15 / 17
第15話
しおりを挟む
それ以降も、ぎくしゃくとした関係が続いていた二人。
そんなある日の事、エリスはリーウェルの会社が主催するパーティーに参加することとなり、リーウェルに連れられる形で会場にその姿を現していた。
そしてリーウェルはそんなエリスの姿を遠目に見つめながら、その隣に取引先の人間を置き、こう会話を楽しんでいた。
「いやいや、それにしてもリーウェル様の婚約相手がこれほど美しいお方だったとは。さすが、セントレス社の御曹司様の夫人となられるだけの事はある。非常に麗しく、可愛らしい方ではありませんか」
「だろう?性格にはやや難ありなのだが、見た目は僕のドストライクだったんだ。案外僕も女を見る目があるだろう?」
「まったくでございます。リーウェル様は凡人たちにはまねできない素晴らしい仕事をこなされている。それを隣で支えられるには、あれくらいに魅力あふれる型でなければ務まらない事でしょう」
「ククク、相変わらず口が達者だなぁルベルト。そんな調子のいいことを言って、また僕から良い条件の取引を持ち出したいだけなのだろう?」
「おっと、これはこれは失礼を…。私、思ったことを素直に口にしてしまう癖がありまして、つい思わず…」
「はっはっは。まぁいいさ。お前との案件の内容、今一度精査しておいてやろう。もしかしたら臨時で報酬が得られるかもしれないぞ?」
「あ、ありがとうございます!我々としましても、セントレス社とは良い関係を築いていきたい所ですので、リーウェル様のお言葉は非常にありがたい限り!」
会場に置かれた豪勢なイスに腰かけながら、リーウェルはビジネス相手であるルベルトと談笑を行っていた。
その話題の中心は当然エリスであり、リーウェルの機嫌を取りたくて仕方がないルベルトはエリスの事をあの手この手でほめたたえながら、うまくリーウェルの気分を持ち上げていた。
その一方で、この会場においてどこか一人浮いてしまっているエリスの事を指さしながら、穏やかではない言葉を発する女性たちもいた。
「あれがリーウェル様の婚約相手?なんかあんまりパッとしないわねぇ」
「聞いた?あの女没落貴族の令嬢らしいわよ。どうりで華のない見た目をしているわけだわ…」
「没落貴族?それじゃあ完全に金目当ての婚約ってわけね。なかなか良い性格してるじゃないの、あの女」
小さな声でそう言葉を発するのは、エリスと同じく貴族令嬢の立場にある女性たちだ。
彼女たちの中でも、大金持ちの御曹司であるリーウェルがいったい誰と結ばれるのかという事は大きな関心が寄せられ続けており、こういった場においては常に話題の中心でもあった。
「分かるでしょう?リーウェル様の性格の悪さといえばかなり有名よ?私だったら絶対に嫌だもの。それを平気な顔して婚約するっていうんなら、その性格の悪さを我慢できるくらいに金が欲しいってことでしょ?」
「性格や見た目を好きになることは絶対にないものねぇ…」
「あーあ。あれくらいの図太さが私にもあったら、今頃お金持ちの夫人になれただろうになぁ…。ほんとうらやましいわぁ…」
どこまでも他人事な言葉を発しながら、リーウェルとエリスの事をあざ笑う彼女たち。
それらの言葉はエリスの耳にも届いており、彼女は口にこそしなかったものの、その心の中でこう言葉を返していた。
「(私だってあんな男と婚約なんて…。でも、逆らえないんだもの…。逃げ出すことも許されなくて、拒否することも許されなくて…。私にはただ彼を受け入れることしか許されていないんだもの…)」
するとその時、エリスの雰囲気を遠目に見ていたらしいリーウェルが彼女のもとに現れ、どこか楽しそうな表情を浮かべながらこう言葉を告げた。
「どうだいエリス、もうわかっただろう?誰もが僕たち二人の婚約に注目し、こうして話題にしてくれているんだ。ここまできてこの婚約をなかったことになど、許されるはずがないだろう?僕は大人だから君の心の準備ができるその日まで待ってあげるつもりだが、さすがにそろそろ意思を固めてくれないと、いい加減我慢してきた思いが爆発してしまいそうだ」
「祝うって…。私が彼女たちからなんて言われているか知っているんですか?」
「心配はいらない。彼女たちはただただ君に嫉妬してあんなことを言っているだけさ。女性というのはそういう生き物なのだろう?君が気にすることではないさ。君はただ僕の婚約相手として、堂々と僕の事を自慢すればいいじゃないか。きっと彼女たちだってその現実を理解したなら、何も言えなくなるとも」
「それは違います…。彼女たちは嫉妬しているわけじゃなくて、あなたの事を…」
「いいから!とにかく僕のいう事に逆らうんじゃない。そんな反抗的な態度が取れる立場ではないだろう?」
「……」
リーウェルは相変わらずと言った雰囲気でエリスの言葉を封殺し、自分の言葉を貫き通す。
彼女に対する思いなど、そこにはかけらも存在していなかった。
そんなある日の事、エリスはリーウェルの会社が主催するパーティーに参加することとなり、リーウェルに連れられる形で会場にその姿を現していた。
そしてリーウェルはそんなエリスの姿を遠目に見つめながら、その隣に取引先の人間を置き、こう会話を楽しんでいた。
「いやいや、それにしてもリーウェル様の婚約相手がこれほど美しいお方だったとは。さすが、セントレス社の御曹司様の夫人となられるだけの事はある。非常に麗しく、可愛らしい方ではありませんか」
