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5章 明かされる真実と『狂』の襲撃者

アルティメットマジシャン

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「す、すごいな……」

「ええ……まさか、ここまでやるとは思ってませんでした」

孝志とアルマスの二人は、目の前で開始された戦闘を唖然として見守っていた。


「ふふ……アレが通用しないとは見事だ……ならばコイツはどうかな?……【セイントファイア】!!」

オーティスが新たな呪文を唱えると、炎の洪水がオーティスの目の前に描かれた魔方陣から放たれ、フェイルノートに襲い掛かる。

これは大魔法の一種で並みの魔法使いがこの魔法を使用すれば、それだけで一生分魔力を消費しかねない。
加えて、発動には数分に及ぶ長い詠唱時間が必要となる。

だが、これ程の大魔法をオーティスは涼しげな表情のまま、詠唱を数秒程度に省略して発動した。
建物内という狭まった空間の所為で逃れる場所の無かったフェイルノートは、この魔法をその身で受けてしまう。


「……チッ!!」

しかしながら、触れれば一瞬で溶かされてしまう様な大魔法によるマグマ攻撃も、フェイルノートには通用せず、ダメージを与えるには至らなかった。

けれども、今の魔法は彼女を足止めするには充分だ。

とっさに両手を前に出し防御するも、フェイルノートは踏み止まる事が出来ず、エントランスの壁際まで押しやられる。

「……くっ、踏み止まる事ができなんだか……こんな魔法、省略詠唱で使って良いものでは無い──ぞっ!」

悪態つきながらもセイントファイアの洪水から何とか抜け出し、休む事なくオーティスに向かって突進するフェイルノートだが、彼はセイントファイアを放ちながら次の魔法の詠唱を完了させていた。


「『ストームダスト』!!」

一瞬で新たな魔法攻撃に切り替えると、再びフェイルノート目掛けて撃ち放つ。
今度の魔法は風属性の最上位魔法の一種で、荒れ狂う竜巻が勢いよく飛び出した。

「……グッッ!!またか!!」

再び直撃したフェイルノートは、先程と全く同じ様に壁際まで押し戻されてしまう。

今度の魔法は竜巻ということもあり、その影響を受けた周囲のコンクリートはめくれ上がってしまい、あれほど綺麗に維持されていたエントランスに最早見る影はない。

途中参戦のオーティスは事情を一切知らないので、この場所を敵地と判断し攻撃に一切の遠慮がない。
孝志と一緒に駆け付けたアルマスにも『誰お前?』状態なのだ。

ただ、倒れているアレクセイとハルートに対してはマーキングを施しており、自身が放つ魔法の影響を受けなくした。
敵か味方か分からない状態ではあったが、瀕死状態なので脅威になり得ないのと、目の前の敵と争った形跡がある事から、とりあえず味方として扱う事にした。


──これほどの大魔法を連続して食らっても、強力なスキルと加護に護られているフェイルノートにダメージは殆ど無い。
彼女にダメージを与えられるのは、勇者、女神と言った特殊な称号の持ち主だけなのだ。

…………テレサを除いて。


だが、側から観ている孝志にしたら完全にオーティスが優勢なのである。
なんせフェイルノートは反撃どころか、近付く事すら出来ないで居るのだから。


──しかし、周りから優勢に観られて居ても、オーティス自身はダメージを与えられてない事を解っているので、納得のいかない表情を浮かべている。


「……ふう……無傷か……大魔法の直撃をニ発も喰らわせたと言うのに……実に嘆かわしい……くっ、大丈夫だっ!俺の右手よ……!お前を解放するには……まだ早過ぎる……!」

フェイルノートが少し大人しくなったのを良い事に、オーティスは右腕を抑えながら寸劇を始め出した。


「なんだとぉ!?まだ秘めた力を隠し持っているのか!?」

フェイルノートはこの言葉を真に受けて驚くが、向こうの世界で【こういう系】の人間に関する知識を取り揃えた孝志とアルマスからするとネタにしか見えない。


「──マ、マスターッ!?早く頭に効く薬を彼に投与して下さいッ!!」

「……アルマス……もう手遅れだ。それに、オーティスさんの病気に特効薬なんて無いんだよ……」

「そ、そんなっ!──では、一生あのまま……?」

「…………年齢的にも残念ながら、そうだ」

「可哀想に……孝志はあんな風になっちゃダメよ?」

「イエス・ユア・ハイネス」

このやり取りが聞こえたオーティスは後ろに隠れて居る二人の方を勢いよく振り返った。

「……君達良い加減にしたまえ!私は病気では無いっ!というより、助けられてる立場なのにその言いようはどうなのだっ?!我は助けた事を少し後悔しているぞ??」

あまりの剣幕に、二人は少しだけ反省の色を浮かべた。


──結構怒ってるな。
助けに来て貰っといて嫌な気分にさせるのは人としてどうかと思うし、少し持ち上げるか。

「あっ、すいません。なんか緊張が解けてしまって……それよりオーティスさん滅茶苦茶強いですね!ユリウスさんの100倍強いし、100倍格好いいですよ!」

友人兼ライバルであるユリウスを引き合いに出された事で、人が変わった様に満面の笑みを浮かべるオーティス。

「え?我ユリウスの100倍強くて100倍格好いいのか?!……そうであろうか?やっぱりそうなのか!?」

あっ、ちょろいこの親父。
ユリウスさんを引き合いに出して褒めたら喜ぶとは思ってたけど、まさかこれ程までとは……まぁ嘘は言って無いぜ?ガチで今のオーティスさん滅茶苦茶カッコいいからな。

調子に乗って更におだてようとするが、それを遮るようにオーティスは杖をフェイルノートに構え再び魔法を放った。


「『セイントファイア』!!」

「ッッチ!!しっかり見ておったかっ!」

どうやら話してる最中にフェイルノートが奇襲を仕掛けて来たみたいだが、それをオーティスさんが見逃さず反撃したようだ。

隙が在るように見えてまるで隙がない。
なんて頼りになる男なんだ。

俺は人生で、これ程まで頼りになる大人の男性を見た事がない。中二病だから若干安心感に欠ける所はあるけど。

それに実は言うとオーティスさん瞬殺されると思っていたんだよな……だってアレだけ強かったアレクセイさんが瞬殺されてたし。

本当に凄い人だったんだ…………意外。


そして、三度、壁まで飛ばされたフェイルノートは恨み言を呟き始めた。

「──参ったのう~……お主、強いなんてレベルでは無いのう……歴史に名を残す等と豪語しておったが、その言葉に嘘偽りは無いようじゃな──それに加えて、この場所はお主にとって最高に相性が良いようじゃ」

「ふ……その通りだ……白の姫君……」

「姫君?お主は頭がおかしいのか?」

「………………」

敵にも速攻で頭おかしい認定されてるじゃねーかよ……取り敢えずどんまい。でも全部ほんとの事だから受け入れなくっちゃね!

それから少し落ち込むオーティスだったが、直ぐに気を取り直し状況説明を始めた。


「──どうやらこの結界内……尋常な魔力濃度では無い様だ……魔力に満ち溢れいる……故に我の発動する魔法に強力なバフが掛かり魔力回復速度も恐ろしく早まっている……凄い事だ……ここでなら無限に最上級魔法を放ち続けられるぞ?」

オーティスはあたかも自分が創り出したエリアかの様に、したり顔で語る。


──実はこの城、400年もの間ずっと結界に覆われていた為、本来なら外へ抜け出す筈の魔力を恒久的に溜め込んでいたのだ。

現在はフェイルノートが侵入した天井と、アッシュが破壊した入り口付近の二ヶ所に抜け穴が空いてしまい、そこから閉ざされた魔力が外へ漏れ出ている。
だが、流れ出る量は微々たるモノなので、溜まりに溜まった魔力が抜け切るには数ヶ月ほどの時間を有する事だろう。

少なくとも、この戦闘中に干からびる様な事は無い。
まさに魔法使いが戦うのにおあつらえ向きの場所なのだ。


「ククッ、加えてお主ほどの魔法使いを相手にするのに、この場所は狭過ぎるわい」

自分にとって不利な条件を語っているにも関わらず、フェイルノートは実に嬉しそうに語る。

「ああ……この場所が広い荒野……見晴らしの良い草原なら……無限に魔力が有ろうとも、ここまで姫君を追い詰める事は出来なかっただろう……だが行動範囲の限られたこの城の中では思うように行動できまい……加えて我は姫君を抑え込めば良いだけだからな……そうであろう?孝志?」

そう言うと、オーティスは孝志の方を向いた。
目が合った孝志も『その通りだ』と言うかのように頷く。

「ククッ、何か悪巧みをしているみたいじゃが、そう上手くは行かんぞ?──それと姫君は止めるのじゃッ!!」

抗議の叫びと同時にフェイルノートはオーティスへと向かって突っ込むが、再びオーティスの大魔法によって阻まれるのだった。

「クソッ!全然前に進めぬのじゃ……!それだけの大魔法をノーアクションで放ちよってからにっ!」

「ふふ……残念ながら我に近付く事など不可能だ……諦めよ」

一向に距離を縮められない事にイラつき始めるフェイルノートだったが、このままでは埒があかないと違う方法で攻める事にした。

「…………ハァッッ!!」

正面の強行突破は諦め、その場から飛び上がり空中から奇襲を掛ける。

しかし、オーティスはしっかり反応し──

「『グラビトンバインド』」

──重力魔法で地面に落とした。


「チィッ!」

重力によって地面に落とされたフェイルノートだが、それでも直ぐに重力から抜け出し体勢を整える。

先ほどから孝志はパーフェクトヴァリアブルを使う機会を伺っているものの、フェイルノートは孝志が企む『何か』を警戒していて完全な隙を見せて居ない。
孝志にしたら外すと数分間使用不能になるので、絶対に成功するタイミングにしか使いたく無いのだ。


「なぁアルマス……ダメ元で使ってみるか?」

「そうですね……あのオーティスと言う魔法使いなら、例え外しても次にパーフェクトヴァリアブルを発動出来るまで時間を稼いでくれそうですし──それにしても」

アルマスは神妙な面持ちで孝志の方を見た。

「どうしてアレが勇者にしか倒せない存在だと分かったのですか?」

「……う~~ん……何となく、ひと目見た時からそんな気がしたんだよなぁ……」

「なんとなくって……私のアナライズでも情報を観れない相手なのに……いったいどうして?」

この問いに孝志は少し思い出しながら答える。

「いやな?出発前の下準備もそうだけど、この旅に必要な道具とかも何となく頭に思い浮かんだんだよ。あの煙幕弾も、気配遮断の薬も、用途は分からなかったけど何となく必要だと感じたから用意したみたいな?」

「い、意味がわかりません。そ、それって大丈夫なの?ど、どこか異常はない?」

「大丈夫大丈夫。それになんかあったら絶対アルマスに相談するし」

「え?あらそうなの?……うふふ…ふふ」

なんで相談するって言っただけで気持ち悪い笑い方してんだよ……もう相談しない 。


──そして、二人が会話をしている間もオーティスとフェイルノートは激戦を繰り広げていた。


「このままでは先に進まない……そろそろ本気でゆかせて貰う」

「なんじゃと?手を抜いていたとでも言うのか?」

「いや……魔法自体は本気だった……ただこのままでは姫君の動きを完全に止める事は出来そうに無いのでな……此処からは手数を増やす事にしよう……」

オーティスがそう言って杖を上に翳すと、空中に大きな魔方陣が六つ展開された。
これはフェイルノートに攻撃を加えながら、それとは別に準備していたモノだ。

一つ一つが最上位の魔法なのだが、これをオーティスは初級魔法でも放つかの様に、指をパチンと鳴らして発動させる。
すると、それぞれの魔方陣からフェイルノートへ向かって恐ろしい威力の魔法が放たれた。

「ッッ!!」

六つの魔方陣からは、炎、水、風、土、光、闇属性の最上級魔法が放出し、フェイルノートへ襲い掛かる。

彼女にこれを避ける事など出来ず、身を固め耐え忍ぶのだった。

もちろん、本来ならここまで無抵抗になる事は有り得ないのだが、ここでオーティスと戦うにはあまりに分が悪すぎる。

結界内を無限に漂う魔力によって普段より短い工程で魔法放つ事が可能で、その際に消費した魔力も瞬時に回復してしまう。
加えてこの狭い建物内での戦闘は、広範囲に攻撃を繰り出せるオーティスにとって好条件。

ただでさえ人知を越えた魔法使いのオーティスは、この城中での戦闘に限り、魔人すらも凌駕する究極の存在となるのだ。

今の彼を倒せると言ったら、それはもうテレサくらいだろう。


それと……これはフェイルノート本人しか知らぬ事だが、実はもう一つ、彼女にとって極めて不利な条件があった。


──チッ……毒か……完全にしてやられたわい。

心で悪態つきながら、フェイルノートは離れた所に倒れているアレクセイの方に視線を向ける。

アレクセイは先ほどフェイルノートの脚にしがみ付いて孝志を見逃す様に懇願していた。

実はこの時、フェイルノートは呪術による強力な【毒】を仕込まれていたのだ。
あの時のフェイルノートは、アレクセイの行動に心打たれ完全に無警戒だった。
まさかアレが自分の油断を誘う為の行動だとは思いもしなかったのである。

そしてこの毒さえ無ければ、ここまで一方的な展開にはならなかっただろうと苦虫を噛んだ。

毒の効果は、体内に取り入れた人物の速度を大幅に低下させ、肉体には傷口に塩を塗りたくられた様な痛みが継続的に続くと言うモノ。
痛みの方は彼女固有のスキル【痛覚遮断】で無効化できた様だが、速度低下はしっかりと効力が発揮している。


──そもそも毒を仕込んだからと言って孝志がフェイルノート相手に生き延びる可能性は極めて低い。
オーティスがこの場に現れる事など、アレクセイは知らなかったのだから。

それでも彼は……アレクセイは僅かでも孝志が生きれ残れる可能性を生み出す為、自分がしてやれる最善の策を実行していたのだ。

フェイルノートにとっては騙し討ちに等しい手段なのだが、この行いに対し彼女がアレクセイを憎悪する事は無い。
自分を完璧に欺いたその叡知と、誰かのため必死に行動するその強靭な精神に、ただただ感心するのであった。

もちろん、この毒を解毒するのはフェイルノートにとって不可能な事ではなく、集中して治療に専念すれば完治可能なモノだが、それをオーティスが許してくれない。
今も動きを封じられてしまう程の強力な魔法を連続で放っているのだ。

それに加えて勇者が何かを企んでいるので、彼からも目を離す事が出来ない。

いわゆる、八方塞がり状態なのだ。


──こ、ここでも負けてしまうのか…?洞窟内での戦闘と魔王テレサに続いて三連敗…?

ありゃ?もしかして妾弱くなっとらんか?

…………

………

いやそんな事ないのじゃ!
はっきり言ってこの時代がおかしいだけじゃ!

アリアン嬢も、アレクセイとか言うエルフも、このオーティスも、そしてあのテレサとか言う魔王も、封印前には出会う事の無かった強者ばかり…!

何故、一つの時代に化け物がこんなに集まっておるのじゃ!?

ウインターめ…!!嫌な時代に妾の封印を解きおってからに……!!


オーティスの大魔法をその身に受け続けながら、フェイルノートは現状の理不尽さに嘆くのだった。


──そろそろだろうか?

完全に防御の姿勢から動かなくなったフェイルノートを見てオーティスは心の中で呟く。

そして魔法をフェイルノートに放ち続けたまま、オーティスは杖を地面に向け詠唱を開始した。

「戦慄なる破壊の稲妻よ……かの者を討ち滅ぼし、我に勝利の雷鳴を轟かせたまえ……『ボルテックス・カーペット!!』」

この戦闘が始まってから、ようやく詠唱らしい詠唱を行った魔法を使用するオーティス。

すると、フェイルノートの足元に稲妻がカーペットの様に出現する。
これが足に直接触れたフェイルノートは、足がまるで石化したかの様に全く動かせなくなってしまったのだった。

「お、おいっ!!なんじゃこれは!?う、動けぬではないか!」

フェイルノートが完全に動かなくなったのを見て、オーティスは空中の魔方陣から放っていた魔法を停止した。

それでも万が一に備えて魔方陣はそのまま残す。


「ほら……完全に拘束したぞ?……この魔法は我が編み出した究極のオリジナル魔法……故にこの空間でも詠唱に時間が掛かってしまったのだ……許せ」

「いえ、ほんとに凄いですよ……ありがとうございます」

孝志が素直に礼を言うと、オーティスは嬉しそうに杖を振ったが、直後に表情を強張らせる。

「それに……どういう事かは知らぬが……あの姫君……我の魔法でダメージを与える事が出来ぬ様だ……だが汝には倒す手段があるのだろう?」

これに孝志は頷いて答えた。

「はい。今から行う方法は、少し卑怯かも知れませんが、自分が思い付く限りではこれしかありません」

「ふっ……戦いに卑怯もあるまい……さぁ、倒して来るがいい……レジェンド・オブ・ブレイバーよ……!」

くそだせぇ……あんたそういうとこだからな?
頼むからその呼び名流行らせないでくれよ?

心で願いながら、孝志は身動きの取れなくなったフェイルノートの近くへ向かった。
後ろからはオーティスと、パーフェクトヴァリアブルを発動するのに欠かせないアルマスが付き添う。

敵との距離は10メートル程度しか離れて居ないが、この距離をフェイルノートは最後まで縮める事が出来なかった。

孝志達が充分に近付いた所で、フェイルノートは顔を上げてオーティスを見る。

「……お主……名前はオーティスと言ったか?実に見事な魔法じゃ」

「……戦う場所が良かったとだけ言っておこう」

「ククッ、慢心せぬのはいい事じゃ」

この言葉を最後にフェイルノートは下を向いてしまった。


──好きにしろという事か?
なら、遠慮なくそうさせて貰おう。

アルマスは俺の指示でパーフェクトヴァリアブルをフェイルノートに向けて放った。

「むぅ?」

バリアの形状はドーム型で半径は1メートル程度。
これを見たオーティスは見慣れない能力に目を輝かせるが、囲まれたフェイルノートの方はつまらなさそうな表情をする。

このバリアに持続時間がある事を知らないフェイルノートは、弘子と同じ様に自身を封印する為にこの能力を使ったと勘違いし『何だこの程度の策だったのか』と落胆していたのだ。

そしてフェイルノートをバリアで覆ったのと同時に、オーティスに彼女を拘束している魔法を解くように促した。

「よいのか?」

「はい。あの女を動ける様にするのが次のステップです」

「了解した……その言葉を信じよう」

指を鳴らし、キザったらしく魔法を解除するオーティス。


その瞬間──

フェイルノートはバリアを拳で殴り始めた。

実はこのバリア、弘子が使っていた『デッドエンド・サンクチュアリ』と比べてかなり薄い。
フェイルノートが全力で一度殴っただけで、その箇所に亀裂が入ってしまうのだった。

それを見てフェイルノートはニヤリと笑う。

その後も立て続けに攻撃を繰り返し、亀裂もどんどん広がって行く……あと数回攻撃すれば粉々に砕かれてしまうだろう。


──だが、そのバリアが破れる事こそ、孝志が勝利する絶対条件なのであった。




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