扉の先

愛梨

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扉の先

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ずっと閉まったままの扉
ゆっくりと開き始め
そこから射し込む眩しい光
その先にはきっと私が求めていた世界がある
でも私はこの扉の前に立ち尽くし
最初の一歩を踏み出す勇気が無い

「幻」

そんな言葉が脳裏をよぎる
今までも開いた扉はあった
その度に扉の先には望む世界が拡がっていると信じ先に進んだ
でもあったのは私が求めていた世界とはかけ離れていた
苦痛や哀しみそして孤独
いつも光は偽物だった

そしてまた扉は閉まり
私は扉の前に戻される
もう何度繰り返してきただろう
いつかは幸せな
愛に満ちた世界があると
それを信じてきた
そしてまた扉は開いた
それでも恐怖で扉の先に進めない
「また同じ繰り返しになる」
そんな思いが一歩を踏み出せない

扉の先
愛したあなたがいるかもしれない
でもその愛も偽物かもしれない
信じる気持ちがもう私には無い
あなたがもし扉の先から私を迎えに来てくれるなら
それはきっと真実の愛
だから私は扉の前であなたが迎えに来てくれるのを待っている
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