「だろう?性格にはやや難ありなのだが、見た目は僕のドストライクだったんだ。案外僕も女を見る目があるだろう?」
「まったくでございます。リーウェル様は凡人たちにはまねできない素晴らしい仕事をこなされている。それを隣で支えられるには、あれくらいに魅力あふれる型でなければ務まらない事でしょう」
「ククク、相変わらず口が達者だなぁルベルト。そんな調子のいいことを言って、また僕から良い条件の取引を持ち出したいだけなのだろう?」
「おっと、これはこれは失礼を…。私、思ったことを素直に口にしてしまう癖がありまして、つい思わず…」
「はっはっは。まぁいいさ。お前との案件の内容、今一度精査しておいてやろう。もしかしたら臨時で報酬が得られるかもしれないぞ?」
「あ、ありがとうございます!我々としましても、セントレス社とは良い関係を築いていきたい所ですので、リーウェル様のお言葉は非常にありがたい限り!」
会場に置かれた豪勢なイスに腰かけながら、リーウェルはビジネス相手であるルベルトと談笑を行っていた。
その話題の中心は当然エリスであり、リーウェルの機嫌を取りたくて仕方がないルベルトはエリスの事をあの手この手でほめたたえながら、うまくリーウェルの気分を持ち上げていた。
その一方で、この会場においてどこか一人浮いてしまっているエリスの事を指さしながら、穏やかではない言葉を発する女性たちもいた。
「あれがリーウェル様の婚約相手?なんかあんまりパッとしないわねぇ」
「聞いた?あの女没落貴族の令嬢らしいわよ。どうりで華のない見た目をしているわけだわ…」
「没落貴族?それじゃあ完全に金目当ての婚約ってわけね。なかなか良い性格してるじゃないの、あの女」
小さな声でそう言葉を発するのは、エリスと同じく貴族令嬢の立場にある女性たちだ。
彼女たちの中でも、大金持ちの御曹司であるリーウェルがいったい誰と結ばれるのかという事は大きな関心が寄せられ続けており、こういった場においては常に話題の中心でもあった。
「分かるでしょう?リーウェル様の性格の悪さといえばかなり有名よ?私だったら絶対に嫌だもの。それを平気な顔して婚約するっていうんなら、その性格の悪さを我慢できるくらいに金が欲しいってことでしょ?」
「性格や見た目を好きになることは絶対にないものねぇ…」
「あーあ。あれくらいの図太さが私にもあったら、今頃お金持ちの夫人になれただろうになぁ…。ほんとうらやましいわぁ…」
どこまでも他人事な言葉を発しながら、リーウェルとエリスの事をあざ笑う彼女たち。
それらの言葉はエリスの耳にも届いており、彼女は口にこそしなかったものの、その心の中でこう言葉を返していた。
「(私だってあんな男と婚約なんて…。でも、逆らえないんだもの…。逃げ出すことも許されなくて、拒否することも許されなくて…。私にはただ彼を受け入れることしか許されていないんだもの…)」
するとその時、エリスの雰囲気を遠目に見ていたらしいリーウェルが彼女のもとに現れ、どこか楽しそうな表情を浮かべながらこう言葉を告げた。
「どうだいエリス、もうわかっただろう?誰もが僕たち二人の婚約に注目し、こうして話題にしてくれているんだ。ここまできてこの婚約をなかったことになど、許されるはずがないだろう?僕は大人だから君の心の準備ができるその日まで待ってあげるつもりだが、さすがにそろそろ意思を固めてくれないと、いい加減我慢してきた思いが爆発してしまいそうだ」
「祝うって…。私が彼女たちからなんて言われているか知っているんですか?」
「心配はいらない。彼女たちはただただ君に嫉妬してあんなことを言っているだけさ。女性というのはそういう生き物なのだろう?君が気にすることではないさ。君はただ僕の婚約相手として、堂々と僕の事を自慢すればいいじゃないか。きっと彼女たちだってその現実を理解したなら、何も言えなくなるとも」
「それは違います…。彼女たちは嫉妬しているわけじゃなくて、あなたの事を…」
「いいから!とにかく僕のいう事に逆らうんじゃない。そんな反抗的な態度が取れる立場ではないだろう?」
「……」
リーウェルは相変わらずと言った雰囲気でエリスの言葉を封殺し、自分の言葉を貫き通す。
彼女に対する思いなど、そこにはかけらも存在していなかった。
253
お気に入りに追加
644
あなたにおすすめの小説
離婚した幼馴染が訪ねてきました
杉本凪咲
恋愛
愛する幼馴染と結婚して三年が経過した。
彼は浮気相手を家に連れてくると、私に離婚を叫ぶ。
離婚に応じた私が新しい縁談に心を躍らせていると、彼が再び私の元を訪れてきて……
とりあえず離婚してもらっていいですか?
杉本凪咲
恋愛
結婚して一年。
夫のアトラスは、パーティー会場で私に離婚を叫んだ。
不倫相手のクロイツも加わり、私は心無い罵倒を受ける。
所詮私は、飽きたら捨てられるだけのお飾りの妻だったのだ。
婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
健気な妻は今日でお終い
杉本凪咲
恋愛
伯爵家のホースの家に嫁いだ公爵令嬢モニカ。しかしホースはほとんど家には帰って来ず、愛を囁くことすらしない。加えて、金目当てで結婚したことが判明し、挙句の果てには使用人と不倫までしているようで、愛想を尽かしたモニカは彼に離縁を宣言する。
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる