16 / 38
第十六話
しおりを挟む
倒したクラーケンを船で曳航《えいこう》しながらディフロへと向かう。 そして小舟に乗り沈みそうになりながら、ロープでひきずって港へと向かった。 港では歓声をもって迎えられる。
「おお!! おれはまさしくクラーケン!!」
「ああ、町長さん、すみませんが引っ張ってもらえませんか」
「ああ! もちろん! みんなで引っ張るぞ」
港にいた大勢のものたちでクラーケンを引っ張り、港へと寄せた。
「いやはや、本当にすごい...... まさかクラーケンをあっさりと倒してしまうとは......」
町長さんは喜びを抑えてそういう。 オレたちは歓迎され町はお祭り騒ぎのようになった。
「本当にありがとうございました!」
町長さんの家で歓待をうけた。
「さぞ名のある冒険者さまでしたのですな。 お名前お聞かせ願えまんでしょうか」
「ああ、トラです。 あっ!」
(しまった名乗ってしまった...... まあいいか)
「トラさまですか! 強そうなお名前だ。 それにしてもクラーケンをたった四人で倒すとは...... どうされたのかぜひその英雄譚、聞かせていただきたい!」
「い、いやあの......」
「実はなご老人、他に呼び寄せたものたちが百名ほどいてな。 しかし我らと違い彼らは現役の冒険者で忙しき身ゆえ、もう帰ってしまったのだ」
わーちゃんがもっともらしいことをいった。
「そうでしたか! やはり四人ではなかったのですな。 それにしても百名もこの町のために戦ってくれたとは感激のいたり」
町長は感激しながら頭を深々と下げた。
「そこで...... 本当に百万ゴールドでよろしいのですかな。 百名もの冒険者ならもっと必要なはず......」
不安そうに町長さんが聞いてきた。
「ああ、問題ありません。 みんなにはオレから渡しておきます。 ギルドを通してない個人的な依頼ですからね」
「そうだ。 トラさまの人望で集まってくれたのだ」
「おお! ありがたい! さすがトラさま! あなたならば魔王島すら解放できそうですな」
「ぶっ!」
飲んでたお茶を吹き出しそうになった。
「ま、魔王島ですか......」
「ええ、とても強いモンスターがいて近づけないとのこと、あなたたちほどの猛者ならばあの島とて容易いのではと......」
「いいえ、町長さま。 あの島のモンスターはとても強く、我々もクラーケンを倒したものたちと共にかつて向かいましたが、ほうほうのていで逃げ帰ったのです...... 絶対に近づいてはなりません。 みなにもそうお伝えください」
ミリエルが眉をひそめて苦悶の表情で話した。
「それほど...... あなたさまたちでもですか...... なるほど、まあ漁場でもないですし、特に近づく理由もないですがな。 みなに伝えておきましょう」
(ほっ、ナイス、ミリエル! これで島へ近づくものもいないだろう」
「それで話なのですが、報酬で得たお金でこちらの町にいる家畜を譲っていただけませんか?」
「ええ、他の町から安全に輸送できるようになりましたからな。 必要な分おゆずりしますよ」
オレたちはたくさんの牛や豚、鶏、そして機織り機、糸車、針、工具などを積めるだけ船に運びディフロから帰る。
「しかし、これだけあれば、裁縫、畜産なども可能ですな。 ミリエルどの裁縫をゴブリンたちに教えてもらえますかな」
「ええ、もちろん。 私が知ってることなら」
「わ、わたしも教えていただいてよろしいですかミリエルどの......」
「ええ! リシェエラさん」
リシェエラが喜んでるのをぼんやりみる。
「ふむ......」
「どうしたんだトラ」
「なにか問題でもあるのでしょうかマスター」
「いや、そろそろ魔王島も落ち着くし、ルキナの村のワーキャットを探そうと思って」
「......探してくれるのか」
ルキナがおずおずと聞いてくる。
「ああ、町を移動しながら聞いてみるか」
「そうですね。 魔王島は私とミリエルどのたちで村を作ります」
「ええトラさまはルキナさんと共に捜索してください」
「ミリエル...... ありがとう」
「よし! 一度魔王島へと帰り、そのあと捜索の旅にでよう」
魔王島へと戻ったオレは、ルキナ、スラリーニョとポイルで船に乗り取り、北のほうへ航海を始める。
