものと諦めてたから嬉しくて笑ってしまったわ……グス……」
今度は涙目じゃなくて泣いてる。
いや、もしかしてふざけてはいけない状況なのかな?一応、何が有ったのかは聞いておこう。
「あの、本当に何が有ったんですか?」
「……え?……貴方が助けてくれたのでしょう?」
「………………ワッツ?」
「うざっ…………って、え?本当に違うの!?このタイミングに現れて!?嘘でしょう!?」
──マリア王女は、俺の背後を見ながら意味不明な事で驚いている。
相変わらずな女だと思いながら振り返ってみると、そこには剣を振り上げた姿勢で停止するドラゴンのように見える変な奴が居た。
「もしかしてリザード○ンですか?」
「ドラゴンナイツよ」
やべぇ……強そうなネーミング。
あっ、でも離れた位置にも同じのがもう一体居る、更にもっと離れた所にもボロボロの奴が一体居る。
強そうだからレア敵かと思ったけど、いっぱい居るからただの量産型の雑魚やんけ、しょーもな。
アッシュにでもやられてまえ。
背後を確認した後で、俺はもう一度マリア王女の方を向いた。
「…………なんですかあのドラゴン?」
「本当に貴方が魔法で止めたんじゃないのねっ!!?」
「ははは、ないない!!敵の動きを止める魔法とか無理ですから!自分みたいなへっぽこぴーにそうなヤバい魔法使える訳ないっすよ!あははは!!」
「……いや、え……?そんな楽しそうに自分を卑下にしなくても……」
──貴方にも良い所がたくさん有るわよ。
教えてやろうかしら?とにかく良い男よ、貴方は……は、恥ずかしいので絶対に言わないけどっ。
しかし、アホほど和やかな雰囲気とは裏腹──このときライラとケイトは、孝志と一緒に次元の裂け目から現れたアルベルトとアッシュから片時も目を離せなかった。
二人は勇者と共に現れた、ドラゴンナイツが下っ端に思える程の驚愕な化け物に額から大粒の汗を流して怯えている。
尚、アルベルトは混乱を防ぐ為、骸骨の姿から眼鏡を掛けた三十歳程の細身な男性に姿を変えている。
アッシュは変装せずとも人間らしい見た目の筈だが……それでもやはりライラとケイトみたいな実力者には魔族だとバレてしまうのだ。
その怯えっぷりはアッシュが身動ぎするだけでビクッと震え上がる程だ。
マリアは孝志に気を取られていて、二人の様子には気付いて居ないようだ。
そんな二人を見兼ねたアルベルトは、主人がやり辛くならない様にライラとケイトに声を掛けた。
「──安心しろ、人間。我は魔族だが敵ではない。今は孝志様の忠実な僕である」
「了解しました……」
「……はい」
どうせ戦いになっても勝ち目なんて全くないのだ。
それなら勇者と一緒に来たんだし、魔族の言葉を信じる事にしよう。
二人は孝志をダシにした上手い言い訳をつくるのであった。
「え?ま、魔族?どういうこと?」
アルベルトから魔族の単語を聞いてようやくマリアは反応する。
実に能天気だ。ライラとケイトはそれどころではないと言うのに。
──そしてもう一人の魔族……アッシュはと言うと、此処に来た瞬間から目線はずっとドラゴンナイツ向けていた。
戦闘特化の種族はこういうとき頼れる。
……ライラ達に声を掛けた後で、アルベルトは離れた所のドラゴンナイツへ向け、手作業のように簡単な動作で魔法を放った。
「──ダークネス」
闇属性中級魔法の詠唱破棄。
無詠唱だと威力は格段に落ちる。
それでもアルベルトが放てば相当な威力となる。
放たれた黒い球体に触れたドラゴンナイツは跡形も無く消滅した。
消失系魔法の性質上、爆発音などはなく、テレビの電源でも切るかの様に呆気なく消失する。
アッシュも二体の敵をいとも簡単に料理した。
