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第90話
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「…そうですか。それでもなおこのラルクという男との関係を続けられますか。それでは仕方がありません。彼にはこの世から消えてもらうことにしましょう…!」
「っ!?!?」
「っ!?!?」
先ほどまで、見かけ上は穏やかに進められていた3人の話し合い。しかしライオネルは突然にして物騒極まりない発言を行った。
そんな言葉をかけられた二人はその場に固まってしまって、ライオネルに対して反応することができない様子。しかしそんな二人に構わず、ライオネルはそのまま言葉をつづけた。
「私の事を見くびっていただいては困りますよ?たとえ形だけのポジションであろうとも、仮にも私は上級伯爵である身。何の力も持たない、なんの影響力も持たない一人の人間をこの世から消し去ることなど、造作もないこと♪」
その手をいやらしくくねくねとさせながら、ライオネルはそう二人に告げた。彼が持ち込んだ最終手段とは、ラルクの立場を脅しに使って、弱気になったところを取り込もうという作戦だった。
…しかし当然、そんな言葉をかけられてアーロンがおとなしくしているはずもない。
「…ライオネル様、あなたという人は…。これまではあなたの数々の功績に心から尊敬の念を抱いておりましたが…。まさかそんな外道な手段を取られようとは…」
「クックック、この世界は結果を出したものが正義なのですよ。経済界に名をとどろかせるあなたならば、それはよくご存じのはずでは?♪」
相手の感情を揺さぶっているとみたライオネルは、しめしめといった表情を浮かべていた。…アーロンはそれを見てさらに怒りの感情を心の中に沸き上がらせる…。
その一方で、隣に控えるシャルナの心は揺れていた…。
「(…わ、私がわがままを貫いてしまったら、ラルク様の身に危険が…?も、もう一生かけても返せない恩を受けたというのに、それをあだで返してしまうことに…?)」
シャルナは体を震わせ、目にはうっすらと涙を浮かべていた。その様子に気づいたアーロンは彼女の肩を抱き寄せ、気持ちを落ち着かせるよう優しく背中をさすった。
…そして彼女の動揺を感じ取ったライオネルは、さらなる言葉を発した。
「さぁ、それでも婚約を断られますか?なんならラルクなる男は騎士たちに始末させましょうか?彼らは私の命令に忠実ですから、ひとたび私が始末を命じたなら、すぐさま彼の首を持ち込んできてくれることともいますよ?」
ここを攻め時と見たのか、ライオネルは態度をますます大きくさせていく。しかし隣で体を震わせているシャルナを見ては、アーロンとて黙っているわけにはいかなかった。
「き、騎士は人々を守る存在でありましょう!?それをあなたの勝手で殺しをさせるというのですか!?そんなこと受け入れられるはずがないでしょう!?」
「はっはっは。アーロン様、確かにその通りでございますよ。しかし、騎士たちとて人間なのです。別に何の接点も関わりもないような一人の男を排除することなど、少し金や地位をちらつかせてやればなんら造作もないことなのですよ♪伯爵家と騎士団は長らく良好な関係を維持しておりますからなぁ♪」
「な、なんと……」
「そ、そんな……。わ、私のせいで、ラルク様が……」
シャルナにとってラルクの存在は、自分のすべてと言ってもいいほどに大きくなっていた。それを自分のわがままのせいで傷つけてしまうほど、彼女の心を痛ませるものはなかった。
そんなシャルナの心をなんとかかばおうと、アーロンが再び言葉を発する。
「し、しかしラルク様には騎士をも上回る力があると根っからの噂だ!そんな簡単にあなたの思惑が叶うとは思えませんが?」
アーロンの言葉を受け、ライオネルはまっていましたといわんばかりの表情を浮かべ、ねっとりとした口調で言葉を返した。
