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第十二話

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「ここより先はシーサーペントの縄張りだ......」

 海面から岩礁の先を指差し緊張した面持ちでリシェエラはいう。

「あれか!」

 遠くの海面に白く巨大な蛇がのたうち回っているのがわかる。 

「スピードよりもでかいな。 で覚悟はいいのか」

「やむをえん...... 今まで我らマーメイドを守ってきてくれたが、このままだと人間たちと全面戦争になりかねないからな......」

 苦渋の表情でリシェエラはいった。 

「さあ、みんな! 作戦通りにいくぞ!」

 オレたちの船は岩礁帯を越えて進む。 こちらに気づいたのか赤い目の蛇が海中へと潜った。 

「船の左舷だ!」

 マーメイドからの声を聞く。

「よし! ミリエル!」 

「はい!!」

 ドオオオオン

 ものすごい衝撃が船に伝わる。

「きたな! ミリエル大丈夫か!」

「はい!」

(マーメイドの情報で船の一部を物理耐性で守らせる。 この船全ては無理でも狭い範囲なら、ミリエルの魔法でカバーできる)  

 何度もの体当たりをマーメイドの指示で防ぐ。 シーサーペントの動きがが落ちてきた。

「よし! スピード、ゴレサン! 頼む!」

 海に潜航していたスピードとそれに乗るゴレサンがシーサーペントをつかみ海面にあげた。

「みんな! 魔法だ!!」

 船からオレのモンスターたちは魔法をその体に放った。

「ギャオオオオオオ!!」

 シーサーペントが水面へとでて暴れている。 船体が大きく揺れた。

「みんな落とされないように船にしがみつけ! わーちゃんまだか!」

「もう少し動きを止めてください!!」

「よし! スラリーニョ、時間を稼ぐぞ!」

「ぴーー!!」

 スラリーニョが魔法を唱えると、球体となった水がシーサーペントに当たり、その巨体をゆるがす。

「ダークネスフォール!!」

 オレも魔法を連発し、シーサーペントの動きを止める。

 ーー暗黒の力よ、その大地に、光すら飲み込む影を生み出せーー

「シャドウスワンプ」

 シーサーペントが影に沈んでいく。 

「よし! オレたちもいくぞ!」

 影のなかへオレたちも飛び込んだ。

 トレントたちが灯りの魔法を使った。 遠くに混乱したようにシーシーペントがうねって回転している。

「ここが影の中か...... わーちゃんには上で魔法を使ってもらわないといけないから、オレたちだけでやるしかないぞ」

「ここなら戦えますが、まだ動きをとめられてはいませんね」

 ミリエルはそういうと、リシェエラがうなづく。

「シーサーペントは水の魔法を使ってくる。 我々でそれをガードするから、何とか楽にしてやってくれ」
 
「わかった...... みんな散開して!!」

 オレたちが散開して近づくと、シーサーペントは水を咆哮のように吹き出すそれはレーザーのようだった。

「アクアヴェール!!」

 マーメイドたちが唱えると水の膜がオレたちの前に現れる。 そしてシーサーペントの水を弾く。

「よし! 近づいて左右から攻撃!!」

 各々武器や魔法で攻撃する。 シーサーペントが尻尾でなぎはらう。 それをゴレサンとスピードが受け止めた。 そしてスピとあおまるが使う炎の竜巻でシーサーペントを包む。

「ギャオオオ!!」

 シーサーペントにきいているようだ。 

 さらに、バッタンの超音波、ロザドの岩の牙、ミチの蔓のような糸、ポイルの毒液で動きを止める。

 オレとスラリーニョも魔法を連発する。

「よし完全に動きが止まった! ルキナ! オレと一緒に!」

「わかった!!」

 ルキナか高速で近づき、その爪でシーサーペントの横腹を切り裂く。 オレも剣を振り下ろした。

「ギャオオオオオオ......」

 シーサーペントはそのまま横倒しになりゆっくり動かなくなった。

「契約を!!」

 オレはそばにいくがシーサーペントの目は光を失い、もう動くことはなかった。

(間に合わなかったか......)

 みるとリシェエラたちは悲しみにくれていた。


 オレたちはわーちゃんに影から引き上げられた。 その後シーシーペントを海に沈め供養した。

「じゃあこれで人間を襲わないよね」

 リシェエラにそう聞いた。

「ああもちろんだ。 それでトラどの頼みがある」

「頼み?」

「我らと契約してもらえないか」

 リシェエラがそういった。

「どういうこと?」

「守り神のシーサーペントなきあと、我らは無力、そして人間との戦いを避けるためとはいえ、人間の船に攻撃をしたのは事実だ。 この海域ではもはや人との共存は望めない」

(まあ、真実を話しても信じてもらえないかもしれないな...... それに魔法使いがきて、いつ暴走を起こさせにくるかもわからない......)

「うん、わかった。 今日は魔力がなくなったから、明日契約をしよう」

「トラどの。 お願い致します」

 そうして次の日、マーメイドたち二十三人と契約した。

「それにしても大分みんなかわったな」

 オレはみんなの変わりように感心していた。

「はい、皆シーサーペントとの戦いで進化しましたな。 スラリーニョどのはエクススライム、あおまるどのはストームバード、ロザドどのはアイアンリザード、スピどのはフレイムシザーズ」

 わーちゃんがそういうと、ミリエルがうなづく。

「あとはポイルさんがポーショントード、ミチさんがプラントスパイダー、ゴレサンさんがアースゴーレム、スピードさんがブラックセンティピードですね」

「あとはゴブリンたちがゴブリンソルジャー、クレリック、メイジか、トレイチ、トレニ、トレサンはトレントウォーロックか、あとマーメイドはリシェエラ?」

「ええ、私がマーメイドナイト、他はランサー、ウィッチ、ガードたちですね」

「そして、私がワーリンクスになった」

 茶髪となったルキナが胸を張る。

「でも急になんで?」  

「モンスターは魔力を吸収し強くなります。 シーサーペントの死によって拡散した巨大な魔力を取り込み進化したのでしょうな」

「なるほど、でもわーちゃんやミリエル、イータは変わってないよね」

「進化しない種族や、進化に魔力が足りない場合もありますな。 イータどのは頭に芽のようなものができていますが」

「それでか、それにしてもスピードとゴレサンは小さくなったし、ポイルはおおきくなった」

 倍以上の大きさになったポーショントードのポイルを撫でる。     

「ゲココ」

「ええ、色や姿かたち、能力も変化しますね」

 ミリエルはポイルの上に浮いてる液体のはいっている玉を手に取る。

「これはポイルさんのポーションです。 ポーショントードは魔力で
さまざまなポーションを生成します」

「へえ! 便利、スラリーニョは白く透明になったな」 

「ぴー!」

「でも大きさはそのままか」 

「ぴー......」

 スラリーニョは落ち込んでいる。  

「まあ、強くなったからいいじゃないか、それよりリシェエラ、ここいらに大きな人のいない島はないかな」

「そうですね...... 私たちもあの岩礁帯からあまり出たことはないんです。 ただ私の母たちがモンスターに追われて来たのですが、西の方に人がいない大きな島があったと聞いたことがありますね」

「それは無人島なのかな? でもそんな前ならとっくに人が住んでいると思うけどな」

「いえ、どうやらその島はモンスターだらけで【魔王島】と呼ばれ人々は近づかないのだとか、ですが強いモンスターが周りにいたため母たちは断念したらしいです」

「魔王島...... 確かにそんな島があったように記憶しています。 人々が避けていたようですな」

 わーちゃんがそう思い出すようにあごをさわる。

「それならそこに行ってみよう!」

 オレたちは魔王島目指して海を進んだ。 

 いくつかの町や村によりながら情報と食料をかい、一ヶ月後、その魔王島と思われる島が見えてきた。


「あれか...... 町に入って聞いてきた話だと、やはりまだ人は近づいてないらしいな」

「はい、かなり強いモンスターがいるとのこと、漁師すら近づかないらしいですな」

 わーちゃんはそう地図をみて言う。

「よし、あそこに定住できるか調べよう」

 島に近づくと、先行していたリシェエラたちが海面から顔を出す。

「マーマンたちが島の周りを囲んでいます」

「マーマン?」

「半魚人ですな」

「目はどうだった?」

「赤くはなってないですね」

「じゃあ暴走してはないか...... 仕方ないな。 突破するか」

「では私たちが!」

 リシェエラたちが潜航して向かった。

「大丈夫かなマーメイドたちだけで......」

「いまのリシェエラどのたちは並みの強さではありません」

「えっ! そうなの! できるだけ殺さないで! 無理もしないで!」

 オレがそういうと海面から手がふられた。

 しばらくすると海面に大きな水柱ができ、多くの半魚人たちが宙をまった。

「でしょう」 

 わーちゃんが自信満々にそういう。 リシェエラたちは気絶したマーマンを連れてきた。

「マーマン排除完了しました」

「ご、ごくろうさま」

 取りあえずヒールを使い起こして話を聞く。

「ナ、ナニモノダ、ニンゲンガ、モンスタートイル、ナゼダ」

「仲間だよ」

「ナカマ......」

「それでオレたちはあの島に住みたいんだけど、あそこに何がいるんだ」

「アソコニハ、ツヨイ、モンスターガイル。 ワレラモ、ハイレナイ」

「そうかわかった。、ありがとう。 それでお前たちもオレと契約しないか? オレたちと一緒に暮らそう」

「ワレラガ......」

 マーマンたちは仲間たちと顔を見合せている。 そしてうなづくとわかったといい、オレは契約をかわした。

「さて、島に上陸するか。 ゴブリン、マーマンとマーメイドはこの船を守っていてくれ、これを壊されるともしもの時逃げられん」

 オレたちはいくつかの小舟にのり島へと上陸した。
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