そんな光景をマリアは唖然と見守っていた。
まさかこんな化け物達を連れて来たとは思いもしてなかったからだ。
──まさか簡単に片付くなんて…………って
「孝志様っ!!出口はこっちよ!!」
倒した後、何事も無かったかように城の奥へ進もうとしたらマリア王女に呼び止められた。
……そう言えば、転移して来た理由をまだ言ってなかったな。
「こっちの道であってますよ」
「え?」
「おれ……いえ、自分は戦闘中の勇者たちを助けに来たんですから」
マリア王女の安全は確保できた。
後は城の人達と中岸さんを保護しないとな。
橘と奥本は……まぁついでで助けるか。
勇者達が戦闘中だったのを思い出し、孝志は先を急ぐ事にした。
「待ちなさい」
「え、急いでるのですが……?」
「私も同行します」
「……ぇぇ~」
するとマリアは一歩前へ出た。
メイド二人が止めに入るも、マリアは孝志に着いて行く気満々である。
──止めても聞かなそうだな……まぁ別にいいか。
当初の予定より人が増えたけど、人数が多いと橘達の意識が俺に向かない可能性高いし。
マリアに加えて、ライラ、ケイト。
計6人のパーティーで孝志は城の奥へと進んで行く──
0
お気に入りに追加
4,052
あなたにおすすめの小説
【完結】飛行機で事故に遭ったら仙人達が存在する異世界に飛んだので、自分も仙人になろうと思います ー何事もやってみなくちゃわからないー
光城 朱純
ファンタジー
空から落ちてる最中の私を助けてくれたのは、超美形の男の人。
誰もいない草原で、私を拾ってくれたのは破壊力抜群のイケメン男子。
私の目の前に現れたのは、サラ艶髪の美しい王子顔。
えぇ?! 私、仙人になれるの?!
異世界に飛んできたはずなのに、何やれば良いかわかんないし、案内する神様も出てこないし。
それなら、仙人になりまーす。
だって、その方が楽しそうじゃない?
辛いことだって、楽しいことが待ってると思えば、何だって乗り越えられるよ。
ケセラセラだ。
私を救ってくれた仙人様は、何だか色々抱えてそうだけど。
まぁ、何とかなるよ。
貴方のこと、忘れたりしないから
一緒に、生きていこう。
表紙はAIによる作成です。
きっとそれだけが私たちの答えだと思うのです
奏穏朔良
恋愛
例えば、この身に流れる血を抜き去ったとして。
この地に立つ足を切り取ったとして。
果たして私に、どれだけのものが残るのだろうか。
****
お互い都合のいい関係だったと思っていた、マフィアの幹部とボスの従姉妹の話。
【注意】直接的な描写はありませんが、匂わせ程度の肉体関係描写があります。
死を回避したい悪役令嬢は、ヒロインを破滅へと導く
miniko
恋愛
お茶会の参加中に魔獣に襲われたオフィーリアは前世を思い出し、自分が乙女ゲームの2番手悪役令嬢に転生してしまった事を悟った。
ゲームの結末によっては、断罪されて火あぶりの刑に処されてしまうかもしれない立場のキャラクターだ。
断罪を回避したい彼女は、攻略対象者である公爵令息との縁談を丁重に断ったのだが、何故か婚約する代わりに彼と友人になるはめに。
ゲームのキャラとは距離を取りたいのに、メインの悪役令嬢にも妙に懐かれてしまう。
更に、ヒロインや王子はなにかと因縁をつけてきて……。
平和的に悪役の座を降りたかっただけなのに、どうやらそれは無理みたいだ。
しかし、オフィーリアが人助けと自分の断罪回避の為に行っていた地道な根回しは、徐々に実を結び始める。
それがヒロインにとってのハッピーエンドを阻む結果になったとしても、仕方の無い事だよね?
だって本来、悪役って主役を邪魔するものでしょう?