「ククク…。私の直感によれば、あの男の力が騎士を上回るものであるなど、民衆たちが作り上げた妄想に過ぎないのですよ♪まぁ、彼が騎士と直接対峙して決闘を行って、それでもなお勝利することができたというのなら話は別ですが、そんなことがあるはずがありませんからなぁ(笑)」
「っ!?!?」
「……」
自信満々な態度をとるライオネルの前に、二人は少しずつ自信を失っていた。中でもシャルナは顕著で、その表情をますます悪いものにしていった。
「(…私がわがままを言わずに、クライム様との婚約を受け入れれば……ラルク様にはなんの迷惑も掛からずに済む……。これ以上わたしのせいでラルク様を巻き込むのは……よくない事、だよね……)」
「(…シャルナ?)」
「(しめしめ、私の言葉が効いて考え込んでいるな?よしよしそれでいい。お前さえ婚約を受け入れたなら、アーロンにそれを止める権限などない。ほかでもない、当人同士が納得した上での婚約となるのだからな♪)」
それぞれの思惑が交錯するなか、改めてライオネルがシャルナに向けて問いかけた。
「それじゃあ、改めてお聞きしましょうか。シャルナ様、我が息子であるクライムとの婚約を受け入れていただけますかな?」
シャルナはその体を震わせたまま、顔を伏せている。そんな彼女をなんとか助けてあげたいアーロンだが、もはやかける言葉も見つからない。
…部屋の中は沈黙に包まれ、誰も言葉を発さない。その時間は一瞬だったのか、それとも一時間だったのか分からないが、その沈黙はシャルナによって破られた。
「……わ、わかりま」
「お、お待ちくださいませ!!!」
その時、後ろに控えていた使用人であるルイスがシャルナの言葉を遮った。目前まで迫っていた勝利が持ち越しになり、ライオネルは抗議の声を上げる。
「お、おい!!なんのつもりだ!!」
しかしルイスはライオネルに返事はせず、そのままアーロンのそばまで行きあることを耳打ちした。
「……いかがされますか?」
「……構わない、お通ししなさい」
「はい、承知しました」
ルイスはアーロンからの指示を聞き届け、そそくさとその場を後にしていった。そんな状況になんだなんだと声を荒げるライオネルに対し、アーロンはこう告げた。
「話を中断してしまい申し訳ありません。が、もう一人、お客様がお見えのようです」
「っ!?!?」
「っ!?!?」
先ほどまで、見かけ上は穏やかに進められていた3人の話し合い。しかしライオネルは突然にして物騒極まりない発言を行った。
そんな言葉をかけられた二人はその場に固まってしまって、ライオネルに対して反応することができない様子。しかしそんな二人に構わず、ライオネルはそのまま言葉をつづけた。
「私の事を見くびっていただいては困りますよ?たとえ形だけのポジションであろうとも、仮にも私は上級伯爵である身。何の力も持たない、なんの影響力も持たない一人の人間をこの世から消し去ることなど、造作もないこと♪」
その手をいやらしくくねくねとさせながら、ライオネルはそう二人に告げた。彼が持ち込んだ最終手段とは、ラルクの立場を脅しに使って、弱気になったところを取り込もうという作戦だった。
…しかし当然、そんな言葉をかけられてアーロンがおとなしくしているはずもない。
「…ライオネル様、あなたという人は…。これまではあなたの数々の功績に心から尊敬の念を抱いておりましたが…。まさかそんな外道な手段を取られようとは…」
「クックック、この世界は結果を出したものが正義なのですよ。経済界に名をとどろかせるあなたならば、それはよくご存じのはずでは?♪」
相手の感情を揺さぶっているとみたライオネルは、しめしめといった表情を浮かべていた。…アーロンはそれを見てさらに怒りの感情を心の中に沸き上がらせる…。
その一方で、隣に控えるシャルナの心は揺れていた…。
「(…わ、私がわがままを貫いてしまったら、ラルク様の身に危険が…?も、もう一生かけても返せない恩を受けたというのに、それをあだで返してしまうことに…?)」
シャルナは体を震わせ、目にはうっすらと涙を浮かべていた。その様子に気づいたアーロンは彼女の肩を抱き寄せ、気持ちを落ち着かせるよう優しく背中をさすった。
…そして彼女の動揺を感じ取ったライオネルは、さらなる言葉を発した。
「さぁ、それでも婚約を断られますか?なんならラルクなる男は騎士たちに始末させましょうか?彼らは私の命令に忠実ですから、ひとたび私が始末を命じたなら、すぐさま彼の首を持ち込んできてくれることともいますよ?」
ここを攻め時と見たのか、ライオネルは態度をますます大きくさせていく。しかし隣で体を震わせているシャルナを見ては、アーロンとて黙っているわけにはいかなかった。
「き、騎士は人々を守る存在でありましょう!?それをあなたの勝手で殺しをさせるというのですか!?そんなこと受け入れられるはずがないでしょう!?」
「はっはっは。アーロン様、確かにその通りでございますよ。しかし、騎士たちとて人間なのです。別に何の接点も関わりもないような一人の男を排除することなど、少し金や地位をちらつかせてやればなんら造作もないことなのですよ♪伯爵家と騎士団は長らく良好な関係を維持しておりますからなぁ♪」
「な、なんと……」
「そ、そんな……。わ、私のせいで、ラルク様が……」
シャルナにとってラルクの存在は、自分のすべてと言ってもいいほどに大きくなっていた。それを自分のわがままのせいで傷つけてしまうほど、彼女の心を痛ませるものはなかった。
そんなシャルナの心をなんとかかばおうと、アーロンが再び言葉を発する。
「し、しかしラルク様には騎士をも上回る力があると根っからの噂だ!そんな簡単にあなたの思惑が叶うとは思えませんが?」
アーロンの言葉を受け、ライオネルはまっていましたといわんばかりの表情を浮かべ、ねっとりとした口調で言葉を返した。
「ククク…。私の直感によれば、あの男の力が騎士を上回るものであるなど、民衆たちが作り上げた妄想に過ぎないのですよ♪まぁ、彼が騎士と直接対峙して決闘を行って、それでもなお勝利することができたというのなら話は別ですが、そんなことがあるはずがありませんからなぁ(笑)」
「っ!?!?」
「……」
自信満々な態度をとるライオネルの前に、二人は少しずつ自信を失っていた。中でもシャルナは顕著で、その表情をますます悪いものにしていった。
「(…私がわがままを言わずに、クライム様との婚約を受け入れれば……ラルク様にはなんの迷惑も掛からずに済む……。これ以上わたしのせいでラルク様を巻き込むのは……よくない事、だよね……)」
「(…シャルナ?)」
「(しめしめ、私の言葉が効いて考え込んでいるな?よしよしそれでいい。お前さえ婚約を受け入れたなら、アーロンにそれを止める権限などない。ほかでもない、当人同士が納得した上での婚約となるのだからな♪)」
それぞれの思惑が交錯するなか、改めてライオネルがシャルナに向けて問いかけた。
「それじゃあ、改めてお聞きしましょうか。シャルナ様、我が息子であるクライムとの婚約を受け入れていただけますかな?」
シャルナはその体を震わせたまま、顔を伏せている。そんな彼女をなんとか助けてあげたいアーロンだが、もはやかける言葉も見つからない。
…部屋の中は沈黙に包まれ、誰も言葉を発さない。その時間は一瞬だったのか、それとも一時間だったのか分からないが、その沈黙はシャルナによって破られた。
「……わ、わかりま」
「お、お待ちくださいませ!!!」
その時、後ろに控えていた使用人であるルイスがシャルナの言葉を遮った。目前まで迫っていた勝利が持ち越しになり、ライオネルは抗議の声を上げる。
「お、おい!!なんのつもりだ!!」
しかしルイスはライオネルに返事はせず、そのままアーロンのそばまで行きあることを耳打ちした。
「……いかがされますか?」
「……構わない、お通ししなさい」
「はい、承知しました」
ルイスはアーロンからの指示を聞き届け、そそくさとその場を後にしていった。そんな状況になんだなんだと声を荒げるライオネルに対し、アーロンはこう告げた。
「話を中断してしまい申し訳ありません。が、もう一人、お客様がお見えのようです」
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