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第39話
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セイラの屋敷に到着したターナーは、前回と同じく再び呆然とするほかなかった。というのも今回は、自分よりも先にここに来ていた先客がいたためだった。
「セイラ様、向こう側の魔獣は私が片付ける!!この辺りにひそむ魔獣の対処を頼む!」
「おまかせくださいな!!」
そこには前回と同じく、魔獣たちをばったばったとなぎ倒していくセイラの姿と、そんな彼女と息をピッタリ合わせながら共に戦う、オクトの姿があった。一糸乱れぬ美しい二人のコンビネーションは、そこらの騎士や剣士をのそれを大きく上回るものだろう。
「や、やばっ!」
「セイラ様っ!!」
しかし聖女の力を目覚めさせたとはいっても、セイラはやはり戦闘に関しては素人。時々足を踏み外しそうになるものの、オクトがすぐさま彼女のもとに駆け寄りサポートする。
「セイラ様、なにもそこまでがっつかれなくとも…」
「だってこれ楽しいですし!私は少しくらいケガしても大丈夫ですよ?」
「はぁ…。あなた様は本当に変わっている…」
「それほどでも♪」
その光景を見たものならば、誰しも必ずこう言うことだろう。”あの二人はお似合いだ”と。そしてそれはターナーとて例外ではなく…。
「さぁ、最後の仕上げだ」
「了解っ!」
それから間もなく、二人は一匹もとり逃がすことなく魔獣の退治を果たした。
――――
仲睦まじい様子で会話を繰り広げるセイラとオクト。ターナーはそんな二人を遠目から見つめながら、心の中で寂しげにつぶやいた。
「(そうか、そういうことか……。あの二人はもうすでに……)」
これまで頭の中で思い描いていたセイラの姿が、切なく消え去っていく。彼女の相手が他でもない、騎士団の団長であるというのなら、麗しく剣をふるう彼女にもっともふさわしい相手であると言わざるを得ない…。ターナー自身、そこに反論はできなかった。
「(…花の事とか、お茶の事とか、喫茶店の事とか、いろいろと考えていたが…。無意味になってしまったか…)」
ターナーはその場に尻もちをつくような形で倒れると、深いため息をついて顔を伏せた。いつもなら”騎士の服に泥がつく”と言って絶対に避ける行為だが、今日ばかりはそうはせずにはいられなかった様子…。
「はぁ…」
倒れた衝撃で、懐にしまっていた手帳サイズの花の冊子がその場に落ちる。今までに味わった事のない種類の感情が、その心を支配していた。誰が悪いわけでもなく、誰を責めるわけでもなく。ただただ恋が実らなかったというだけの事…。
「どうしたんだい?こんなところで倒れこんで」
「??」
そんな様子で気落ちし、うつむいていたターナーに、一人の男が声をかけた。
「あ、あんたは確か…セイラの兄の…」
「ああ、そうだとも!隣、失礼するよ?」
ラルクはいつものように明るい口調でそう答えると、そのままターナーの隣に腰を下ろした。
「君は確か…。前に僕たちのところに駆けつけてくれた騎士だろう?今日も手伝いに来てくれたのかい?」
「い、いや…。俺は別に…」
「ふーーん。……ひょっとしてだけど、君……」
「な、なんだよ…(まさか気持ちがバレていたのか…!?)」
「この僕を騎士に入るようスカウトに来たんだろう!?そうだろう!?」
「(…はぁ?)」
「そうかそうか、やはり僕の存在は騎士たちの間でも噂になっているのかぁ~!まさかここまで人気者になれるとは思ってもいなかった…!」
「…」
いつもと変わらない様子で軽口をたたくラルク。ターナーは付き合ってられないといった様子でそっぽをむく…が。
「…で、本当はセイラに会いに来たのだろう?」
「(っ!?)」
突然に自分の心を読み明かしたかのような言葉を受け、ターナーはその心臓を強くドキッとさせる。
「そうかそうか、セイラの事を気にするとは、君も人を見る目があるというわけだ!」
「そ、そういうわけじゃ…!」
必死に否定しにかかるターナーだったものの、すぐにその抵抗をあきらめた。というのも、ラルクの表情はすでにすべてを見抜いているように見えたからだ。
そんなターナーの反応を見て、ラルクはそのまま言葉を続けた。
「人を見る目はあるが…簡単にセイラの事を手に入れられると思ったら大間違いだともっ!!」
「…?」
「セイラを手にしたいというのなら、まずは兄であるこの僕を打ち負かしてからにしてもらおう!」
「っ!?」
その言葉を聞いた時、ターナーはその体に電流を走らせた。…というのも…。
「(そ、そんなことを言うという事は、セイラの相手はまだ決まっていないという事か!?オクト団長との関係は、俺のただの勘違いだというのか!?)」
その心に希望を見出したターナーは、その場に立ち上がりラルクに正対した。言われた通り、本気でぶつかりにかかろうとしているのだった。
…しかしそこで、別の可能性を考え始める。
「(…いや、この男はあのセイラの兄だ…。妹があれほどに強いのなら、この男とて相当な実力者のはず…!これほど余裕の表情を浮かべていることにも、きっと裏があるに違いない…!)」
この場でラルクとぶつかり合う事は得策ではないと考えたターナーは、一旦この場から引き上げることとした。何も言わず背中を見せるターナーを見て、ラルクは言葉をかけた。
「いいのかい??ここまで来てセイラに会わずに帰っても??話だけでもしていったらどうだい??」
それに対しターナーは、久方ぶりの笑みを浮かべながらこう答えた。
