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第65話
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財閥令嬢との婚約を突然に申し込まれたラルク。普通の人間なら頭を真っ白にしてしまいそうな状況であるものの、やはりラルクの頭は並の人間とは違っていた…。
「やれやれ…。この僕に心を奪われた人間が、また一人生まれてしましましたか…。まったく、僕はどれだけ罪を作ってしまう男なのか…(キリッ」
決め顔をひけらかしながら、得意げにラルクはそう言った。財閥令嬢との婚約を持ち掛けられるという信じられない今の状況にあっても、ラルクは焦ることなどなくいつも通りの様子。
「ラルク様!あなたが様々な方から言い寄られているというのは承知の上なのですが、ぜひともシャルナとの婚約をお選びいただきたいのです!シャルナもきっとそうなることを望んでいることでしょう!」
「お、お父様!?」
「僕は信頼できる人間、それでいて実力のある人間にシャルナの事を任せたい!そしてゆくゆくは我が財閥を継ぐ跡取りとなっていただきたいのです!」
「お、お父様!?!?」
「シャルナもあなた様の事を愛しているのですし、良い夫婦となることに違いありません!あぁ、今からもう孫の顔を見るのが楽しみに…!」
「お、お父様!?!?!?」
「(い、今までにないくらいの猛アプローチ!?こ、ここまで激しく言い寄られたらさすがのお兄様でも…)」
アーロンの勢いに圧倒されている様子の兄ラルクを見て、今回ばかりはいつものようにいかないのでは…?とセイラは考えた。が、ラルクの前にそんなものは関係なかった様子。
「アーロン様、僕のもとに届けられたこのラブレターたちをよくご覧ください。今やこの僕は、この国に住まうすべての女性のものなのです。それゆえ、僕は誰か一人だけのものになるわけにはいかないのです(キラッ」
…財閥令嬢との婚約、それも完全に相手の方から言い寄られたものであるという、にわかにはとても信じがたい状況。夢かと勘違いさえしてしまいそうなその誘いを持ち掛けられてもなお、ラルクはいつもの軽口をどや顔で言い放った。
「(お兄様…。かっこいいんだかかっこわるいんだか…)」
「(お父様…。は、恥ずかしすぎるんですけど…)」
恥ずかしさなのかあきれなのか、いろいろな感情にその心を支配された様子のセイラとシャルナは、少し頭を抱えながらやれやれといった様子を見せた。
しかし一方、思わぬ反応をラルクに見せられたアーロンは、先ほどまで以上によりその心を燃やしていた。
「い、一財閥の長となる資格を提示されても、感情のままになびかないばかりかより自分の意思を強く主張される…!や、やはりこの人は人間ができすぎているに違いない!ぼ、僕はどうしても君にうちに来てもらいたくなったぞ…!」
「くっくっく…。アーロン様、僕の心を読みあげるとは、さすがは絶大な影響力を有する貴族家の長なだけはありますね…。ですが、簡単にこの僕の心を我が物にできるとは思わないことです。僕の心は常にセイラの元にあり、強く麗しいこの心はあの騎士でさえ手に入れることができなかったのですから!」
「お、おぉぉぉ…」
「ラ、ラルク様…!!!」
「(アーロン様…シャルナ様…。きっとお兄様は、何も考えていないだけだと思いますよ…)」
言っていることは誇大的でありながらも、あまりに胸を張って堂々と言葉を発するためか、それを聞いたアーロンやシャルナにはそのすべてが真実であるようにしか見えないらしい…。
「シャルナ…こうはしておれんぞ…!ラルク様の心をつかむその日まで、僕たちの戦いは終わらない…!」
「はい!お父様!」
「今すぐ屋敷に戻って作戦会議だ!シャルナ、この僕が約束しよう!君が将来の相手として選んだラルク様との婚約を、必ず実現させることを!」
「////」
…ついさっきまでの険悪な雰囲気はどこへやら、ラルクの登場とともに二人の関係は息を吹き返したようで、同じ目的を前にして完全に結束している様子。
「セイラ様!ラルク様!短い間でしたけれど、本当にお世話になりました!」
「ラルク様、我が財閥の跡継ぎの座には必ずやあなたに座っていただきますから!」
…二人は大きな声でそう言い残し、勢いよくセイラとラルクの前から去っていった…。
ついさっきまで強い緊張感に包まれていた部屋に、静寂の時が訪れる。
「…本当はどうして断ったのですか?お兄様」
「言ったことがすべてだとも♪僕は王国一のモテ男だからね♪」
「はぁ~…」
