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あの日の思い出
しおりを挟む今から6年以上も前の話。
まだ小学生だった頃、雄治は金髪の男の子と一緒に人気のない空き地で遊んでいた。とても気が合う子で本当は毎日遊んでいたかったが、愛梨と一緒に居ることが多かった為そう頻繁には会えなかった。
「え!?カップ麺を知らないの!?」
「……そんなに有名なの?」
短い金髪の頭に帽子を被り、どんなに暑くても常に肌の露出の少ない格好をしていた世間知らずな少年。
名前をレンと名乗っており、何故か苗字を名乗ろうとはしなかった。男同士なのに互いに触れ合うと恥ずかしがったりと、不思議に思う事も多々あったが、雄治は彼と一緒に遊ぶことが本当に楽しかったのだ。
何度かその事を愛梨に咎められたりもした。今思えばこの時から愛梨の束縛が酷かったんだと思い知らされる。
「──優ちゃん……その子と遊ぶのをやめて」
「……え?どうして?」
「良いからっ!今度あの子に会ったらもう口聞いてやらないからね!」
「……解ったから、そんなに怒んないでよ」
だが、当時はまだ愛梨を好きでは無かったのもあり、忠告を無視してレンと遊び続けた。
幼馴染からの頼みを反故にするほど、彼と遊べる日々が魅力的だったのだ。
だが、そんな日々も唐突に終わりを告げる。
いつもの待ち合わせ場所へ行くと、黒服を着た見知らぬ老人から声を掛けられた。
「貴方が坂本雄治様ですね?我が家のお嬢様は習い事を抜け出して貴方と遊んでた様です……大変申し訳ないのですが、今回の件で旦那様がお怒りなので、もうお嬢様は此処へは来れません」
「….…?お嬢様?女の子とは愛梨以外と遊んでないけど?」
「……なるほど……そう言う事でしたか……」
老人は顎に手を当て何やら考える。
予期せぬ事に面を食らった様子だったが、直ぐに何かを閃いたように顔を上げて説明を始めた。
「先程のは人違いでした。実はここで一緒に遊んでた少年から言伝がありまして……彼は訳あってもう此処へは二度と来られないみたいですよ?」
「……子供だからって舐めてる?そんな雑な嘘に誤魔化されないよ?」
「て、手強い……!!──ではなく、本当に待っててもお嬢……少年は来ませんよ?」
「……俺はレンを信じる」
「……そうですか。申し訳ないです」
深く頭を下げてから老人は姿を消したが、取り残された雄治はいつまでも彼が来るのを待ち続けた。
もしかしたら急用が出来たのかと、その日は諦めて別の日に訪れたが、それからレンがその場所を訪れる事はなかった。
見知らぬ女の子が父親らしき人物と一緒に、一度だけ訪れた事があった。レンと同じ髪色をした少女が泣きそうな顔で手を振って来たので雄治もそれに手を振って返した。
それからその少女も来ていない。
季節が一巡した頃、中学生になったのを皮切りに、とうとう雄治も諦めてその場所には行かなくなった。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
~雄治視点~
「今から学校なのに寂しい夢を見ちまったな」
目を覚ました雄治は独り言を呟く。
昨日は姉に抱きつかれてたので、それに比べればマシな目覚めだが、それでもノスタルジックな気分に浸ってしまう。
「最近、なぜかこの夢を見るんだよな……レンの奴、元気にしてるかな?」
当時は恨んだりもしたが、成長した今ならやむ終えない事情というのも理解できる。きっと、家庭で何か起きたんだろうな。
それが分かるから今は全く恨んでいない。
俺はいつもの様に支度を済ませて家を出た。
姉ちゃんは昨日の出来事が恥ずかしかったらしく、今日は先に行くと言われた。先に出たのは姫田愛梨を牽制する為だったらしいけど、案の定外で待ってたらしく、姉ちゃんが奴を無理やり引き連れて行くのが窓から見えてしまった……姉ちゃんグッジョブ超好き。
「──おはよう御座います!雄治様っ!」
「……おう」
愛梨は居なかったが、外には金髪のお嬢様……金城可憐が待ち構えていた。
一週間に一度なら来ても大丈夫だと言っていたが、まさか週初めの月曜日に居るとは思ってもおらず、雄治は少し驚くのであった。
──しかし、不意に登場されても、一緒に登校していても、やっぱり彼女に嫌悪感を抱く事は無かった。
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