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第三十一話

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「他の牢のやつらはだめだな! 全く呼び掛けに反応しない!」

「ああ、魅了か催眠の魔法だろう! アゼルベードを倒さないと解けそうにない!」

 走りながらリディエートはオレにそう答えた。

「それでリディエート、作戦通りたのむぞ!」

「わかった!」

 オレたちは地下牢を抜け上の階へと急ぐ、通路を走り玉座の部屋にはいった。 そこに座るアゼルベードがいた。

「どういうことです? なぜあなたたちあの牢から...... まあいいでしょう。 いままでの者たちで魔力は十分、ゆっくりこの大陸を支配すればいい、ですから殺しても構いません。 おいきなさい」

 わーちゃんたちが構える。 黒い霧が周囲を包む。 右からルキナが突然現れた。 オレはルキナの攻撃をかわし地面に組み伏せる。

「リディエート!」

 ーー汝のその身を、深き、深きゆりかごの中に、落としたまえーー

「ディープスリープ」

「ふあ......」

 ルキナは眠りに落ちた。

「......ダークスフィア」

「シャインレイン」

 わーちゃんとミリエルの魔法がくる。

 ーーその煌めく白き光よ、われらを守りし御手となれーー

「ライトフィールドオール!」 

「オールマジックシールド!!」

 クエリアとマゼルダが唱えると魔法を光と赤い壁が防いだ。

「......シェイドハルバード」

 バスケスの剣が巨大な黒い影になり伸びオレたちを襲う。 そこに飛び上がったギュレルのハンマーが振り下ろされた。 地面を衝撃が走る。

「うおっ! あぶね!! しゃーないスラリーニョあれだ! この間特訓したやつ!」

「ピーー!」

 スラリーニョが形を変え剣になった。 

「スライムソード!!」

 オレはバスケスとギュレルと攻撃を柔らかくなった剣で防ぎ、固くした剣で二人を吹き飛ばした。

「ここはわたしが! トラどのはあやつを!」

「わかった! これ!」

 スライムソードを渡すと、リディエートが二人の攻撃を防ぐ。 オレは座っているアゼルベードに向かう。

(ここだ!)

「ダークスフィアからのシャドウブレイド!」

 ダークスフィアで霧を吹き飛ばし、フィニシスオーバーで加速すると、驚くアゼルベードを切り裂いた。 

「フフ...... 驚きました。 その力まさか魔王と同じですか...... しかし私は不死、すぐに回復しますよ」

 アゼルベードはそういいながら再生を始めた。

「わかってるよ!」

(いまいける限界まで魔力を暴走!!)

「うおおおおお!!」

 ものすごい感情の流れを制御しながら魔力をためる。

「なんと!? す、素晴らしい!! それほどの魔力を人間で保てるなど! 捕らえて永遠に私の糧としていかしておきましょう!」

「お断りだよ! お前はここで終わる!」

 歓喜するアゼルベードをみていった。

「ハハハハハ! どんな力でも私を殺すことはできませんよ! 私は不死! この魔力の霧で何度でも再生する!」

「お前はな! でも物質は不死じゃあないんだよ!!」

 オレ保てるギリギリまで魔力をためると両手を上にあげた。

「なにを!? ま、まさか! 止めろおおお!!」 

「ダークスフィア!!!」

 オレの放った大きなダークスフィアは、霧を吹き飛ばしながら城の天井をうち抜く。 すると空から日の光が差し込んできた。

「ぎゃああああああああ!!」

 アゼルベードの体は燃えだし、のたうち回っている。

「そんな! いやだ! いやだ! また死ぬのか! 不死にしてくれるといったではないか! いやだぁぁぁぁ......」

(また死ぬ..... .不死にしてくれる? どういうことだ) 

 しばらくするとアゼルベードはチリになって消え、城の霧が晴れていった。


「不覚です。 面目次第もございませんマスター......」

 わーちゃんが平伏して謝っている。 みんな催眠から覚め、牢から他のものたちも解放した。

「まったくよ! 私がいなかったらどーなってたと思ってんの! ふぎゃ!」

 オレはマゼルダをゆびではじく。

「構わないよ。 みんなが無事でよかった」
 
「はい!」

「うん!!」

 ミリエルとルキナは元気だった。

「しかし、ヴァンパイアとはな...... ぬかったわ」

 ギュレルは悔しそうで、バスケスはうなづく。

「本当に...... また操られるとは」

 小柄な角の生えた人、オーガたちも喜んでいる。

 みんなはここでオーガたちを説得に成功したあと、ヴァンパイアの襲撃にあい、あの霧に取り込まれたという。 そして探しにここにきたギュレルも霧の魔力でとらえられたという。