…実は裏でなにか深い考えがあっての事…と一瞬期待したセイラだったものの、その期待はもろくもはかなく崩れ去っていったのだった…。
「やれやれ…。この僕に心を奪われた人間が、また一人生まれてしましましたか…。まったく、僕はどれだけ罪を作ってしまう男なのか…(キリッ」
決め顔をひけらかしながら、得意げにラルクはそう言った。財閥令嬢との婚約を持ち掛けられるという信じられない今の状況にあっても、ラルクは焦ることなどなくいつも通りの様子。
「ラルク様!あなたが様々な方から言い寄られているというのは承知の上なのですが、ぜひともシャルナとの婚約をお選びいただきたいのです!シャルナもきっとそうなることを望んでいることでしょう!」
「お、お父様!?」
「僕は信頼できる人間、それでいて実力のある人間にシャルナの事を任せたい!そしてゆくゆくは我が財閥を継ぐ跡取りとなっていただきたいのです!」
「お、お父様!?!?」
「シャルナもあなた様の事を愛しているのですし、良い夫婦となることに違いありません!あぁ、今からもう孫の顔を見るのが楽しみに…!」
「お、お父様!?!?!?」
「(い、今までにないくらいの猛アプローチ!?こ、ここまで激しく言い寄られたらさすがのお兄様でも…)」
アーロンの勢いに圧倒されている様子の兄ラルクを見て、今回ばかりはいつものようにいかないのでは…?とセイラは考えた。が、ラルクの前にそんなものは関係なかった様子。
「アーロン様、僕のもとに届けられたこのラブレターたちをよくご覧ください。今やこの僕は、この国に住まうすべての女性のものなのです。それゆえ、僕は誰か一人だけのものになるわけにはいかないのです(キラッ」
…財閥令嬢との婚約、それも完全に相手の方から言い寄られたものであるという、にわかにはとても信じがたい状況。夢かと勘違いさえしてしまいそうなその誘いを持ち掛けられてもなお、ラルクはいつもの軽口をどや顔で言い放った。
「(お兄様…。かっこいいんだかかっこわるいんだか…)」
「(お父様…。は、恥ずかしすぎるんですけど…)」
恥ずかしさなのかあきれなのか、いろいろな感情にその心を支配された様子のセイラとシャルナは、少し頭を抱えながらやれやれといった様子を見せた。
しかし一方、思わぬ反応をラルクに見せられたアーロンは、先ほどまで以上によりその心を燃やしていた。
「い、一財閥の長となる資格を提示されても、感情のままになびかないばかりかより自分の意思を強く主張される…!や、やはりこの人は人間ができすぎているに違いない!ぼ、僕はどうしても君にうちに来てもらいたくなったぞ…!」
「くっくっく…。アーロン様、僕の心を読みあげるとは、さすがは絶大な影響力を有する貴族家の長なだけはありますね…。ですが、簡単にこの僕の心を我が物にできるとは思わないことです。僕の心は常にセイラの元にあり、強く麗しいこの心はあの騎士でさえ手に入れることができなかったのですから!」
「お、おぉぉぉ…」
「ラ、ラルク様…!!!」
「(アーロン様…シャルナ様…。きっとお兄様は、何も考えていないだけだと思いますよ…)」
言っていることは誇大的でありながらも、あまりに胸を張って堂々と言葉を発するためか、それを聞いたアーロンやシャルナにはそのすべてが真実であるようにしか見えないらしい…。
「シャルナ…こうはしておれんぞ…!ラルク様の心をつかむその日まで、僕たちの戦いは終わらない…!」
「はい!お父様!」
「今すぐ屋敷に戻って作戦会議だ!シャルナ、この僕が約束しよう!君が将来の相手として選んだラルク様との婚約を、必ず実現させることを!」
「////」
…ついさっきまでの険悪な雰囲気はどこへやら、ラルクの登場とともに二人の関係は息を吹き返したようで、同じ目的を前にして完全に結束している様子。
「セイラ様!ラルク様!短い間でしたけれど、本当にお世話になりました!」
「ラルク様、我が財閥の跡継ぎの座には必ずやあなたに座っていただきますから!」
…二人は大きな声でそう言い残し、勢いよくセイラとラルクの前から去っていった…。
ついさっきまで強い緊張感に包まれていた部屋に、静寂の時が訪れる。
「…本当はどうして断ったのですか?お兄様」
「言ったことがすべてだとも♪僕は王国一のモテ男だからね♪」
「はぁ~…」
…実は裏でなにか深い考えがあっての事…と一瞬期待したセイラだったものの、その期待はもろくもはかなく崩れ去っていったのだった…。
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