上 下
8 / 9

純愛と青春と

しおりを挟む
「じゃあ、俺もそろそろ帰ります」
「はいはい、お疲れ~
おれは千夏を探しにでも行こうかね…」

あいつ、荷物ほっぽって出て行っちゃったよ
どーせ、どっかの教室に籠城してるだろうし、持って行ってやるかねと、考えながら鞄を手に取ると蒼太に止められた

「あ、いや吉田さんは俺が迎えに行きます。」
「……大丈夫?」
「こうでもしないと、あの人は本気だとわからないでしょ?」

にんまりと笑う蒼太の顔をこいつのファンがみたら陶然とするだろうに、この場にいるのは男のおれで、更にはこの顔を向ける人間はたった一人だけ
罪な男だ事で…
そしてそんな男に、こんな顔をさせた従姉妹が恐ろしい
本人が?と言われたら本人の未来がと答えるけど

「はー、程々にね
じゃないと突拍子もないことしでかすから」
「それはもちろん。中学時代からの付き合うですから」
「それならいいけど…
あれ、聞いてなかったけどお前いつからあいつ好きだったの?」
「一目惚れですけど」
「はわわ、純愛だ…」

そりゃ世界終わる前に気持ちを伝えようと躍起になるわ
中学の時に一目惚れってことは、四年かぁ…思わぬところで青春の甘酸っぱさを感じられた
…うん!頑張れ千夏!お前の未来はお前の行動にかかっている!!あと一か月もないけど!!

「じゃ、俺行くんで」
「うぃーじゃあまた明日」

うん、いいものを聞けた
後で叔父さんが怖いけども、それは今感じられた青春を思えば苦でもない

廊下に出ると、合っているのか合っていないのか解らない吹奏楽部の演奏が聞こえる
この日常もあと一か月もないというのだから驚きだ

校門を抜けて、いつも通りの帰り道を歩く
どっかの家の夕飯の匂いがする、あそこの家は肉じゃがかな?うちの晩御飯、今日はなんだろうななんて考えてながら歩く
終わるってのに、結局おれはなんも変わらないまんまだなと小さく笑いながら家の扉を開けた

「ただいま」
「お帰り」
「え?父さん?」

玄関には出かけようと靴を取り出していた父、林道一が立っていた
いつもこの時間帯は仕事部屋にこもっているのに今から外に出るのかと首をかしげていると父は苦笑いして買い忘れと言ってメモ用紙を見せてきた

「桜子ちゃんがな、カレーにはやっぱり福神漬けが無いとって言ってて」
「あーじゃあ今日はカレーなのか
分かった行ってらっしゃい、桜子さん手伝うことありそうかな?」
「作業が結構長引いちまってな、さっき作り始めたとこなんじゃねぇかな
じゃ、行ってくる」

ガラガラと扉を鳴らして出て行った父さんを見送り、トントンと包丁のなる音がするキッチンへとおれは顔を出した
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

真冬の痛悔

白鳩 唯斗
BL
 闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。  ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。  主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。  むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

愉快な生活

白鳩 唯斗
BL
王道学園で風紀副委員長を務める主人公のお話。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

片桐くんはただの幼馴染

ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。 藤白侑希 バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。 右成夕陽 バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。 片桐秀司 バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。 佐伯浩平 こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...