※主人公以外の視点が入る事があります。主人公視点は一人称、他者視点は三人称で書いています。
※連載開始早々、タイトル変更しました。(なかなかピンと来ないので、また変わるかも……)
※感想欄は、ネタバレ有り/無しの分類を一切おこなっておりません。ご了承下さい。
(新)師匠、弟子にして下さい!〜その魔女、最強につき〜
ハルン
恋愛
その世界では、何千年も前から魔王と勇者の戦いが続いていた。
ーー世界を手に入れようと魔を従える魔王。
ーー人類の、世界の最後の希望である勇者。
ある時は魔王が、またある時は勇者が。
両者は長き時の中で、倒し倒されを繰り返して来た。
そうしてまた、新たな魔王と勇者の戦いが始まろうとしていた。
ーーしかし、今回の戦いはこれまでと違った。
勇者の側には一人の魔女がいた。
「何なのだ…何なのだ、その女はっ!?」
「師匠をその女呼ばわりするなっ!」
「……いや、そもそも何で仲間でも無い私をここに連れて来たの?」
これは、今代の勇者の師匠(無理矢理?)になったとある魔女の物語である。
【完結】皆様、答え合わせをいたしましょう
楽歩
恋愛
白磁のような肌にきらめく金髪、宝石のようなディープグリーンの瞳のシルヴィ・ウィレムス公爵令嬢。
きらびやかに彩られた学院の大広間で、別の女性をエスコートして現れたセドリック王太子殿下に婚約破棄を宣言された。
傍若無人なふるまい、大聖女だというのに仕事のほとんどを他の聖女に押し付け、王太子が心惹かれる男爵令嬢には嫌がらせをする。令嬢の有責で婚約破棄、国外追放、除籍…まさにその宣告が下されようとした瞬間。
「心当たりはありますが、本当にご理解いただけているか…答え合わせいたしません?」
令嬢との答え合わせに、青ざめ愕然としていく王太子、男爵令嬢、側近達など…
周りに搾取され続け、大事にされなかった令嬢の答え合わせにより、皆の終わりが始まる。
落ちこぼれ[☆1]魔法使いは、今日も無意識にチートを使う
右薙光介
ファンタジー
領主お抱えの立派な冒険者となるべく『バーグナー冒険者予備学校』へ通っていた成績優秀な少年、アストル。
しかし、アストルに宿った『アルカナ』は最低クラスの☆1だった!?
『アルカナ』の☆の数がモノを言う世界『レムシリア』で少年は己が生きる術を見つけていく。
先天的に授かった☆に関わらない【魔法】のスキルによって!
「よし、今日も稼げたな……貯金しておかないと」
☆1の烙印を押された少年が図太く、そして逞しく成長していく冒険ファンタジー。
異世界転生? いいえ、チートスキルだけ貰ってVRMMOをやります!
リュース
ファンタジー
主人公の青年、藤堂飛鳥(とうどう・あすか)。
彼は、新発売のVRMMOを購入して帰る途中、事故に合ってしまう。
だがそれは神様のミスで、本来アスカは事故に遭うはずでは無かった。
神様は謝罪に、チートスキルを持っての異世界転生を進めて来たのだが・・・。
アスカはそんなことお構いなしに、VRMMO!
これは、神様に貰ったチートスキルを活用して、VRMMO世界を楽しむ物語。
異世界云々が出てくるのは、殆ど最初だけです。
そちらがお望みの方には、満足していただけないかもしれません。
俺の幼馴染みが悪役令嬢なはずないんだが
ムギ。
ファンタジー
悪役令嬢?
なにそれ。
乙女ゲーム?
知らない。
そんな元社会人ゲーマー転生者が、空気読まずに悪役令嬢にベタぼれして、婚約破棄された悪役令嬢に求婚して、乙女ゲーム展開とは全く関係なく悪役令嬢と結婚して幸せになる予定です。
一部に流血描写、微グロあり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる