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2章 クレイジースキル

二人の実力

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~アリアン視点~

王国最高戦力である六神剣と、王国最強戦力で王直轄騎士である私と、ユリウス。
実力的には六神剣より私とユリウスが上なのだが、ほぼ拮抗した戦闘力だと言われている。

特に史上最年少で六神剣入りを果たしたエディに関しては、あと十年もすればユリウスに並ぶ程の実力が在ると言われているのだが、それは真っ赤な嘘だ。

嘘と言うのは語弊があるな……実際は私とユリウスの実力はその程度だと皆が勘違いしているのだ。

理由は、王の意向もあって私達2人は表立っての戦闘はかなり少ない。
勿論、私達が出向く程の敵がこれまで現れなかったと言うのもあるのだが。

それに偶に出向く事があっても、殆どが力を出し切ってしまう前に倒されてしまうような敵ばかりなので、実力の発揮のしようがない。

つまり六神剣は、手を抜いた状態の私達より弱いのだから競いようが無い。


「それにしても……」

私は今し方屠った相手を思い返して見る。

暗殺者を名乗って居た割に遅く、魔王軍最高戦力を名乗っていた割には話にならない弱さだった。
八位とか大したことない順位を語っていたので、あまり強くなくて当然なんだけど……


「あれで最高戦力のひとりなのだから、弱い者に囲まれて居るみたいであの子が可哀想だ」

もっとも、王国最高戦力が六神剣である我が国も言えた義理じゃ無い。
というか正直この魔族、六神剣のリーダーよりも強かったぞ。

彼とこの魔族に圧倒的な実力差は無いにしても、闇討ちを得意とするこの魔族相手では手も足も出ずに負けていたんじゃなかろうか?


「……戻るか」

既に1分近く孝志を待たせて居ることに気が付いた私は急いで戻る事にした。

待たされるのが嫌いな私は、待たせるのも嫌いなのである。


──────────


私が急いで孝志の元へ帰ると孝志は眠っており、そんな孝志を先ほどまで一緒にいた水色の髪をした女が抱き抱えて待っていた。
通り掛かりだと言っていたので、既に居ないものだと確信してたんだけどな。

そして孝志が眠って居るのは、おそらく使い慣れないスキルを長時間使用して強い気疲れを起こしてしまったのだろう。

出会った時の感じや表情からして、長時間使用していたスキルは危険察知だと思う。
聞く話によればあのスキルの発動中は結構神経を使うので、普通のスキルより負担が大きいらしい。
私は持っていないので実感は無いのだが、とにかくキツイと言っていた……誰が言っていたか忘れたけど。
ユリウスでは無いのは間違いないので、誰が言ってたか忘れても問題無い。

使いこなせば此処までの消耗は無いので、実戦や訓練をこなして行けば慣れるだろう。
勇者は成長のスピード速いと言うし!

うん!危険察知に慣れさせる為にも、明日からはもう少し厳しめに指導しなくてはな!
昨日は優しくし過ぎたので、一生懸命強くなろうとしていた孝志に申し訳なく思っていた所だったんだ。
明日はカッコいいところを見せてやるぞ!


──それより、この水色の女……偶然知り合ったと言っていたが、そんな風には見えないな……
彼女が孝志に向ける眼差しは、私がユリウスに対して向けている熱や愛情を感じる。
そして孝志本人も信頼して体を預けて居たので一方的なものではないのは確かだ。

他人のフリをするのには訳がありそうだな。
嘘だったら許さないが隠し事なら私にもあるし、細かい詮索はしないでおこう。
何か悪い理由で隠していないという事は直感的に解ったし……今見たのは忘れる事にしよう。


もう彼に対する脅威は完全に取り除いた。
何より私は夜に行われるパーティー用のドレスを買いに行かなければならない!
もちろん、ユリウスに見せる為のな!
実は何だかんだ忙しいのだ!

故に直ぐにでもこの場を去って目的を果たさなければならない……それに──


孝志には彼女がついていれば問題ないだろう。


「それじゃソイツは任せたぞ?」

「はい……任せて下さい」

簡潔なやり取りだが、彼女は了承してくれた。
会話とはこのくらいあっさりしているのがいいな!うん!

私が孝志を託すと、彼女はすぐさま孝志を担ぎ王城へと向かった。
歩く速度からして一刻も早く孝志を休ませたいのだろう……やはり信用しても良さそうだ。


そういえば名前聞いて無かったっけ?


──まぁいいか!
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