「お気遣いどうも。けど大丈夫さ。次はきっと、すぐに会えるだろうから」
ターナーは落としていた花の冊子を拾い上げ、その場を後にしていった。
「セイラ様、向こう側の魔獣は私が片付ける!!この辺りにひそむ魔獣の対処を頼む!」
「おまかせくださいな!!」
そこには前回と同じく、魔獣たちをばったばったとなぎ倒していくセイラの姿と、そんな彼女と息をピッタリ合わせながら共に戦う、オクトの姿があった。一糸乱れぬ美しい二人のコンビネーションは、そこらの騎士や剣士をのそれを大きく上回るものだろう。
「や、やばっ!」
「セイラ様っ!!」
しかし聖女の力を目覚めさせたとはいっても、セイラはやはり戦闘に関しては素人。時々足を踏み外しそうになるものの、オクトがすぐさま彼女のもとに駆け寄りサポートする。
「セイラ様、なにもそこまでがっつかれなくとも…」
「だってこれ楽しいですし!私は少しくらいケガしても大丈夫ですよ?」
「はぁ…。あなた様は本当に変わっている…」
「それほどでも♪」
その光景を見たものならば、誰しも必ずこう言うことだろう。”あの二人はお似合いだ”と。そしてそれはターナーとて例外ではなく…。
「さぁ、最後の仕上げだ」
「了解っ!」
それから間もなく、二人は一匹もとり逃がすことなく魔獣の退治を果たした。
――――
仲睦まじい様子で会話を繰り広げるセイラとオクト。ターナーはそんな二人を遠目から見つめながら、心の中で寂しげにつぶやいた。
「(そうか、そういうことか……。あの二人はもうすでに……)」
これまで頭の中で思い描いていたセイラの姿が、切なく消え去っていく。彼女の相手が他でもない、騎士団の団長であるというのなら、麗しく剣をふるう彼女にもっともふさわしい相手であると言わざるを得ない…。ターナー自身、そこに反論はできなかった。
「(…花の事とか、お茶の事とか、喫茶店の事とか、いろいろと考えていたが…。無意味になってしまったか…)」
ターナーはその場に尻もちをつくような形で倒れると、深いため息をついて顔を伏せた。いつもなら”騎士の服に泥がつく”と言って絶対に避ける行為だが、今日ばかりはそうはせずにはいられなかった様子…。
「はぁ…」
倒れた衝撃で、懐にしまっていた手帳サイズの花の冊子がその場に落ちる。今までに味わった事のない種類の感情が、その心を支配していた。誰が悪いわけでもなく、誰を責めるわけでもなく。ただただ恋が実らなかったというだけの事…。
「どうしたんだい?こんなところで倒れこんで」
「??」
そんな様子で気落ちし、うつむいていたターナーに、一人の男が声をかけた。
「あ、あんたは確か…セイラの兄の…」
「ああ、そうだとも!隣、失礼するよ?」
ラルクはいつものように明るい口調でそう答えると、そのままターナーの隣に腰を下ろした。
「君は確か…。前に僕たちのところに駆けつけてくれた騎士だろう?今日も手伝いに来てくれたのかい?」
「い、いや…。俺は別に…」
「ふーーん。……ひょっとしてだけど、君……」
「な、なんだよ…(まさか気持ちがバレていたのか…!?)」
「この僕を騎士に入るようスカウトに来たんだろう!?そうだろう!?」
「(…はぁ?)」
「そうかそうか、やはり僕の存在は騎士たちの間でも噂になっているのかぁ~!まさかここまで人気者になれるとは思ってもいなかった…!」
「…」
いつもと変わらない様子で軽口をたたくラルク。ターナーは付き合ってられないといった様子でそっぽをむく…が。
「…で、本当はセイラに会いに来たのだろう?」
「(っ!?)」
突然に自分の心を読み明かしたかのような言葉を受け、ターナーはその心臓を強くドキッとさせる。
「そうかそうか、セイラの事を気にするとは、君も人を見る目があるというわけだ!」
「そ、そういうわけじゃ…!」
必死に否定しにかかるターナーだったものの、すぐにその抵抗をあきらめた。というのも、ラルクの表情はすでにすべてを見抜いているように見えたからだ。
そんなターナーの反応を見て、ラルクはそのまま言葉を続けた。
「人を見る目はあるが…簡単にセイラの事を手に入れられると思ったら大間違いだともっ!!」
「…?」
「セイラを手にしたいというのなら、まずは兄であるこの僕を打ち負かしてからにしてもらおう!」
「っ!?」
その言葉を聞いた時、ターナーはその体に電流を走らせた。…というのも…。
「(そ、そんなことを言うという事は、セイラの相手はまだ決まっていないという事か!?オクト団長との関係は、俺のただの勘違いだというのか!?)」
その心に希望を見出したターナーは、その場に立ち上がりラルクに正対した。言われた通り、本気でぶつかりにかかろうとしているのだった。
…しかしそこで、別の可能性を考え始める。
「(…いや、この男はあのセイラの兄だ…。妹があれほどに強いのなら、この男とて相当な実力者のはず…!これほど余裕の表情を浮かべていることにも、きっと裏があるに違いない…!)」
この場でラルクとぶつかり合う事は得策ではないと考えたターナーは、一旦この場から引き上げることとした。何も言わず背中を見せるターナーを見て、ラルクは言葉をかけた。
「いいのかい??ここまで来てセイラに会わずに帰っても??話だけでもしていったらどうだい??」
それに対しターナーは、久方ぶりの笑みを浮かべながらこう答えた。
「お気遣いどうも。けど大丈夫さ。次はきっと、すぐに会えるだろうから」
ターナーは落としていた花の冊子を拾い上げ、その場を後にしていった。
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