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恋する乙女は京美人

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「ただいまー桜子さん
なんか手伝う事ある?」
「おかえりなさい、純くん
ちょいと待っとぉて」

そう言ってせわしなく動くのは、細井桜子さん
時計職人を営む父のお弟子さんであり、師である父に恋する京美人の乙女だ
本人はばれてないと思っているけど、父さん以外は大体ばれてるし、おれ的には死んだ母さんの遺言で「お父さんを好きになってくれた人が居て純が気に入ったら何が何でもくっつけろ」と言われているのでアリだと思ってる

「純くん手洗ったらサラダ作ってくれる?」
「はぁい、うげ…トマトあんじゃん」
「好き好かんはあかんよ
ちゃんと食べなね」
「うぃー…そういやさ、桜子さんも実家帰ったりすんの?」
「え?なんで実家?」

不思議そうに首をかしげる桜子さんにおれも首をかしげた
もしかして、世界終わるってニュース見てない?

「隕石のニュース見てないの?」
「あぁ…世界終わるっていう…
別に帰らんでも問題あらへんし…」
「ぇぇ?親とかなんも言ってこないの?」
「独り立ちした子供の扱いなんてこんなんよ」
「そんなもん?
じゃあ、父さんにはいつ告白するの?」
「え、へっな、なんで?!」

世界終わる前に告白してくれるとうれしいなぁと更に言うと顔を真っ赤にして悲鳴を上げられた
なんで、どうしてとしか言わない桜子さんにばれてないとでも?いや父さんは気づいてないけど、少なくとも千夏は知ってるよと返すと蹲ってしまった

「ばれてないとでも?」
「うぅぅぅううううう…」
「うちに来たおれの友達みんなに聞かれるし」
「な、なにを…?」
「お弟子さん、お前の親父さんに恋してるっぽいけどお前的にはどうなの?って」
「だ、だれ?!」
「冬馬ちゃんとか嵐とか、あとうちの担任」

担任の先生にもばれてる?!と驚いているけど、ばれないとでも?
雰囲気が違うから皆察するんだよ、言わなかったけど

「でもほら、世界終わるし、攻めるなら今しかないかなって?」
「どっちを?!」
「どっちも、ほらいつするの?」
「じゅ、純くんはええの?お母さんとか…」
「母さんには、死ぬ前にお父さんを好きになってくれる人なんて滅多にいないんだから居たら全力でくっつけなさいって」
「パワフル…」

唸りだした桜子さんの代わりに吹き零れ始めた鍋の火を止めて、カレールーを割って入れる
父さん、気付いてないって言ってけどワンチャンあれ知ってるような気がする
若い女の子がこんなおじさんに人生投げちゃダメだろとか思ってそうな気がする、というかそんな気がしてきた

「……父さん、押したら確実に落とせそうだよ?」
「純くんはちょい黙っとって!!」
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