「でもどうやって探すんだ」
不安そうにルキナがいう。
「北には帝国がある。 シーサーペントをおかしくしたのが帝国の魔法使いなら、ルキナの村にいった魔法使いが帝国の人間の可能性は高い。 だから帝国にいけばなにかわかると思う」
「なるほど! ん? なにか私についてるか。 顔をじろじろみて」
「いや、かなり前から変わってしまったけど、ルキナの仲間たちはわかるのかな?」
そうクラーケンを倒したことでみんな進化していた。
ルキナはワーリンクスから黒髪のワーピューマに、スラリーニョはエクススライムから、銀色のグレータースライムに、ポイルはポーショントードから、手に乗るほどの小さいエクスポーショントードに変わっていた。
(でもクラーケン討伐にいった他のモンスターはみな進化したのにわーちゃんとミリエル、トライとイータは変化はなかったな)
「大丈夫、においでわかる」
「なるほど、まあ背丈や顔はあまり変わってないしな」
ルキナは胸を張っている。 だが少し無理に明るく振る舞ってるようにも感じる。
(まあ、無理もない。 仲間が心配だろう...... なんとか見つけてやらねば)
二週間ほどの航海ののち帝国領へと入った。 近くの港町ガオリエの沖へと船を停泊させ、オレとルキナは小舟で町へと入った。
町は閑散としていて活気がない。
「前のディノのいた町のようだ...... でもこの町は大きいし建物なんかもかなり古くて荘厳な感じだ」
オレたちは町を散策する。 町の路地には浮浪者や人相の悪いものたちもちらほら見かける。 人々は足早に通りすぎ、その顔も陰鬱に見えた。
「なんか雰囲気が暗いな...... 店も多くはしまってるし、情報がほしいけど......」
そんなとき酒場らしきものが見える。
「未成年だけど、まあ情報をえるために入るか」
そうドキドキしながら入ってみる。
中に入ると昼だというのに、大人たちが酒をのみ管を巻いている。
(なんか荒れてるな)
「......なんだ、ここはガキがくるところじゃねえぞ」
そうカウンターから大柄な店主がコップを拭きながら、威圧的に話した。
「いや、少し聞きたいことがあって」
懐から少しの金をカウンターに置いた。
「......なんだ」
「実はワーキャットを探していて、聞いたことはないかな」
「ワーキャット...... そういえばサラメント村の山にワーキャットがでたって噂があったな」
「本当か! 冒険者に倒されたりとかの噂は......」
「こんなところに冒険者なんかこねえよ。 金を持ってるもんがいないからな。 だからモンスターはほったらかし...... いや」
「なんだ?」
「いやな...... 妙な噂があったなと思ってな。 モンスターを使って
国の奴らが何かしてるって話だ」
「モンスターを使って......」
(なんのために......)
「勝手してやがるのさ、魔法騎士団のやつらがな」
吐き捨てるように店主はいった。
「でも帝国なら皇帝がいるだろう」
「皇帝は床に伏せている。 今この国を統治してるのはまだ子供の皇女だ。 勝手されてもどうにもならんのだろうよ」
「......なるほどそうか、ありがとう」
「お前さん冒険者か」
「ああ、仕事があるかと思ってきたんだけど、どうやら無駄のようだったな」
「そうか、それは難儀だったな」
そう店主が笑う。 オレたちは町を出てワーキャットがいるというサラメント村に向かった。
「実験、モンスターを」
ルキナがそういって何か考えているようだ。
(確かに...... 帝国は何かモンスターで実験をしている。 暴走させることがそれに繋がるのか)
「まあ先にワーキャットを探すのがさきだ」
「わかった」
オレたちは街道をすすむ。
しばらく歩くと声が聞こえた。
「なにをする!? はなせ!!」
見るとフードをかぶった人物を剣を持つ六人ほどに囲まれている。
(声から女の子か! 盗賊にでも襲われてるのか、助けないと!)
と動く前に、ルキナが走り六人を叩きのめした。
「大丈夫?」
「ああ、ありがとう......」
ルキナに助けられた少女はそう胸に手を当て礼をする。
「どこにいこうとしてるんだ」
オレが盗賊の武器を壊しながら聞いた。
「それは......」
(わけありか......)
「オレたちはサラメント村に行くんだが、そこまで着いてくる?」
少女は迷っているふうだったが静かにうなづいた。
少女の名前はクエリアといい、フードをとると金色の髪の美しい少女だった。
(なんかミリエルにめちゃくちゃ似てない?)
そう思ってるのかラキナもこちらをみている。
(農家や町人って感じじゃないな。 貴族か、王族、富豪の娘か、皇女ではないよな...... まさか! ないない)
言葉少なだが、きちんとした言葉遣いと堂々とした姿にそう思った。
「君たちはなぜサラメント村に? あそこは特になにかある場所てはないはずだが」
「まあ、オレたちが用があるのは、その山の方さ」
クエリアは不思議そうに首をかしげた。
夕方にはサラメント村に着く。 村はさびれていて、外を歩く人もいない。
「匂いがするけど、誰もいないぞ」
「いるが、息を潜めているって感じだな」
オレとラキナが話していると、クエリアはため息をつく。
「みんなつかれているのだ...... この国は政治の腐敗で貧困がすすんでいる」
「でも、ワーキャットの話を聞きたいんだが」
「ワーキャット、モンスターか、一体なぜ?」
「この先の山にいるらしい」
「討伐にきたのか! 冒険者なのか君たちは!」
「まあ、そんなとこだ」
その話を聞いていたのか、何軒かの家から中年女性たちが出てきた。
「今の話本当かい?」
「ええ、ワーキャットのこと知っていますか?」
「ああ、半年ぐらいまえ、突然この山に住み着いたんだ。 今までいなかったのに、山の斜面で畑をしていたこの村はこの有り様でね」
「おばちゃん! そのワーキャットってどんなだった!」
ルキナがはやってきいた。
「どんなって...... 目が赤くて、無差別に暴れまわっていたよ。 仲間でも攻撃するみたいだった」
(暴走か、ルキナの村のワーキャットの可能性は高いな)
「でもね。 なんか別々の場所で隠れてるらしいんだ。 ワーキャットって群れで生活するって聞いてたから、おかしいとは思ってたんだが」
(かろうじてある自我で他を攻撃しないようにしてるのかもな)
「それで、ワーキャットがここに現れたとき、ここらでいつもと違うことがありませんでした?」
「そうだね。 そうだ! 帝国の魔法使いたちが山へとはいったのをみていた村人がいるよ。 あいつらが何かしたんだって言うものもいるけど...... まさかね」
(どうやら間違いないみたいだな)
「でも...... 私らおかねなんてないよ......」
「ああ、それは大丈夫です」
「本当かい......」
一人のおばさんは怪しんでいるみたいだ。
「我らは冒険者としての力量を試すためにきているのだ。 だから、金銭は不要だ」
そうクエリアがいうと、オレは冒険者カードを見せる。 するとおばさんは納得したようにうなづいた。
「それは助かるよ! でも気を付けなよ。 無理ならやめてくれていいからね」
「ええ、無理はしませんよ」
オレたちはおばさんたちとわかれ山へと登る。
「おお!! おれはまさしくクラーケン!!」
「ああ、町長さん、すみませんが引っ張ってもらえませんか」
「ああ! もちろん! みんなで引っ張るぞ」
港にいた大勢のものたちでクラーケンを引っ張り、港へと寄せた。
「いやはや、本当にすごい...... まさかクラーケンをあっさりと倒してしまうとは......」
町長さんは喜びを抑えてそういう。 オレたちは歓迎され町はお祭り騒ぎのようになった。
「本当にありがとうございました!」
町長さんの家で歓待をうけた。
「さぞ名のある冒険者さまでしたのですな。 お名前お聞かせ願えまんでしょうか」
「ああ、トラです。 あっ!」
(しまった名乗ってしまった...... まあいいか)
「トラさまですか! 強そうなお名前だ。 それにしてもクラーケンをたった四人で倒すとは...... どうされたのかぜひその英雄譚、聞かせていただきたい!」
「い、いやあの......」
「実はなご老人、他に呼び寄せたものたちが百名ほどいてな。 しかし我らと違い彼らは現役の冒険者で忙しき身ゆえ、もう帰ってしまったのだ」
わーちゃんがもっともらしいことをいった。
「そうでしたか! やはり四人ではなかったのですな。 それにしても百名もこの町のために戦ってくれたとは感激のいたり」
町長は感激しながら頭を深々と下げた。
「そこで...... 本当に百万ゴールドでよろしいのですかな。 百名もの冒険者ならもっと必要なはず......」
不安そうに町長さんが聞いてきた。
「ああ、問題ありません。 みんなにはオレから渡しておきます。 ギルドを通してない個人的な依頼ですからね」
「そうだ。 トラさまの人望で集まってくれたのだ」
「おお! ありがたい! さすがトラさま! あなたならば魔王島すら解放できそうですな」
「ぶっ!」
飲んでたお茶を吹き出しそうになった。
「ま、魔王島ですか......」
「ええ、とても強いモンスターがいて近づけないとのこと、あなたたちほどの猛者ならばあの島とて容易いのではと......」
「いいえ、町長さま。 あの島のモンスターはとても強く、我々もクラーケンを倒したものたちと共にかつて向かいましたが、ほうほうのていで逃げ帰ったのです...... 絶対に近づいてはなりません。 みなにもそうお伝えください」
ミリエルが眉をひそめて苦悶の表情で話した。
「それほど...... あなたさまたちでもですか...... なるほど、まあ漁場でもないですし、特に近づく理由もないですがな。 みなに伝えておきましょう」
(ほっ、ナイス、ミリエル! これで島へ近づくものもいないだろう」
「それで話なのですが、報酬で得たお金でこちらの町にいる家畜を譲っていただけませんか?」
「ええ、他の町から安全に輸送できるようになりましたからな。 必要な分おゆずりしますよ」
オレたちはたくさんの牛や豚、鶏、そして機織り機、糸車、針、工具などを積めるだけ船に運びディフロから帰る。
「しかし、これだけあれば、裁縫、畜産なども可能ですな。 ミリエルどの裁縫をゴブリンたちに教えてもらえますかな」
「ええ、もちろん。 私が知ってることなら」
「わ、わたしも教えていただいてよろしいですかミリエルどの......」
「ええ! リシェエラさん」
リシェエラが喜んでるのをぼんやりみる。
「ふむ......」
「どうしたんだトラ」
「なにか問題でもあるのでしょうかマスター」
「いや、そろそろ魔王島も落ち着くし、ルキナの村のワーキャットを探そうと思って」
「......探してくれるのか」
ルキナがおずおずと聞いてくる。
「ああ、町を移動しながら聞いてみるか」
「そうですね。 魔王島は私とミリエルどのたちで村を作ります」
「ええトラさまはルキナさんと共に捜索してください」
「ミリエル...... ありがとう」
「よし! 一度魔王島へと帰り、そのあと捜索の旅にでよう」
魔王島へと戻ったオレは、ルキナ、スラリーニョとポイルで船に乗り取り、北のほうへ航海を始める。
「でもどうやって探すんだ」
不安そうにルキナがいう。
「北には帝国がある。 シーサーペントをおかしくしたのが帝国の魔法使いなら、ルキナの村にいった魔法使いが帝国の人間の可能性は高い。 だから帝国にいけばなにかわかると思う」
「なるほど! ん? なにか私についてるか。 顔をじろじろみて」
「いや、かなり前から変わってしまったけど、ルキナの仲間たちはわかるのかな?」
そうクラーケンを倒したことでみんな進化していた。
ルキナはワーリンクスから黒髪のワーピューマに、スラリーニョはエクススライムから、銀色のグレータースライムに、ポイルはポーショントードから、手に乗るほどの小さいエクスポーショントードに変わっていた。
(でもクラーケン討伐にいった他のモンスターはみな進化したのにわーちゃんとミリエル、トライとイータは変化はなかったな)
「大丈夫、においでわかる」
「なるほど、まあ背丈や顔はあまり変わってないしな」
ルキナは胸を張っている。 だが少し無理に明るく振る舞ってるようにも感じる。
(まあ、無理もない。 仲間が心配だろう...... なんとか見つけてやらねば)
二週間ほどの航海ののち帝国領へと入った。 近くの港町ガオリエの沖へと船を停泊させ、オレとルキナは小舟で町へと入った。
町は閑散としていて活気がない。
「前のディノのいた町のようだ...... でもこの町は大きいし建物なんかもかなり古くて荘厳な感じだ」
オレたちは町を散策する。 町の路地には浮浪者や人相の悪いものたちもちらほら見かける。 人々は足早に通りすぎ、その顔も陰鬱に見えた。
「なんか雰囲気が暗いな...... 店も多くはしまってるし、情報がほしいけど......」
そんなとき酒場らしきものが見える。
「未成年だけど、まあ情報をえるために入るか」
そうドキドキしながら入ってみる。
中に入ると昼だというのに、大人たちが酒をのみ管を巻いている。
(なんか荒れてるな)
「......なんだ、ここはガキがくるところじゃねえぞ」
そうカウンターから大柄な店主がコップを拭きながら、威圧的に話した。
「いや、少し聞きたいことがあって」
懐から少しの金をカウンターに置いた。
「......なんだ」
「実はワーキャットを探していて、聞いたことはないかな」
「ワーキャット...... そういえばサラメント村の山にワーキャットがでたって噂があったな」
「本当か! 冒険者に倒されたりとかの噂は......」
「こんなところに冒険者なんかこねえよ。 金を持ってるもんがいないからな。 だからモンスターはほったらかし...... いや」
「なんだ?」
「いやな...... 妙な噂があったなと思ってな。 モンスターを使って
国の奴らが何かしてるって話だ」
「モンスターを使って......」
(なんのために......)
「勝手してやがるのさ、魔法騎士団のやつらがな」
吐き捨てるように店主はいった。
「でも帝国なら皇帝がいるだろう」
「皇帝は床に伏せている。 今この国を統治してるのはまだ子供の皇女だ。 勝手されてもどうにもならんのだろうよ」
「......なるほどそうか、ありがとう」
「お前さん冒険者か」
「ああ、仕事があるかと思ってきたんだけど、どうやら無駄のようだったな」
「そうか、それは難儀だったな」
そう店主が笑う。 オレたちは町を出てワーキャットがいるというサラメント村に向かった。
「実験、モンスターを」
ルキナがそういって何か考えているようだ。
(確かに...... 帝国は何かモンスターで実験をしている。 暴走させることがそれに繋がるのか)
「まあ先にワーキャットを探すのがさきだ」
「わかった」
オレたちは街道をすすむ。
しばらく歩くと声が聞こえた。
「なにをする!? はなせ!!」
見るとフードをかぶった人物を剣を持つ六人ほどに囲まれている。
(声から女の子か! 盗賊にでも襲われてるのか、助けないと!)
と動く前に、ルキナが走り六人を叩きのめした。
「大丈夫?」
「ああ、ありがとう......」
ルキナに助けられた少女はそう胸に手を当て礼をする。
「どこにいこうとしてるんだ」
オレが盗賊の武器を壊しながら聞いた。
「それは......」
(わけありか......)
「オレたちはサラメント村に行くんだが、そこまで着いてくる?」
少女は迷っているふうだったが静かにうなづいた。
少女の名前はクエリアといい、フードをとると金色の髪の美しい少女だった。
(なんかミリエルにめちゃくちゃ似てない?)
そう思ってるのかラキナもこちらをみている。
(農家や町人って感じじゃないな。 貴族か、王族、富豪の娘か、皇女ではないよな...... まさか! ないない)
言葉少なだが、きちんとした言葉遣いと堂々とした姿にそう思った。
「君たちはなぜサラメント村に? あそこは特になにかある場所てはないはずだが」
「まあ、オレたちが用があるのは、その山の方さ」
クエリアは不思議そうに首をかしげた。
夕方にはサラメント村に着く。 村はさびれていて、外を歩く人もいない。
「匂いがするけど、誰もいないぞ」
「いるが、息を潜めているって感じだな」
オレとラキナが話していると、クエリアはため息をつく。
「みんなつかれているのだ...... この国は政治の腐敗で貧困がすすんでいる」
「でも、ワーキャットの話を聞きたいんだが」
「ワーキャット、モンスターか、一体なぜ?」
「この先の山にいるらしい」
「討伐にきたのか! 冒険者なのか君たちは!」
「まあ、そんなとこだ」
その話を聞いていたのか、何軒かの家から中年女性たちが出てきた。
「今の話本当かい?」
「ええ、ワーキャットのこと知っていますか?」
「ああ、半年ぐらいまえ、突然この山に住み着いたんだ。 今までいなかったのに、山の斜面で畑をしていたこの村はこの有り様でね」
「おばちゃん! そのワーキャットってどんなだった!」
ルキナがはやってきいた。
「どんなって...... 目が赤くて、無差別に暴れまわっていたよ。 仲間でも攻撃するみたいだった」
(暴走か、ルキナの村のワーキャットの可能性は高いな)
「でもね。 なんか別々の場所で隠れてるらしいんだ。 ワーキャットって群れで生活するって聞いてたから、おかしいとは思ってたんだが」
(かろうじてある自我で他を攻撃しないようにしてるのかもな)
「それで、ワーキャットがここに現れたとき、ここらでいつもと違うことがありませんでした?」
「そうだね。 そうだ! 帝国の魔法使いたちが山へとはいったのをみていた村人がいるよ。 あいつらが何かしたんだって言うものもいるけど...... まさかね」
(どうやら間違いないみたいだな)
「でも...... 私らおかねなんてないよ......」
「ああ、それは大丈夫です」
「本当かい......」
一人のおばさんは怪しんでいるみたいだ。
「我らは冒険者としての力量を試すためにきているのだ。 だから、金銭は不要だ」
そうクエリアがいうと、オレは冒険者カードを見せる。 するとおばさんは納得したようにうなづいた。
「それは助かるよ! でも気を付けなよ。 無理ならやめてくれていいからね」
「ええ、無理はしませんよ」
オレたちはおばさんたちとわかれ山へと登る。
0
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
乙女ゲームに悪役転生な無自覚チートの異世界譚
水魔沙希
ファンタジー
モブに徹していた少年がなくなり、転生したら乙女ゲームの悪役になっていた。しかも、王族に生まれながらも、1歳の頃に誘拐され、王族に恨みを持つ少年に転生してしまったのだ!
そんな運命なんてクソくらえだ!前世ではモブに徹していたんだから、この悪役かなりの高いスペックを持っているから、それを活用して、なんとか生き残って、前世ではできなかった事をやってやるんだ!!
最近よくある乙女ゲームの悪役転生ものの話です。
だんだんチート(無自覚)になっていく主人公の冒険譚です(予定)です。
チートの成長率ってよく分からないです。
初めての投稿で、駄文ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
会話文が多いので、本当に状況がうまく伝えられずにすみません!!
あ、ちなみにこんな乙女ゲームないよ!!という感想はご遠慮ください。
あと、戦いの部分は得意ではございません。ご了承ください。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
娘の命を救うために生贄として殺されました・・・でも、娘が蔑ろにされたら地獄からでも参上します
古里@10/25シーモア発売『王子に婚約
ファンタジー
第11回ネット小説大賞一次選考通過作品。
「愛するアデラの代わりに生贄になってくれ」愛した婚約者の皇太子の口からは思いもしなかった言葉が飛び出してクローディアは絶望の淵に叩き落された。
元々18年前クローディアの義母コニーが祖国ダレル王国に侵攻してきた蛮族を倒すために魔導爆弾の生贄になるのを、クローディアの実の母シャラがその対価に病気のクローディアに高価な薬を与えて命に代えても大切に育てるとの申し出を、信用して自ら生贄となって蛮族を消滅させていたのだ。しかし、その伯爵夫妻には実の娘アデラも生まれてクローディアは肩身の狭い思いで生活していた。唯一の救いは婚約者となった皇太子がクローディアに優しくしてくれたことだった。そんな時に隣国の大国マーマ王国が大軍をもって攻めてきて・・・・
しかし地獄に落とされていたシャラがそのような事を許す訳はなく、「おのれ、コニー!ヘボ国王!もう許さん!」怒り狂ったシャラは・・・
怒涛の逆襲が始まります!史上最強の「ざまー」が展開。
そして、第二章 幸せに暮らしていたシャラとクローディアを新たな敵が襲います。「娘の幸せを邪魔するやつは許さん❢」
シャラの怒りが爆発して国が次々と制圧されます。
下記の話の1000年前のシャラザール帝国建国記
皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!
https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/129494952
小説家になろう カクヨムでも記載中です
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる