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2章 約束と忘れた思い出
29.不穏な空気と鈴の音と
しおりを挟む「ん~?あっれぇ…?なんか変だな…」
「…?どうしたんですかタージルさん」
机に向かい、うんうんと唸り、首を傾げているタージルが気になり、フレールは声を掛けた
「んー、なんか…いや、やっぱりなんでもない」
「そう言われると気になるんですが…」
「あぁ、そうだ。後で国に抗議しに行くから準備しておいて」
「…は???」
フレールの追求を無視して放たれた言葉に思考が追いつかず、目を白黒させているとタージルはさらに言葉を続けた
「これ、他国からの間接的な犯行だね
多分、近隣の国でも起きてたりするんじゃないかな」
「他国…??」
目が点になり、繰り返し「他国?」と聞くと、「そう、他国」と返事が返ってくる。
フレールはその内容をようやく理解出来るようになるとさっと顔を青ざめさせた
◆◇◆◇◆◇
「他国って、近隣国って…!!!?」
「うん、下手すりゃ戦争が起きるかもね
…うーん、うちの従業員に手紙出しとくかぁ」
「戦争って…!!そんな呑気に…!!」
「もしかしたら、だから。
それに私達は巻き込まれただけで関係ないだろう?」
あまり興味が無いのか、紙を取り出し、戦争が始まると言うことを書き始めたのだろうタージルにそう言われ、「そうですけど…」とフレールは俯いた
「もし、うちの国にでも飛び火したら…」
「おや、随分と私達の国を気に入ってくれていたようだね?
君の祖国でもないのにそこまで心配しているとわ」
「からかわないでくださいよ!
…祖国よりも待遇の良い場所に恩を感じるのは何らおかしなことでは無いでしょう…」
「…ブジーア国はどんだけ酷い場所だったんだ…」
時期王の義兄がこんなに言うって…と引きながらも、「まぁ、うちは大丈夫だろう」とタージルは軽い様子で答えた
「我が国の王は根回しが得意でね
跡継ぎである殿下も素晴らしい手腕を見せていると言う。
…あぁ、だからか。比較的近い国の筈なのにうちに鉛が持ち込まれていないのは」
「え…??鉛??」
「うん?知らないかい?鉛は酸味の強いワインを甘くする、だけど鉛自体毒性の強いものなんだよ
そして、鉛はこの国では取れない」
「だから、他国が関わっている…と?」
「そう」と小さく頷くと、手紙を書き終わったのか、小鳥を呼び出しそれをどこかへと送っていた
「姉上、お遣いを頼めますか?」
「にゃぁ…」
そうタージルが声をかけるとしょうがないと言うように今までソファーで眠っていた白猫がチリンと鈴の音を鳴らしながら立ち上がった
「これを、うちの店の者に」
「にゃん」
「え?さっきの小鳥はどこへ…?」
「あれは陛下宛だよ。
万が一があっても素早く動けるようにね
フレール、先程あんな事を言ったが、君も心の準備はしておいた方がいい」
そんなことを言いながら、ネコが鈴の音を鳴らし姿を消したのを見送ったタージルは深く深くため息をついた
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