3 / 6
第3話
しおりを挟む
ノレッジ様が私の事を追放してからしばらくの時が経過した時、貴族家の将来を決める会合(貴族会)が開催された。
ここでは、それぞれの貴族が国にとって良くないことをしていないか、真っ当に貴族家としての振る舞いを行えているか、誰かに迷惑をかけていなかどうか、などということが客観的に判定され、ここで話し合われた内容は今後の彼らの評価やイメージに大きくかかわってくる。
「さて、今回もこの場に集まってくださった皆様に感謝を申し上げつつ、つつましく貴族家としての関係を続けていく上で適切な話し合いができることをうれしくおもっております。皆様、よろしくお願いいたします」
この場には大小さまざまな貴族家の人々から、王宮に関わる人々、資産家や名家も参加しており、なかなかそうそうたる顔ぶれではある。
会場中を非常に厳かな雰囲気が包み、余計な言葉など一切口にできないという空気が支配する…。
…さて、こんなすごい場所にどうして私みたいな人間が呼ばれているのかと言うと…。
「では、まず最初の議題に移りましょうか。他でもない、最近我々の業界を賑わせているノレッジ伯爵様の事についてです」
当のノレッジ伯爵は、この場には現れていない。
話を聞くところによると、もともとは彼もこの場に訪れる予定ではあったものの、この期に及んでセレスが駄々をこね、結局彼はセレスとの時間を選ぶことにしたのだという。
…貴族が貴族会を欠席するなんて論外な事だとは思うけれど、あの男ならやりそうなことではあるし、たぶんそれは本当の事なのだろう。
彼の元婚約者である私になら、間違いないものだと断言できる。
「今日はノレッジ様の真意のほどを確かめるべく、こうして議題にすることとしたのですが、ご本人が不在のようですね…」
…やはりこんなことは今までにない事なのか、司会の人は困惑したような表情を浮かべて見せる。
そしてそれは次第に他の人たちにも広がっていき、じわじわとこの場の空気がノレッジ様にいぶかしさを生み出すものとなっていく…。
「…ここに現れないなんて、あいつは本当に大丈夫なのか?いろいろと妙な噂があるみたいだが…」
「最近なんて、王都西側の城を一方的に接収したと聞いたぞ?なんでも妹の願いだからどうしても実現したかったとか言って、周りの反対を押しのけて勝手にやった事らしいが…」
「食料の備蓄を勝手に買い占めたのもあいつじゃなかったか??しかもそれも妹から言われた言葉が元だったとか聞いたが…」
色々な疑惑の声が持ち上がっていく中、司会の人は一旦この場をおさめにかかる。
「皆様落ち着いてください。伯爵様におかれましてはいろいろな噂話が駆け巡っておりますが、今日はそれらの真偽のほどを確かめるべく、ある人にお話を伺いたく思っております。他でもない、伯爵様とは以前まで婚約者の関係にあった、マリアさまでございます」
「「おおぉぉ…!」」
私の名前が呼び出された途端、この場に集まった人々から少し驚きの声があげられる。
まぁ無理もない、普通なら婚約破棄された女性は、その過去をいち早く忘れてしまいたいと思う事だろうから、こんな形で大勢の前に現れることなんてないだろうから。
でも私は、伯爵様のあの性格やふるまいをここに集まった人々に知ってもらいたく、こうして話をすることを受け入れることにした。
「ではマリア様、単調直入にお聞きしますが…。あなたの目に伯爵様は、どのように映りましたか?」
聞かれたことに、私はただただ正直に答えるだけ。
私は早速その質問に対し、第一声を発した。
「端的に言えばあの人は……」
ここでは、それぞれの貴族が国にとって良くないことをしていないか、真っ当に貴族家としての振る舞いを行えているか、誰かに迷惑をかけていなかどうか、などということが客観的に判定され、ここで話し合われた内容は今後の彼らの評価やイメージに大きくかかわってくる。
「さて、今回もこの場に集まってくださった皆様に感謝を申し上げつつ、つつましく貴族家としての関係を続けていく上で適切な話し合いができることをうれしくおもっております。皆様、よろしくお願いいたします」
この場には大小さまざまな貴族家の人々から、王宮に関わる人々、資産家や名家も参加しており、なかなかそうそうたる顔ぶれではある。
会場中を非常に厳かな雰囲気が包み、余計な言葉など一切口にできないという空気が支配する…。
…さて、こんなすごい場所にどうして私みたいな人間が呼ばれているのかと言うと…。
「では、まず最初の議題に移りましょうか。他でもない、最近我々の業界を賑わせているノレッジ伯爵様の事についてです」
当のノレッジ伯爵は、この場には現れていない。
話を聞くところによると、もともとは彼もこの場に訪れる予定ではあったものの、この期に及んでセレスが駄々をこね、結局彼はセレスとの時間を選ぶことにしたのだという。
…貴族が貴族会を欠席するなんて論外な事だとは思うけれど、あの男ならやりそうなことではあるし、たぶんそれは本当の事なのだろう。
彼の元婚約者である私になら、間違いないものだと断言できる。
「今日はノレッジ様の真意のほどを確かめるべく、こうして議題にすることとしたのですが、ご本人が不在のようですね…」
…やはりこんなことは今までにない事なのか、司会の人は困惑したような表情を浮かべて見せる。
