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第2話

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「セレス、もう君との関係は冷めきってしまったようだ。婚約破棄をさせてもらうことにするよ」

婚約破棄、なんてものを自分が受ける日が来るとは思ってもいなかった。
私は目の前に広がる現実を受け止めることができず、ただただ呆然と二人の言葉を待つほかなかった。

「やっと婚約破棄を決めてくださったのですねお兄様!私ずっとこの時をまっていました!」
「そうだったのかい?ならもっと早くセレスの事を追い出すことにすればよかったな…。まさかスフィア、君はもっと早くからセレスの本性に気づいていたのかい?」
「あたりまえですよ。最初にあった時から、この人は絶対に性格が悪いものだと確信していました。これでも私、いろんな人と仲良くできるオールマイティーな性格なんですよ?それなのに私が受け入れられないということは、それはそれは目も当てられないような人物であると言わざるを得ませんもの」
「そうか、スフィアは早い段階から気づいていたのか…。セレス、僕の事は騙せていたようだが、スフィアの目を騙すことはできなかったようだぞ?」

好き勝手なことを言っている二人だけれど、私にはその言葉の意味を理解することが全くできていない。
そもそも私たちの婚約関係は伯爵様の方から始められたものだというのに、今やまるで私の方が伯爵様にまとわりついた女だとでも言わんばかりの様子だ。

「やはり僕にはスフィアだけだ…。セレスは最初こそ僕の心を動かしてくれたかもしれないが、それも本当に一瞬だけだった。いつだって僕の事をきちんと理解してくれてていたのはスフィアだけだったからな」
「あたりまえですよお兄様。私だってお兄様の事を心から愛しているのですから♪」

…これは私の直感だけれど、今回の婚約破棄には裏で計画書のようなものがあったように思えてならない。
そうでもないと考えられないくらいに、2人の口ぶりはぴったりと合っていた。

「見てくださいお兄様、私たちの言っていることがすべて本当の事だからお姉様、何も言い返してこないでしょう?なんてみっともない姿でしょう♪」

…私が何も言わないのはあなたたちの言葉を認めているからではなくって、相手をするのも馬鹿らしいと思えているからなのだけれど…。

「セレス、今日をもって正式に君との婚約関係を破棄したいと思う。ここまで僕の期待を裏切り続けてきたんだから、なにも文句はないだろう?少なくともこれ以降、僕にはもう君との関係を続けていくだけのつもりはない。まだまだ僕の隣に立っていたいというのなら、それはもうかなわない夢だからいい加減に目を覚ましてほしいものだな」

もう私には全くそんな思いもないのだけれど、まるでそれが私の本心であるかのような口ぶりで言葉を発する伯爵様。
それを本気で言っているのなら、むしろ伯爵様のほうこそ思いを勘違いしている恥ずかしい存在であるように見えてならないのだけれど…。

「ほらお姉様、お兄様との関係をとりもどしたいのなら今がチャンスですよ?心の底から謝罪の言葉を口にされたらいかがですか?なんでしたら私も一緒に謝って差し上げますよ?」
「……」
「お兄様は寛大なお心の持ち主ですから、もしかしたらお姉様の事を許してくださるかもしれませんよ?まぁその可能性は限りなく低いでしょうけれど…♪」
「おいおいスフィア、決めつけるのはよくないぞ?もしかしたら僕だって気が変わってしまう可能性はある。まぁ確かにその可能性は限りなくゼロに近いのだろうが♪」

婚約破棄一つでどうしてここまで楽しそうな様子を見せられるのか、私には全く理解ができない…。
けれど、これがもともと決まっていた事だというのなら納得がいく。
きっとスフィアは伯爵様を私に奪われることを警戒して、これまで以上に伯爵様との距離を縮めていたのだと思う。
伯爵様はそんな積極的なスフィアの姿に完全にノックダウンしてしまって、それ以上何をすることもできなくなってしまったのでしょうね。
もともと私の事を愛している、絶対に幸せにする、幸せにさせられなかったなら自分は伯爵の位を捨てるとまで言っていたのに、そんなことはもうスフィアへの偏った愛情を前にしてすべて忘れてしまったのでしょうね。
なら、本当に私はもうここにはいる価値はないのでしょうね。
あなたがこれまでにかけ続けてくれていた言葉は、全てうそだったのでしょうね。
最初からいなくてもいい存在くらいにしか、私の事を想っていなかったのでしょうね。
なら、もう私にもあなたたちを愛する義理はないですよね?

「分かりました、伯爵様。それならもう婚約破棄に納得いたします。私がいたら邪魔だとおっしゃられるのでしたら、私は素直にここからいなくなって差し上げようと思いますので」
「……え?」

非常に素っ頓狂な言葉を伯爵様はつぶやいた気がするけれど、もう私には何の関係もない話。
後はお二人だけでお好きになさってくださいな。
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