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第87話
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シャルナの思い人がラルクであることを突き止めたライオネル。息子のクライムとシャルナとの婚約を目論む彼にとって、ラルクが邪魔な存在であることは当然の事、さらにその妹が伯爵家にとって因縁のあるセイラだということまで分かった。そんなできすぎな状況に、ライオネルの心がたぎらないはずがなかった。
「…伯爵家に楯突いたこと、たっぷりと後悔してもらおうではないか…。そうだ、もとはといえばすべてセイラの一件から始まったこと…。その責任を今こそとってもらうだけの事なのだから、むしろ正義はこちらの方にあるというもの…!」
シャルナとクライムの婚約を実現するとともに、セイラへの天罰を同時に行うことができる。その計画を実行するべくライオネルは、即座に使用人を部屋に呼びもどして命令を告げた。
「カタリーナ家に知らせを送れ。これで最後、大事な話をしたいから、その準備をしておいてくれと」
「承知しました」
これでセイラやラルクに対して先手を打てると確信したライオネル。…しかし彼は気づいていなかった。彼の部屋の前で、その言葉に聞き耳を立てる人物が一人いたことを…。
「(は、伯爵様の婚約相手はこの私のはずでしょう!?それなのにライオネル様は、私でなくシャルナ・カタリーナを伯爵様と結ばせようとしている…!?ど、どういうことよ…!?)」
――――
ライオネルの発したその知らせは、その日のうちにカタリーナ家にもたらされた。知らせを届けた使用人は伝えることだけ告げるとすぐに帰っていき、部屋の中にはアーロンのみが残される。アーロンはどこかけだるそうな様子でイスに深く腰掛けると、その心の中にぼそっと独り言をつぶやいた。
「(やれやれ、上級伯爵様もしつこいなぁ…。何度断ってもめげずに向かってくるそのあきらめの悪さはいいことなのかもしれないけれど、いい加減相手にするのもつかれる……。まぁだけれど、次回はこれまでとは違って『これで最後』とのこと。次を最後に、潔くあきらめてくれればうれしいのだけれど…)」
迷惑でしかないライオネルからの襲撃予告。次でそれも終わりだと思うと、やや心を軽くするアーロンであったが…。
「(…ただ、ライオネル様の性格から考えると、おそらく最後の交渉はこれまで以上に自信があるのだろう。今度はいったいどんな条件を繰り出してくるつもりなのか…)」
ライオネルはこれまでに様々な条件を二人に提示してきた。伯爵夫人となれるだの、屋敷の一部を専用の部屋にするだの、伯爵家が支配する土地を譲るだの、シャルナが望むのなら専属の騎士をつけてやってもいいだの…。
しかし、どんな条件も二人の心をつかむことはかなわず、結局ライオネルの目論見が達成されることはないままだった。
どうしたものかと天井を見つめるアーロン。そんな彼のもとにシャルナが姿を現した。
「どうされたのですか、お父様?」
「あぁ、またライオネル様からの手紙だ…。最後にもう一度だけ話がしたいから、近いうちにここを訪れるのだと」
「またですか…。相変わらずしつこいですねぇ…。そのしつこさが好感度を下げるだけだとお気づきにならないのかしら…」
「??、あ、あぁ……」
シャルナの言葉を聞いて、どこか不思議そうな表情を浮かべるアーロン。
「……お父様??」
「あぁいや、まさかシャルナがそこまではっきりとものが言えるようになるなんて、思ってもいなかったから驚いているんだ。……これは将来、二人が結ばれた後ラルク殿は苦労することになるかもしれないな…(笑)」
「お、お父様!?そ、そんな気の早い!!」
アーロンの言葉に、シャルナは顔を赤くしながら両手をブンブンとふって答えた。ラルクはすっかりアーロンから認められる存在となっており、アーロンはいつでも二人の婚約を受け入れる準備を整えていた。
「いやいや、こうしてシャルナがしっかり自分をもってくれていることが、僕はうれしいんだよ。今までのシャルナは自分を殺して、僕たちの様子をずっとうかがっていただろう?そしてそんな君を僕は変えてあげることもできず、きづかずにずっとずっと苦しめてしまっていた…」
「お、お父様……そ、そんな……」
「だけど、僕たちはともに変わることができた!僕もシャルナも、本心から言いたいことを言えるようになれた!それは素晴らしいことだと思うんだ!」
「は、はい!私もそう思います!」
「そして、そんな変化を僕たちにもたらしてくれたのは、間違いなくラルク殿だった!あんな素敵な人とシャルナが結ばれるというのなら、こんなにうれしいことはないね♪」
「…///」
確かに二人の間に、以前までの雰囲気は全く見られなくなっていた。自分の言いなりになるようシャルナに仕向けていたアーロンの姿も、自分の運命に絶望して身を投げたり家出まで画策したシャルナの姿も。……ただそれがラルクがもたらしたものなのかどうかは疑問であるが…。
「そ、そうだお父様!!今度の祝勝パーティーにはラルク様もお越しになるとのことですから、一撃で彼の心を掴める衣装を一緒に選びに行きましょう!こういうのは形から入ることが肝心と本に書いてありました!!」
