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1章 出会いと記憶

6.騎士との戯れ

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ペラリ、ペラリと紙が捲られ、優しい風が吹き込む窓際で魔女はロッキングチェアに腰かけ本の世界に浸っていた
その膝には黒猫がグルグルと喉を鳴らし昼寝をする穏やかな心地よい空間、そこにコンコンと控えめなノックが静かな部屋に響いた

「どうぞ」

文字から目を離さず入室の許可を出すと「失礼します」と珍しい声が聞こえ顔を上げた

「あら、珍しいわね?リオン」
「お休み中申し訳ございません魔女さま。
実はお願いがありまして…」

申し訳なさそうに、話しかけづらそうに言うので魔女は本を閉じ、片付けた

「いいわ、言ってご覧なさい
まぁ、叶えられるかどうかは話を聞かないと分からないけれど」
「ありがとうございます。
その…私は妻とこちらにお世話になる前までは騎士として剣を握っておりまして…」
「あぁ、エーデルがそんな事を言っていたわね
それで?何かあったかしら?」
「いえ…何処か拓けた場所で素振りを行う許可をと思いまして」
「別にいいのだけれど…じいやの手伝い派今日はもう終わったの?」
「はい。今日はもう大丈夫だと、お休みを頂きました」
「なら、エーデルとの夫婦の時間は取らなくていいのかしら?」

ふと、ここに迷い込んでから二人の時間は取れているのかと心配に思った魔女は「取れていてもあとで丸一日休暇を取らせましょう」と心に決めた
そんな心配を余所に何処か心配したような表情でリオンは話す

「エーデルは…何故か最近顔を合わせると真っ赤になって何処かへ行ってしまうのです…
魔女さまは何かご存知でしょうか…?」
「え?…あっ…ごめんなさいね、それは私がエーデルをちょっと揶揄い過ぎたせいね」
「揶揄う…?」
「この間、恋バナをしたのよ
それはそれは貴方の事を話すエーデルはとても可愛かったわ」
「…魔女さま、妻をあまりいじめないでやってください」
「ふふ、はぁい。もうやらないわ
リンゴよりも真っ赤になってしまってちょっと可哀想だったもの」

クスクスと魔女は笑い、リオンは恋バナをしていた時のエーデルよりは薄いが顔を赤く染めていた

「それで…あぁ、拓けた場所ね?
目星を付けている場所はもうあるかしら?」
「いえ、まだ…何処かいい場所はありますか?」
「そうねぇ、庭の林を抜けた先に大きな原っぱがあるわ
そこでいいなら今から案内してあげる」
「ありがとうございます!」
「そう言えば…木刀はあるの?」
「いや、国を出る時に持ってきていた剣を振るおうかと」
「ふーん、確かどこかに木刀があったはずだけど、使わなくて大丈夫かしら?」
「…お借り出来るなら…お借りしたい」
「別に誰も使わないわ。あなたに上げる
庭に出る前に倉庫に行くわ。付いてきなさい」

カタリ、音をたて立ち上がると優雅に黒猫は床に着地し、みゃーと挨拶をしそのまま窓から消え去った
魔女はそれを見送るとリオンに「さぁ、行くわよ」と声を掛け扉を開けた
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