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第30話
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セイラへの復讐を誓ったファーラ伯爵だったものの、その計画はさっそく暗礁に乗り上げてしまう。
というのも、ここにきて彼にとって招かれざる客が現れてしまったためだった。
――――
「これまで伯爵家と騎士団は互いを助け合い、ともに深い絆で結ばれてきたわけだが…。それももう終わりのようだな」
「ま、待ってくれ!!急に押しかけてきて一方的に関係を終わらせるなど、乱暴すぎるだろう!僕らの間にはきっと何かの誤解があるんだ!ちゃんと話をしようじゃないか!」
焦りを隠せない伯爵が応対しているのは、ほかでもない騎士団団長のオクト。その表情は、長い付き合いである伯爵でさえもこれまでに見たことのないほど、落ち着いた怒りに満ちていた…。
「話は聞かせてもらった。あなた方が主催された食事会で、何が起こったのか、そのすべてを」
「(なにっ!?!?)」
もともとは大勢の人間に、自分とレリアとの関係を見せびらかすために開いた食事会。ゆえに参加していない人間にもその話が広まっていくのは、当然の事だった。
「(ど、どこからか聞きつけたのか…。し、しかしこのまま関係を切られてしまったらまずい…。それこそ今度こそ父上に、冗談でなく殺されてしまうかもしれない…!)」
伯爵はこれ以上関係を悪くしたくない一心から、ある提案を持ち掛けた。
「…オクト、ここからはビジネスの話をしようじゃないか。セイラの一人くらいどうなろうと、騎士団団長である君には何の関係もない事だろう?この僕に協力して、彼女の事を排除してはくれないか?もちろん、それ相応のお礼はさせてもらおうとも…!伯爵家と騎士団はこれからも、深く強い絆で結ばれていなければならない!それを不意にすることは、君にとっても得ではないだろう?」
「…」
オクトは返事をすることなく、自身のふところからタバコを取り出し、慣れた手つきで火をつけ、煙を味わい始める。
…それはまるで、自分の心の中に湧き上がる怒りを抑え込むかのように…。
「そもそも、食事会があのような展開を迎えるに至ったのは、すべてセイラの方に問題があるのだ!あの女の本性を知ったなら、君とて」「気づいているか?」
白い煙を吐きながら、オクトは伯爵の言葉を遮った。
「き、気づくって…。何の話だ?」
「前にここに届けた、婚約の祝いの手紙だよ」
「あ、あぁ…。もちろん読ませてもらったが…。別に何も不自然な点など…」
「…フーー…」
オクトは再び白い煙を吐き出した後、答え合わせを始める。
「…あの手紙、書かれている名前はすべて”セイラ”ではなく、”レリア”と書いたんだが…。婚約する相手の名前が違っていても、なんの違和感も感じないとは…」
「そ、そんなばかなっ!!??」
伯爵は急ぎその場を立ち上がり、以前届けられた手紙入りの封筒を机の引き出しから乱暴に引っ張り出す。そしてそこに書かれている名前を読み上げてみる…。
「…『ファーラ伯爵様、レリア様、ご婚約おめでとうございます』…。こ、これも…。こっちも…。これもか…。まさか、この手紙の全部が…」
「始めからセイラ様の事などどうでもよく、内心ではレリアの事しか愛していなかったあなたは、その手紙を見て何の違和感も感じなかったというわけだ。それもそうだよな?あなたが本命としていたのはセイラ様でなく、レリアなのだから」
かつてこの手紙に目を通した時の感想を、伯爵は思い起こす…。
――――
「みなが私とレリアとの関係を祝ってくれている!!これはもう間違いのない未来だとも!!…あぁ、こんなものを見ていたらまたレリアに会いたくなってきた…!」
――――
「オ、オクト貴様…。最初からこの僕の事を疑っていたのか…?」
「フーー…」
オクトは身を乗り出してタバコの火を消すと、その場を立ち上がってこう言葉を返した。
「一言だけ言っておこう。伯爵様、あなたがセイラ様の事をどう思い、どう扱っていたのか、今回の一件でよくわかった。あなたには彼女の受けた苦しみ以上の罰を受けてもらう事になるだろう。このまま何事もなく終わるなどとは思わないことだな」
「っ!!??」
ダラダラと額を流れる冷や汗が、伯爵の動揺ぶりを現していた。立ち去るオクトの背中をただただ黙って見つめながら、伯爵は心の中でつぶやいた。
「(ぼ、僕に逆らうなどたとえ貴様といえども許しはしない…!ただで終わらないのは貴様の方だとも!セイラと一緒に地獄に送ってくれる!!)」
というのも、ここにきて彼にとって招かれざる客が現れてしまったためだった。
――――
「これまで伯爵家と騎士団は互いを助け合い、ともに深い絆で結ばれてきたわけだが…。それももう終わりのようだな」
「ま、待ってくれ!!急に押しかけてきて一方的に関係を終わらせるなど、乱暴すぎるだろう!僕らの間にはきっと何かの誤解があるんだ!ちゃんと話をしようじゃないか!」
焦りを隠せない伯爵が応対しているのは、ほかでもない騎士団団長のオクト。その表情は、長い付き合いである伯爵でさえもこれまでに見たことのないほど、落ち着いた怒りに満ちていた…。
「話は聞かせてもらった。あなた方が主催された食事会で、何が起こったのか、そのすべてを」
「(なにっ!?!?)」
もともとは大勢の人間に、自分とレリアとの関係を見せびらかすために開いた食事会。ゆえに参加していない人間にもその話が広まっていくのは、当然の事だった。
「(ど、どこからか聞きつけたのか…。し、しかしこのまま関係を切られてしまったらまずい…。それこそ今度こそ父上に、冗談でなく殺されてしまうかもしれない…!)」
伯爵はこれ以上関係を悪くしたくない一心から、ある提案を持ち掛けた。
「…オクト、ここからはビジネスの話をしようじゃないか。セイラの一人くらいどうなろうと、騎士団団長である君には何の関係もない事だろう?この僕に協力して、彼女の事を排除してはくれないか?もちろん、それ相応のお礼はさせてもらおうとも…!伯爵家と騎士団はこれからも、深く強い絆で結ばれていなければならない!それを不意にすることは、君にとっても得ではないだろう?」
「…」
オクトは返事をすることなく、自身のふところからタバコを取り出し、慣れた手つきで火をつけ、煙を味わい始める。
…それはまるで、自分の心の中に湧き上がる怒りを抑え込むかのように…。
「そもそも、食事会があのような展開を迎えるに至ったのは、すべてセイラの方に問題があるのだ!あの女の本性を知ったなら、君とて」「気づいているか?」
白い煙を吐きながら、オクトは伯爵の言葉を遮った。
「き、気づくって…。何の話だ?」
「前にここに届けた、婚約の祝いの手紙だよ」
「あ、あぁ…。もちろん読ませてもらったが…。別に何も不自然な点など…」
「…フーー…」
オクトは再び白い煙を吐き出した後、答え合わせを始める。
「…あの手紙、書かれている名前はすべて”セイラ”ではなく、”レリア”と書いたんだが…。婚約する相手の名前が違っていても、なんの違和感も感じないとは…」
「そ、そんなばかなっ!!??」
伯爵は急ぎその場を立ち上がり、以前届けられた手紙入りの封筒を机の引き出しから乱暴に引っ張り出す。そしてそこに書かれている名前を読み上げてみる…。
「…『ファーラ伯爵様、レリア様、ご婚約おめでとうございます』…。こ、これも…。こっちも…。これもか…。まさか、この手紙の全部が…」
「始めからセイラ様の事などどうでもよく、内心ではレリアの事しか愛していなかったあなたは、その手紙を見て何の違和感も感じなかったというわけだ。それもそうだよな?あなたが本命としていたのはセイラ様でなく、レリアなのだから」
かつてこの手紙に目を通した時の感想を、伯爵は思い起こす…。
――――
「みなが私とレリアとの関係を祝ってくれている!!これはもう間違いのない未来だとも!!…あぁ、こんなものを見ていたらまたレリアに会いたくなってきた…!」
――――
「オ、オクト貴様…。最初からこの僕の事を疑っていたのか…?」
「フーー…」
オクトは身を乗り出してタバコの火を消すと、その場を立ち上がってこう言葉を返した。
「一言だけ言っておこう。伯爵様、あなたがセイラ様の事をどう思い、どう扱っていたのか、今回の一件でよくわかった。あなたには彼女の受けた苦しみ以上の罰を受けてもらう事になるだろう。このまま何事もなく終わるなどとは思わないことだな」
「っ!!??」
ダラダラと額を流れる冷や汗が、伯爵の動揺ぶりを現していた。立ち去るオクトの背中をただただ黙って見つめながら、伯爵は心の中でつぶやいた。
「(ぼ、僕に逆らうなどたとえ貴様といえども許しはしない…!ただで終わらないのは貴様の方だとも!セイラと一緒に地獄に送ってくれる!!)」
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