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第二章

17.どうやら何かありそうだ

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「双子だろ? 王家は誠実な産婆を揃えたようだ。惜しかったな?」
「なにが惜しいのかさっぱりだな」

 そう言って、オズワルドは侮蔑を乗せた眼差しをグレイスに向けた。

「それにしても、情報屋はそんなにペラペラと喋るとは、知らなかったな」
「どちらかといえば何でも屋だからな、俺は。長生きの結果だ」

「なるほど。長生きすると口が軽くなってしまうのか。覚えておこう」
「人間の寿命だとどうなんろうなぁ。参考になるか?」

 オズワルドは嫌そうな顔をして、グレイスは親しげに笑った。

「ま、同じ呪われた者同士、仲良くしようじゃねぇか」

 間が空いた。

「は?」
「ア? 自覚ねぇの?」

「呪いって……、貴様はなにを知っている」
「あー。いいぜ、俺もあやかりたいからな」

 グレイスはなにかしら思案した後、うなずいた。

「あやかりたい……?」

 オズワルドは怪訝に男を見遣る。
 グレイスは人差し指を立て、説明した。

「俺は呪われてる。生きている間はまだ対抗できるが、死ぬまでにこの呪いを解けなけりゃ、俺はカースド・メラースになっちまう。だから視える・・・。同じ土俵にあるソレをな。コルート家の令嬢がアンタのそれを抑えてたんだ。間違いない。俺は自分の呪いを解くための情報を集めてるからな」

 オズワルドは目を白黒とした。

「メイベルは、たしかに聖女として高い資質を持っていると聞くが……」
「魔女の外見だものなぁ。でもアンタは神君竜王の生まれ変わりだろ」

「ハ???」
「だから気にせず婚約したん……ア?」

 両者は見つめ合った。

「まさか、それすらも自覚がなかったのか……?」
「……人は誰しも、何者かの生まれ変わりだと思わない」

「アンタは特別じゃねぇか」
「伝説では神君竜王を滅ぼしたのは我が王家だったと記憶している」

「滅ぼされたのではなく、眠りについただけだとしたら? 功績なんて後でどうとでも捏造できるだろ。時間が経てば、なおさら」

「このまま不敬罪で貴様を捕らえられるが?」

 魔王の再臨はメイベルだと聞かれさていたが、一瞬、事実は自分の中にあるのではないかとオズワルドは思った。

 神君竜王を魔王とも呼ぶのは、王族だけが知る歴史だ。

 かの竜王があまりにも仁徳で知られているので、市井の反感を鑑みて口をつぐんだ結果だ。長い年月を経て、貴族ですら忘れてしまっている。

 グレイスはかるく笑った。

「暴政と言ってやんよ。こういう時ばかりは半分エルフの血を引いてて助かったと思うぜ。伝えられる・・・・・からな」

 オズワルドは、深く息を吐いて腕を組んだ。

失われた魔法ロスト・マジック……。ハーフエルフなんて初めて見た」

「あの嬢ちゃんも同じことを言ってたよ。夫婦は似る者だな?」
「…………」

 オズワルドは鼻白む。
 男の言葉を無視したかったが、現状の遣る瀬無さには、どうにもならなかった。

「無駄話は終わりだ。貴様の知っていることを、洗いざらい話せ。報酬は出す」

 気持ちを振り切るように、オズワルドは八つ当たり同然に語気を強めた。
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