「はっはっは、それもそうだね。じゃあ行こうか(笑)」
どんな条件を持ち込もうとも、ここにライオネルの思惑が食い込める余地など一切ない。彼がそれを思い知らされるのは、今からほんの数日後の事…。
「…伯爵家に楯突いたこと、たっぷりと後悔してもらおうではないか…。そうだ、もとはといえばすべてセイラの一件から始まったこと…。その責任を今こそとってもらうだけの事なのだから、むしろ正義はこちらの方にあるというもの…!」
シャルナとクライムの婚約を実現するとともに、セイラへの天罰を同時に行うことができる。その計画を実行するべくライオネルは、即座に使用人を部屋に呼びもどして命令を告げた。
「カタリーナ家に知らせを送れ。これで最後、大事な話をしたいから、その準備をしておいてくれと」
「承知しました」
これでセイラやラルクに対して先手を打てると確信したライオネル。…しかし彼は気づいていなかった。彼の部屋の前で、その言葉に聞き耳を立てる人物が一人いたことを…。
「(は、伯爵様の婚約相手はこの私のはずでしょう!?それなのにライオネル様は、私でなくシャルナ・カタリーナを伯爵様と結ばせようとしている…!?ど、どういうことよ…!?)」
――――
ライオネルの発したその知らせは、その日のうちにカタリーナ家にもたらされた。知らせを届けた使用人は伝えることだけ告げるとすぐに帰っていき、部屋の中にはアーロンのみが残される。アーロンはどこかけだるそうな様子でイスに深く腰掛けると、その心の中にぼそっと独り言をつぶやいた。
「(やれやれ、上級伯爵様もしつこいなぁ…。何度断ってもめげずに向かってくるそのあきらめの悪さはいいことなのかもしれないけれど、いい加減相手にするのもつかれる……。まぁだけれど、次回はこれまでとは違って『これで最後』とのこと。次を最後に、潔くあきらめてくれればうれしいのだけれど…)」
迷惑でしかないライオネルからの襲撃予告。次でそれも終わりだと思うと、やや心を軽くするアーロンであったが…。
「(…ただ、ライオネル様の性格から考えると、おそらく最後の交渉はこれまで以上に自信があるのだろう。今度はいったいどんな条件を繰り出してくるつもりなのか…)」
ライオネルはこれまでに様々な条件を二人に提示してきた。伯爵夫人となれるだの、屋敷の一部を専用の部屋にするだの、伯爵家が支配する土地を譲るだの、シャルナが望むのなら専属の騎士をつけてやってもいいだの…。
しかし、どんな条件も二人の心をつかむことはかなわず、結局ライオネルの目論見が達成されることはないままだった。
どうしたものかと天井を見つめるアーロン。そんな彼のもとにシャルナが姿を現した。
「どうされたのですか、お父様?」
「あぁ、またライオネル様からの手紙だ…。最後にもう一度だけ話がしたいから、近いうちにここを訪れるのだと」
「またですか…。相変わらずしつこいですねぇ…。そのしつこさが好感度を下げるだけだとお気づきにならないのかしら…」
「??、あ、あぁ……」
シャルナの言葉を聞いて、どこか不思議そうな表情を浮かべるアーロン。
「……お父様??」
「あぁいや、まさかシャルナがそこまではっきりとものが言えるようになるなんて、思ってもいなかったから驚いているんだ。……これは将来、二人が結ばれた後ラルク殿は苦労することになるかもしれないな…(笑)」
「お、お父様!?そ、そんな気の早い!!」
アーロンの言葉に、シャルナは顔を赤くしながら両手をブンブンとふって答えた。ラルクはすっかりアーロンから認められる存在となっており、アーロンはいつでも二人の婚約を受け入れる準備を整えていた。
「いやいや、こうしてシャルナがしっかり自分をもってくれていることが、僕はうれしいんだよ。今までのシャルナは自分を殺して、僕たちの様子をずっとうかがっていただろう?そしてそんな君を僕は変えてあげることもできず、きづかずにずっとずっと苦しめてしまっていた…」
「お、お父様……そ、そんな……」
「だけど、僕たちはともに変わることができた!僕もシャルナも、本心から言いたいことを言えるようになれた!それは素晴らしいことだと思うんだ!」
「は、はい!私もそう思います!」
「そして、そんな変化を僕たちにもたらしてくれたのは、間違いなくラルク殿だった!あんな素敵な人とシャルナが結ばれるというのなら、こんなにうれしいことはないね♪」
「…///」
確かに二人の間に、以前までの雰囲気は全く見られなくなっていた。自分の言いなりになるようシャルナに仕向けていたアーロンの姿も、自分の運命に絶望して身を投げたり家出まで画策したシャルナの姿も。……ただそれがラルクがもたらしたものなのかどうかは疑問であるが…。
「そ、そうだお父様!!今度の祝勝パーティーにはラルク様もお越しになるとのことですから、一撃で彼の心を掴める衣装を一緒に選びに行きましょう!こういうのは形から入ることが肝心と本に書いてありました!!」
「はっはっは、それもそうだね。じゃあ行こうか(笑)」
どんな条件を持ち込もうとも、ここにライオネルの思惑が食い込める余地など一切ない。彼がそれを思い知らされるのは、今からほんの数日後の事…。
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