「すまなかったトラどの...... 君のお陰でわが同胞も救うことができた。 感謝する」

 そう深々とエルフたちと共にリディエートは頭を下げた。

「それにしても...... これ程高位のモンスターを従えるとは、君は何者なんだ......」

「こいつ? こいつは魔王島と魔王城の主、我が下僕トラよ!」

「誰が下僕だ」

 マゼルダを指ではじく。

「魔王島、魔王城の主だと...... そんなバカな」

 リディエートは言葉失っている。

「さて、オーガたちも契約したから帰るとするか」

「......少しまって欲しいトラどの。 我らも共につれていってはもらえないだろうか」

 リディエートは真剣な面持ちでそういう。

「オレたちの仲間になるの?」 

「......いますぐその結論は出せない。 仲間と話し合う。 しかし人間たちも解放してしまったから、我らの森は完全に安全とはいえなくなった......」

 そういってこちらに訴えるような目で見つめる。

「魔王の城は巨大な大地があるときいている。 そこに一時でも、安全な場所をみつけるまでかくまってはいただけまいか」 

「うん、いいよ」

 オレは了承した。

「相変わらずあんた軽いわねー」

「まあいくらでも土地があるし、大勢いた方が安全だ。 それに共に死線をくぐったからな」

「感謝するトラどの」

 リディエートは笑顔でそういった。

 
 オレたちは一度魔王島へと帰る。

「ここが、本当に魔王島なのか......」

 リディエートたちエルフはその町をキョロキョロみて驚いている。

「すごいだろ」

(といいつつ、オレが一番ビックリしているけど、ますます大きく豪華になっている。 ほとんど人間の大都市並みだな......)

「まあ、ドワーフたちのお陰が大きいけどな。 なっ、ギュレル」

「だが、我がいない間にここまで進歩するとは...... いや、こんな技術、今のドワーフにはないはず......」  

 ギュレルが首をかしげ驚いている。

「ああ、多分マティナスがみんなに教えたんだろ」

「ま、マティナス...... まさかマティナスとは......」

「やっと帰ってきたかトラ、ん? ギュレルではないか!!」

 マティナスが向こうからやってきた。

「ひっ、おばうえ!?」

(おばうえ?)

「貴様あれほど融合はしてはならんといっておいたのに!! ファフニールになりおって!」

「仕方なかったのです! お許しください! おばうえ!」

 鬼の形相でマティナスはギュレルを引きずりながらつれていく。

「マティナスは叔母だったのか、ギュレルも大変だなあ......」

「ですね」

 ミリエルも苦笑している。 


 それから半年ほどたった。 オレはみんなを集め状況の報告を受ける。 

「現在、魔王島、魔王城の町の整備は進めております。 船は十五隻となり、順調に交易を続けています。 必要な設備もある程度手に入入りました」

 マーリクはそういいながら資料をみている。

「食料の備蓄、料理人の育成などはおおむね完了しました」

 食料担当のオークのブルルが話した。

「耕作地の拡大、薬草や香草、さまざまな有益植物の育成、ポーションの生産体制は揃いました。 もう販売もできましょう」

 定住を決意した農業担当のエルフのリディエートがそういう。

「鉱物採掘、加工、新装備の開発とどこおりなく進めている」

 工業、建築担当のギュレルが報告する。

「戦術、戦闘術の訓練が成果がでています」

 軍事担当のバスケスがそういった。

「魔法の伝授、教養や常識、道徳さまざまな教育を施しております」

 教育担当のわーちゃんがそう伝える。

「ゴブリンの長ごーぶ、ワーキャットの長ファガー、トロールの長バイエム、オーガの長クワロ、マーメイドのリシェエラは魔王城の開拓に従事しています」

 ミリエルはそういう。

「なるほど、みんなご苦労様。 それでマティナスあれはできそうか」

「ああ、解析は完了した。 もとよりドワーフの技術だからな。 試作品を作っておる」

 マティナスが胸を張る。 それを横目でみながらギュレルが緊張している。

「じゃあ、他に発言のあるものは?」

「トラどの」 

「ん? マリークなに」

「やはり、人材不足は否めません。 モンスターの増員が不可避でしょう」

「うん、取りあえずわーちゃんに編成してもらった人型メンバーを冒険者ギルドに登録させて、モンスターたちを捕縛させているよ。 それどうなってる」

「はい、各地でモンスターを捕縛して送り出しております。 ギルドでの功績もあり、英雄と呼ばれるものたちもでてきておりますね。 のちほどマスターには契約をお願いします」

「しかし、そう簡単に捕縛できるものか」

 ギュレルが聞く。

「ええ、ドワーフ製の強力な魔法武具、バスケスどのの戦闘指導、エルフ族の睡眠魔法やピクシーの魅了魔法などの皆の魔法共有により、かなりの戦力が上がりましたから、容易く捕縛して送っております」

「なるほど」

「ですがマスター...... 少し気がかりなことが」

「なに? バスケス」

「実は冒険者たちの話では、モンスター狩りが行われているようなのです」

「モンスター狩り、いいきはしないけど、まあ普通にやってるよねギルドとか」

「いえ、ギルドなどは素材にしたり、人に害するモンスターを討伐することはあってもなんの理由もなく倒したりはしませんが、 ある国が、わざわざ弱いものを狙ってまで討伐しているようなのです......」

「メイギス法王国か......」

 その話を聞いてクエリアがそういうと、バスケスはうなづく。

「メイギス法王国?」

「南のサーブライム雪原にある宗教国家だ。 世界中に信徒がいて、デュエルワキナを絶対神として信奉する。 昔はそうでもなかったが、現法王になってからモンスターを神の敵と断じて徹底排除を唱えているのだ」

 クエリアが眉を潜めていう。

「それなら、モンスターを保護がてら確保するか」

 オレサーブライム雪原へと向かうことにした。


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