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最終章
最後の戦い 二
しおりを挟む 入って来たのは先ほど出て行ったケランと、後ろに女性がいた。
「レナ、紹介するよ、彼女はサーザ。これからレナについてくれる。一応役割としたら侍女で、身の回りの事をしてくれるけれど、護衛も兼ねているからちゃんとサーザを連れて歩くんだよ。サーザと一緒であれば、王宮内ならどこへ行ってもいい。サーザ。」
そう言ったウィンフォードは、サーザに視線を移すと、サーザが一歩前へ出て挨拶をする。
「はい。私サーザと申します。誠心誠意お遣いさせていただきます。」
「え!や、そんな…は、はい。ではこちらこそよろしくお願い致します。」
レナは、自分と同じ年齢か年上のような、姿勢もピンとして礼儀正しい女性が自分に対して恭しくお辞儀をしてきたから戸惑ってしまう。
「レナ。戸惑うかもしれないが、何度も言うがこの国では異世界人は特別な存在なんだよ。だから、もっと堂々としていればいい。」
「はい。私はお遣いさせていただく身。ウィンフォード様のようにあごで使って下さって結構ですから。それが私の仕事でございます故何なりと。」
サーザはそう言ってにっこりと笑った。
「まぁ、概ねそういう事だ。あごで使ってやるとサーザは喜ぶぞ。」
「喜んでいるのではありません。それが仕事であり、お仕えさせていただく使命を果たす事は当たり前の事です。」
「サーザはいちいち全力投球過ぎるんだよな…」
サーザの後ろで、ケランがぼそりと呟く。サーザはそれを聞き逃さず後ろを向き、
「何か言いました?」
と睨んだ。それを見たウィンフォードは苦笑いをしながら、レナへと視線を送り、
「じゃぁ、今日はもう遅い。サーザ、レナをよろしく。あとはもろもろの説明もするんだ。」
と言った。
レナは、頷いてお礼を述べる。
「はい。ウィンフォードさん、いろいろとありがとうごさいました。」
レナはふわりと笑顔を向けて、立ち上がってお辞儀をする。
「レナ、気にするな。またな。…あ、レナ、アイビーには伝えておく。早急に王宮内で仕事が出来るようにするから。」
「え!あ、ありがとうございます!」
レナは顔をほころばせてそうもう一度言い、サーザに続いて部屋を出た。
「良かったですね。」
部屋を出て、前を歩くサーザがレナへと言葉を掛ける。
「え?」
レナはというと、違う事を考えていた。廊下は広く天井も高い。廊下の途中に花瓶が置かれ、色とりどりの花が生けられている。
(きっとこの王宮内にも、様々な職業の人がいるのね。掃除をする人に、生花をする人、あとは…)
ウィンフォードは王宮内で仕事が出来るようにすると言ってくれた。自分がもし、トリマーの仕事ではない事をするのなら、何が出来るかと考えていたのだ。
「いえ。ウィンフォード様が、レナ様の仕事を出来るように思案して下さると言われておりましたから。」
「サーザさん、その」
レナが口を開くとサーザは立ち止まり、レナの方を向き、レナの傍まで早足で戻って来た。
こう立ち並ぶと、サーザの方が背が少し高かったのでレナは威圧感を少し感じてしまい、身構える。
「サーザと、お呼び下さい。」
「…サーザ。私は様なんてそんな大層な」
「レナ様。私は今作法をすっ飛ばしまして敢えて言わせていただきます。先ほど、ウィンフォード様は言われておりましたよね、『異世界人は特別だ』と。つまりは貴族と同等、場合によってはそれ以上ともなります。私は仕える身と申しました。レナ様とお呼びする以外あり得ません。」
「…分かりました。」
「レナ様!私には、丁寧な言葉は無用ですよ。」
「え?でも…そう、そうね。お願いしま…お願い。」
「はい!」
まるで、良く出来ました、とでも言うようににっこりとしたサーザはまた、進み始めて言葉を繋いだ。
「希望は極力、レナ様に沿えるようにと申し遣っております。けれども明日からは、この国の事も少しずつお教えしますから、少しずつ学んでいって下さいね。きっと、これから生活する王宮では、街で過ごしていた時とは違って決まり事もありますから。」
「分かり…分かったわ。」
「フフフ。レナ様、きつく申し上げてしまいましたが、無理なさいませんよう。これから慣れていきましょうね。」
レナは、サーザは厳しくも優しい心の持ち主なんだなと思い、これからの王宮での生活も楽しく過ごせるといいなと思った。
「レナ、紹介するよ、彼女はサーザ。これからレナについてくれる。一応役割としたら侍女で、身の回りの事をしてくれるけれど、護衛も兼ねているからちゃんとサーザを連れて歩くんだよ。サーザと一緒であれば、王宮内ならどこへ行ってもいい。サーザ。」
そう言ったウィンフォードは、サーザに視線を移すと、サーザが一歩前へ出て挨拶をする。
「はい。私サーザと申します。誠心誠意お遣いさせていただきます。」
「え!や、そんな…は、はい。ではこちらこそよろしくお願い致します。」
レナは、自分と同じ年齢か年上のような、姿勢もピンとして礼儀正しい女性が自分に対して恭しくお辞儀をしてきたから戸惑ってしまう。
「レナ。戸惑うかもしれないが、何度も言うがこの国では異世界人は特別な存在なんだよ。だから、もっと堂々としていればいい。」
「はい。私はお遣いさせていただく身。ウィンフォード様のようにあごで使って下さって結構ですから。それが私の仕事でございます故何なりと。」
サーザはそう言ってにっこりと笑った。
「まぁ、概ねそういう事だ。あごで使ってやるとサーザは喜ぶぞ。」
「喜んでいるのではありません。それが仕事であり、お仕えさせていただく使命を果たす事は当たり前の事です。」
「サーザはいちいち全力投球過ぎるんだよな…」
サーザの後ろで、ケランがぼそりと呟く。サーザはそれを聞き逃さず後ろを向き、
「何か言いました?」
と睨んだ。それを見たウィンフォードは苦笑いをしながら、レナへと視線を送り、
「じゃぁ、今日はもう遅い。サーザ、レナをよろしく。あとはもろもろの説明もするんだ。」
と言った。
レナは、頷いてお礼を述べる。
「はい。ウィンフォードさん、いろいろとありがとうごさいました。」
レナはふわりと笑顔を向けて、立ち上がってお辞儀をする。
「レナ、気にするな。またな。…あ、レナ、アイビーには伝えておく。早急に王宮内で仕事が出来るようにするから。」
「え!あ、ありがとうございます!」
レナは顔をほころばせてそうもう一度言い、サーザに続いて部屋を出た。
「良かったですね。」
部屋を出て、前を歩くサーザがレナへと言葉を掛ける。
「え?」
レナはというと、違う事を考えていた。廊下は広く天井も高い。廊下の途中に花瓶が置かれ、色とりどりの花が生けられている。
(きっとこの王宮内にも、様々な職業の人がいるのね。掃除をする人に、生花をする人、あとは…)
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「いえ。ウィンフォード様が、レナ様の仕事を出来るように思案して下さると言われておりましたから。」
「サーザさん、その」
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こう立ち並ぶと、サーザの方が背が少し高かったのでレナは威圧感を少し感じてしまい、身構える。
「サーザと、お呼び下さい。」
「…サーザ。私は様なんてそんな大層な」
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「はい!」
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