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第9話
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「っ!!!!」
心臓に剣先を突き立てられた感覚がよみがえり、私は横たわっていた体を勢いよく起こした。
…けれど、あの時確かに感じた痛みは、すっかり消えていた。
後ろに結ばれていた両手も、いつのまにか自由になっている。
いやそれどころか、ついさっきまでいたはずの場所とは全く違う場所にいる様子…。
「起きたか、人間さん」
「っ!?」
不意に後ろから声をかけられ、私はどきっと反応してしまう。
なんとか勇気を振り絞り、自分の顔を声の主の方向へと向けていく。
そこには不思議な人?が腰かけていた。
パッと見た感じは人間だけれど、よく見れば人間じゃない。
頭のあたりには黒い角のようなものが生えているし、手足もよく見るとなんだか少し形状が違っている。
背中には黒っぽい翼まで生えているし、両目はなんだか赤く光っているように見えた。
「なかなか起きなくて退屈してたんだ。じゃあ、さっそく話を始めよう」
私と少し離れた位置にいた彼はそう言うと、腰かけていた椅子から翼をはためかせて飛び上がり、一気に私の隣に腰を下ろした。
「え、えっと…。私って、殺されちゃったんですよね…?それで地獄に落ちちゃったんですかね…?」
「地獄?あぁ、地獄はそっちだよ。よく見ると見えるだろう?」
「??」
彼に指さされた方を見てみる。
するとそこには、確かに赤く禍々しい不気味な世界が広がっているのが見えた。
「それと、あっちが天国」
同じく彼に言われた方向に目をやってみる。
さっきは下の方だったけれど、今度は上の方だった。
そこには美しく輝く大樹があり、その周辺に宝石のように輝く空間がいくつも広がっていた。
「そして今俺たちがいるのが、そのどちらでもない場所というわけだ」
「え…。え?」
「腑に落ちないか?まぁすぐにわかるさ」
そういうと彼は改めて私の方に向き合い、自己紹介を始めた。
「俺はマティス。ここで死神をしている」
「し、死神…!?そ、それに結局ここって一体…」
「ここは天国でも地獄でもない、第三の場所さ。死んだ人間はあのどちらかにその魂を運ばれていくわけだが、俺たち死神は時々こうやって人間の魂をねこばばしてる」
「ね、ねこばば…?そ、それはどうして…?」
「人間の死に方にもいろいろあるが、中でも人間に殺された人間の魂はいい味がする。なのにそれをそのまま馬鹿正直に天国だの地獄だのに送ってしまうなんてもったいないじゃないか。お前もそう思うだろう?」
「え、えっと…」
「まぁつまり何が言いたいかというと…」
「!?」
彼は突然私の頭をつかむと、そのまま自身の口元へと私の耳を導き、そのそばで低い声でつぶやいた。
「お前にもう一度、命をやる。その命で、お前を殺した人間たちに復讐するんだ」
心臓に剣先を突き立てられた感覚がよみがえり、私は横たわっていた体を勢いよく起こした。
…けれど、あの時確かに感じた痛みは、すっかり消えていた。
後ろに結ばれていた両手も、いつのまにか自由になっている。
いやそれどころか、ついさっきまでいたはずの場所とは全く違う場所にいる様子…。
「起きたか、人間さん」
「っ!?」
不意に後ろから声をかけられ、私はどきっと反応してしまう。
なんとか勇気を振り絞り、自分の顔を声の主の方向へと向けていく。
そこには不思議な人?が腰かけていた。
パッと見た感じは人間だけれど、よく見れば人間じゃない。
頭のあたりには黒い角のようなものが生えているし、手足もよく見るとなんだか少し形状が違っている。
背中には黒っぽい翼まで生えているし、両目はなんだか赤く光っているように見えた。
「なかなか起きなくて退屈してたんだ。じゃあ、さっそく話を始めよう」
私と少し離れた位置にいた彼はそう言うと、腰かけていた椅子から翼をはためかせて飛び上がり、一気に私の隣に腰を下ろした。
「え、えっと…。私って、殺されちゃったんですよね…?それで地獄に落ちちゃったんですかね…?」
「地獄?あぁ、地獄はそっちだよ。よく見ると見えるだろう?」
「??」
彼に指さされた方を見てみる。
するとそこには、確かに赤く禍々しい不気味な世界が広がっているのが見えた。
「それと、あっちが天国」
同じく彼に言われた方向に目をやってみる。
さっきは下の方だったけれど、今度は上の方だった。
そこには美しく輝く大樹があり、その周辺に宝石のように輝く空間がいくつも広がっていた。
「そして今俺たちがいるのが、そのどちらでもない場所というわけだ」
「え…。え?」
「腑に落ちないか?まぁすぐにわかるさ」
そういうと彼は改めて私の方に向き合い、自己紹介を始めた。
「俺はマティス。ここで死神をしている」
「し、死神…!?そ、それに結局ここって一体…」
「ここは天国でも地獄でもない、第三の場所さ。死んだ人間はあのどちらかにその魂を運ばれていくわけだが、俺たち死神は時々こうやって人間の魂をねこばばしてる」
「ね、ねこばば…?そ、それはどうして…?」
「人間の死に方にもいろいろあるが、中でも人間に殺された人間の魂はいい味がする。なのにそれをそのまま馬鹿正直に天国だの地獄だのに送ってしまうなんてもったいないじゃないか。お前もそう思うだろう?」
「え、えっと…」
「まぁつまり何が言いたいかというと…」
「!?」
彼は突然私の頭をつかむと、そのまま自身の口元へと私の耳を導き、そのそばで低い声でつぶやいた。
「お前にもう一度、命をやる。その命で、お前を殺した人間たちに復讐するんだ」
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