98 / 98
第98話
しおりを挟む
――数年後――
「どうだいセイラ、似合ってるかい??」
「はぁ……。どうしてこんなことに…」
「どうしてって、それは僕の運命に神様までもが微笑んでいるからに決まっているじゃないか!きっと神様は女性で、この僕に惚れてゴホッ!!」
セイラは目にもとまらぬ速さで手刀を繰り出すと、調子に乗るラルクの口を封じた。二人の関係性は時間が経っても、全く変わってはいない様子。
「…いったいどうしてお兄様が伯爵になんて…。ほんとに世の中大丈夫なのかなぁ…」
そう、あの一件をきっかけとして伯爵家は完全に崩壊していった。これまではファーラやクライムの失態をライオネルがサポートする形でなんとか体裁を維持していたものの、それももはや通用しないほどの状態になり果てていた。
彼らが伯爵家としての力を奪われたなら、当然一つの問題が浮かび上がる。空いた伯爵の椅子に、誰が座るのがふさわしいか、だ。
本来なら、その親族や関係者が後を継ぐのが一般的。しかし今回の一件はそれを可能としないほど大きな問題となっていたため、いったい誰がそのあとに相応しいのか、大きな議題になっていた。
…そして、満場一致で伯爵の座を引き継ぐにふさわしいものとして名が挙がったのが、ラルクであった…。
「ラルク殿であれば、間違いなく伯爵としての仕事を完璧にこなされるはず!」
「人気も実力も兼ね備えているのですから、何の問題もないでしょう!」
「あぁ、ラルク様の事をラクス伯爵と呼べる日が来るとは…!!」
ラルクの伯爵就任には、騎士団からの強い推薦もあった。ほとんど全員の騎士たちからの信頼と人気を得ていたラルクに、もはや死角はなかった…。
「(それにしてもまさか、お兄様が伯爵につかれるなんて…。伯爵様の元から追い出された時から考えたら、全く想像もできない結末…)」
元いた伯爵家の者たちは、まとめて国外追放となった。あれほどの過ちを犯したものならば、極刑さえも避けられない可能性はあったものの、セイラとラルクの一存でその結末は避けられた。
――――
ラルクの伯爵就任パーティーには、そうそうたるメンツがそろっている。騎士団のトップから財閥の長、貴族の関係者まで様々だ。そしてこのパーティーはただのパーティーではなく、いったい誰がラルクの心を射止めることができるかを争う戦場でもあるのだった…。
「(ラルク様の隣に立つのは、私が一番ふさわしい!!)」
「(ラルク様、逃がしはしませんよ…♪)」
「(私の誘惑に、耐えられるかしら…♪)」
そしてその思いは当然、セイラにも同じものが向けられている。それぞれの思惑が交錯するさなかに生きるラルクとセイラ。たとえ伯爵とその妹という立場になろうとも、二人の未来は相変わらず、周囲を巻き込んで面白おかしく展開されるものなのだろう。
「どうだいセイラ、似合ってるかい??」
「はぁ……。どうしてこんなことに…」
「どうしてって、それは僕の運命に神様までもが微笑んでいるからに決まっているじゃないか!きっと神様は女性で、この僕に惚れてゴホッ!!」
セイラは目にもとまらぬ速さで手刀を繰り出すと、調子に乗るラルクの口を封じた。二人の関係性は時間が経っても、全く変わってはいない様子。
「…いったいどうしてお兄様が伯爵になんて…。ほんとに世の中大丈夫なのかなぁ…」
そう、あの一件をきっかけとして伯爵家は完全に崩壊していった。これまではファーラやクライムの失態をライオネルがサポートする形でなんとか体裁を維持していたものの、それももはや通用しないほどの状態になり果てていた。
彼らが伯爵家としての力を奪われたなら、当然一つの問題が浮かび上がる。空いた伯爵の椅子に、誰が座るのがふさわしいか、だ。
本来なら、その親族や関係者が後を継ぐのが一般的。しかし今回の一件はそれを可能としないほど大きな問題となっていたため、いったい誰がそのあとに相応しいのか、大きな議題になっていた。
…そして、満場一致で伯爵の座を引き継ぐにふさわしいものとして名が挙がったのが、ラルクであった…。
「ラルク殿であれば、間違いなく伯爵としての仕事を完璧にこなされるはず!」
「人気も実力も兼ね備えているのですから、何の問題もないでしょう!」
「あぁ、ラルク様の事をラクス伯爵と呼べる日が来るとは…!!」
ラルクの伯爵就任には、騎士団からの強い推薦もあった。ほとんど全員の騎士たちからの信頼と人気を得ていたラルクに、もはや死角はなかった…。
「(それにしてもまさか、お兄様が伯爵につかれるなんて…。伯爵様の元から追い出された時から考えたら、全く想像もできない結末…)」
元いた伯爵家の者たちは、まとめて国外追放となった。あれほどの過ちを犯したものならば、極刑さえも避けられない可能性はあったものの、セイラとラルクの一存でその結末は避けられた。
――――
ラルクの伯爵就任パーティーには、そうそうたるメンツがそろっている。騎士団のトップから財閥の長、貴族の関係者まで様々だ。そしてこのパーティーはただのパーティーではなく、いったい誰がラルクの心を射止めることができるかを争う戦場でもあるのだった…。
「(ラルク様の隣に立つのは、私が一番ふさわしい!!)」
「(ラルク様、逃がしはしませんよ…♪)」
「(私の誘惑に、耐えられるかしら…♪)」
そしてその思いは当然、セイラにも同じものが向けられている。それぞれの思惑が交錯するさなかに生きるラルクとセイラ。たとえ伯爵とその妹という立場になろうとも、二人の未来は相変わらず、周囲を巻き込んで面白おかしく展開されるものなのだろう。
389
お気に入りに追加
3,685
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(10件)
あなたにおすすめの小説
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
婚約者を想うのをやめました
かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。
「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」
最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。
*書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
酒の席での戯言ですのよ。
ぽんぽこ狸
恋愛
成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。
何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。
そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。
記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
とりあえず、調子に乗りすぎの兄君の部分は読んでて辟易する。で、事実を言ってあげず勘違いをそのままにするセイラさん、逆に酷いと思う。
セイラ以外はみんな大なり小なり性格破綻者だと思うのは私だけではないかと……(;^_^A
レリア、一周回ってセイラのために働いてる感あるけど、常軌を逸したアホの子だよなぁ。いくら溺愛してても借りた大事な書類を破り捨てるとかナイわぁ。