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6章 勇者と、魔族と、王女様

テレサと森を散歩

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──どうして俺はこんな世界に来てしまったんだろう?
良い子では無かったけど、悪い子でも無かった筈だ……なのにどうしてこんな目に……?

つい先程、アリアンさんに弟になれとか言われた俺は恐怖のあまり失神してしまった。
急にどうしていつも以上に頭がおかしくなってしまったのだろうか?
気になって尋ねてみれば、どうやらオーティスさんの差し金だったらしい。

あの中二病親父……人が折角尊敬してやったのに、アリアンさんを俺へ差し向けるなんて一番やってはいけないことをしやがった。
もう許せない。今度会ったら陰湿な嫌がらせしてやる。

そしてアリアンさんはみてくれだけは良いから、あんな人でも姉になってくれたら容姿だけで友達に自慢出来そうだけど、この世界に友達居ないのでそれも出来ない。
故にアリアンを姉にするとデメリットしかないのだ。


さっきの衝撃がまだ残っており、目を覚ました後も俺はベッドから起き上がれずに居た。

俺が意識を失った直後、アリアンさんは大慌てでかなり貴重な高ランクポーションを飲ませてくれたので気絶からはすぐに目を醒ましたが、やはり姉になったアリアンさんと共に過ごす人生を想像すると怖い。
人間的に好きだけど、それと同時に怖いんだ人間的にホント。


「………………ッ…………ん?」


そして、俺がそうな事を考えながら天井を見上げて居ると、唐突に【あの感覚】に見舞われる。
これは俺がこの世界に来てから良く体験している【なんとなく】の感覚だ。

これにはもう慣れている。
よく分からないが、この【なんとなく】はスキルの一種だろう。
ただ、アルマスに聴いてもこの感覚はアルティメット・マスターズ・スペシャルとは全く関係がない様だ。

加えて危険予測に似ているけどそれとも違うと言ってたし……まぁ良いや、役に立ってるからな。
そもそもフェイルノートに勝てたのはこのスキルと俺の智略によるものと断言しても過言では無い。
幾ら俺が賢いとは言え智能だけではどうしようもない事だってあるんだから。

──そんな感じで便利な【なんとなく】だが……今回、城から少し離れた場所で感知されたなんとなくは少しヤバめだった。

実際その場所へ行かないと何があるのか解らないが、とにかく今すぐその場所に向かわなくてはマズイ。

かと言って一人で城の外へ向かうのも怖いので、俺は躊躇なくある人物の手を借りる事にした。



「テレサ、少し良いか?」

俺は念話越しにテレサへと話掛ける。
彼女はさも当たり前の様に1秒にも満たない速さで応答してくれた。


『──どうしたの?……もしかしてパンツ?』

「尋常じゃないしつこさだなおいっ!!もう良いよその話はっ!!───えっ~とね、今はそんなパンツなんてどうでもいいくらい大変な事が起こりそうなんだ……手を貸してくれないか?」

『そ、そんなパンツって酷くない?』

「いや、酷くない」

『えー…………』

少しショックのテレサだが、ごほんと一つ咳払いをし気を取り直してくれた。


『えっと、大事な話なんだよね?』

「うん、今から少し城の外に出るんだけど、怖いからテレサに守って欲しいんだ……良いかな?」

『ふっふ~ん!そんな恐る恐る聞かなくても答えは即答でOKだよ!むしろ……やっと孝志の役に立てそうで僕は本当に嬉しいよ』

「……ありがとうテレサ。あと、パンツの事はもう忘れてね?黒歴史だからさ」

『それは無理だよ、会った時に絶対見せる』

「ふぁっ!?」


──────────


──そのあと城を出てテレサと合流した俺は、目的へ向かう為、森の中を歩いていた。
しかし、何故かテレサをお姫様抱っこした状態でだ。

彼女は俺と合流した瞬間、有無言わさず飛び付いて来たので思わず咄嗟に抱き留めると、さも当たり前の様に自ら抱っこされて来たのだ。

なので抱っこしているのでは無く、抱っこをさせられている。俺の意思では断じてない。

これがアルマスだと容赦無く落とすのだが、何だかんだ俺もテレサには弱い。
なのでそんな乱暴な事は出来ず、結果、お姫様抱っこしたまま歩く事になってしまったのだ。


──でも、そろそろ限界だ。
主に腕の力が……テレサは小柄とはいえ、ずっと抱き抱えていると手が段々と痺れてくる。
上機嫌そうにしているとこ悪いけど、ここは降りてもらう事にしよう。


「テレサ、悪いけど降りてくれない?」

男としてのプライドが一応はあるので、腕が限界とは言わず降りるように促す孝志。
だが、孝志の体力がカス同然だと知らないテレサは、この申し出を渋る。


「え~?やだぁ~……孝志の腕の中暖かいんだもん──あっ、じゃなくて……実は足が痛く歩けないんだよ~」

「嘘だろそんなの!──あれ?テレサ俺には嘘を付けないんじゃなかったっけ?」

「……こ、これとそれとは別だもん」

「……その発言は嘘を認めている様なものだぞ?」

「ゔっ……な、なんだよ!さっき僕のパンツみた癖にっ!」

「いやいや、勝手に見せて来たんでしょ!?濡れ衣もいいとこだよ!」


──実はそう……俺はついさっき彼女が公約した通りにパンツを見せられていた。
しかも抱っこしている状態だったので逃げ場も無く、パンツを拝観する栄に賜ったのであった。



俺より少しだけ歳上らしいテレサ。
しかし見た目は中学生の妹よりも幼く見え、言動や行動もそんな風に思わせてしまう。
そんな少女が黒いワンピースをめくり上げ強引に白のパンツを見せびらかして来るのだ……純粋なテレサにぴったりの純白な色は彼女にとても似合っており、正直良かった。


これが白では無く、大人の色気を漂わせる黒色だったなら…………いや、それも実に良い。
幼さを隠せない少女が背伸びして履いたであろう黒色のそれは、いやらしくも儚げで俺の視覚を十分に楽しませてくれる事だろう。
加えて、普段テレサが着ている黒色のワンピースとも色合いがマッチし、非常に似合う筈だ。


ただこれが白や黒では無く、あざとさ満載のピンク色だったなら…………いや、それも全然悪くない!良い!
俺から観たらとんでもない美少女のテレサが、可愛らしさを際立たせた色を身に付ける事によって俺の純真をこれでもかと言うほど弄び、さぞ喜ばせてくれる事だろう。


これが白や黒やピンクでは無く、高級感漂わせる金色だったなら───


「──あの、た、孝志?」

「ん?どうした?」

「そ、その……僕のこと……さっきからイヤらしい目で観てない?」

「…………ソンナコトナイヨ」












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