そしてそれは次第に他の人たちにも広がっていき、じわじわとこの場の空気がノレッジ様にいぶかしさを生み出すものとなっていく…。
「…ここに現れないなんて、あいつは本当に大丈夫なのか?いろいろと妙な噂があるみたいだが…」
「最近なんて、王都西側の城を一方的に接収したと聞いたぞ?なんでも妹の願いだからどうしても実現したかったとか言って、周りの反対を押しのけて勝手にやった事らしいが…」
「食料の備蓄を勝手に買い占めたのもあいつじゃなかったか??しかもそれも妹から言われた言葉が元だったとか聞いたが…」
色々な疑惑の声が持ち上がっていく中、司会の人は一旦この場をおさめにかかる。
「皆様落ち着いてください。伯爵様におかれましてはいろいろな噂話が駆け巡っておりますが、今日はそれらの真偽のほどを確かめるべく、ある人にお話を伺いたく思っております。他でもない、伯爵様とは以前まで婚約者の関係にあった、マリアさまでございます」
「「おおぉぉ…!」」
私の名前が呼び出された途端、この場に集まった人々から少し驚きの声があげられる。
まぁ無理もない、普通なら婚約破棄された女性は、その過去をいち早く忘れてしまいたいと思う事だろうから、こんな形で大勢の前に現れることなんてないだろうから。
でも私は、伯爵様のあの性格やふるまいをここに集まった人々に知ってもらいたく、こうして話をすることを受け入れることにした。
「ではマリア様、単調直入にお聞きしますが…。あなたの目に伯爵様は、どのように映りましたか?」
聞かれたことに、私はただただ正直に答えるだけ。
私は早速その質問に対し、第一声を発した。
「端的に言えばあの人は……」
362
お気に入りに追加
423
あなたにおすすめの小説
初恋の君と再婚したい?お好きになさって下さいな
藍田ひびき
恋愛
「マルレーネ。離縁して欲しい」
結婚三年目にして突然、夫であるテオバルト・クランベック伯爵からそう告げられたマルレーネ。
テオバルトにはずっと想い続けている初恋の君がいた。ようやく初恋の女性と再会できた夫は、彼女と再婚したいと述べる。
身勝手な言い分に呆れつつも、マルレーネは離縁を受け入れるが……?
☆コミカライズ版がブシロードワークス様より2025年2月7日発売の「愛さないと言われた令嬢ですが、勝手に幸せになりますのでお構いなく! アンソロジーコミック」に収録されています。
※ なろうにも投稿しています。
婚約者と親友がやって来て「愛し合ってる」とか言ってきたうえ婚約破棄を宣言されてしまいました。が、父が復讐しました。
四季
恋愛
婚約者と親友がやって来て「愛し合ってる」とか言ってきたうえ婚約破棄を宣言されてしまいました。が、父が復讐しました。
自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。
Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。
二人から見下される正妃クローディア。
正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。
国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。
クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。
君より妹さんのほうが美しい、なんて言われたうえ、急に婚約破棄されました。~そのことを知った父は妹に対して激怒して……?~
四季
恋愛
君より妹さんのほうが美しい、なんて言われたうえ、急に婚約破棄されました。
そのことを知った父は妹に対して激怒して……?
殿下の御心のままに。
cyaru
恋愛
王太子アルフレッドは呟くようにアンカソン公爵家の令嬢ツェツィーリアに告げた。
アルフレッドの側近カレドウス(宰相子息)が婚姻の礼を目前に令嬢側から婚約破棄されてしまった。
「運命の出会い」をしたという平民女性に傾倒した挙句、子を成したという。
激怒した宰相はカレドウスを廃嫡。だがカレドウスは「幸せだ」と言った。
身分を棄てることも厭わないと思えるほどの激情はアルフレッドは経験した事がなかった。
その日からアルフレッドは思う事があったのだと告げた。
「恋をしてみたい。運命の出会いと言うのは生涯に一度あるかないかと聞く。だから――」
ツェツィーリアは一瞬、貴族の仮面が取れた。しかし直ぐに微笑んだ。
※後半は騎士がデレますがイラっとする展開もあります。
※シリアスな話っぽいですが気のせいです。
※エグくてゲロいざまぁはないと思いますが作者判断ですのでご留意ください
(基本血は出ないと思いますが鼻血は出るかも知れません)
※作者の勝手な設定の為こうではないか、あぁではないかと言う一般的な物とは似て非なると考えて下さい
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※作者都合のご都合主義、創作の話です。至って真面目に書いています。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる