やり直しの大魔王の弟子

曇天

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第六十三話 オレの願い

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「んー、大変だなー よし諦めるか!」

「何諦めてんのよ! 
 このままじゃこの世界は全ての魔力を奪われてみんな死ぬのよ!」

「まあ、オレ一回死んでるしね」

「いやーーー 死ぬのはいやーー! 
 ってあんたなんで平気なのよ......
 魔力奪われてんのに」 

「えっ? そういやそうだな」

「むう、何が......
 それ! その指輪......」

「これ?
 メルアにもらった指輪、ほら最初に買った」   
 
「見せてみよ!
 これは......
 かつて人間たちが魔力制御に使った指輪か......
 それでシンジは魔力を奪われておらんのか」
 
 ベルとメルアがオレの顔をみた。
 
「えっ? 何?」

「やるしかあるまい......」

「そうね。
 もう魔力があるあんたしかまともに戦えないんだし......」

「いやだよーー! 
 絶対死ぬじゃんよーー!!
 みんなで仲良く死のうよーー!」

「安心するのだシンジ。
 我が共にいく」

「でも、あんなのに近づいてもどうしようもないぞ!」

「我に策がある......
 あやつのそばまで行ければな」

「わかったよ! 死なばわもろとも、やるだけやったらー!」

「よしいくぞ!」

 オレはリブーストを使い空中をとびながら、魔王ゼロに近づいた。

「やつは魔力吸収に集中している!
 いまだやつに近づけ!」

「どっちみちしぬんじゃーーい!!」 

 オレはやけくそで魔王ゼロに近づいた。

「なんとか近づいたぞ! で、こっからどうするんだベル!!」  

「さらばだ......
 お主たちとの旅楽しかった......
 ありがとうシンジ......」

「えっ!? おい何を......」

 ベルはオレから古代の指輪をとり、魔王の上に飛び降り吸い込まれていった。
 そして黒い巨人はまばゆい光を発した。

「ベルーー!!」


 それから一週間後。

 黒い巨人魔王ゼロは消え去り、みな笑顔に包まれていた。
 町はお祭り騒ぎだ。
 空には花火が打ち上げられている。
 オレは屋敷のバルコニーからそれをぼんやり見ていた。

「シンジ、ベルことまだ考えているの?」

 メルアが話しかけてきた。

「ん? ああ......」

「仕方なかったのよ。
 あんたが悪い訳じゃない。
 それに、魔族はのちに復活するしね」

「そうですよ。
 古代の指輪で内部崩壊させなければ、魔王ゼロに全ての魔力を奪われてこの星は死の星になっていたんですから」

 リーゼルがそういう。

「うむ、ベル様はいずれ復活する。
 お主はやれるだけのことをやったのじゃ
 胸を張るがよい......」

 メリエールは自分に聞かせるようにいった。

「そうだな......
 少し外の空気を吸ってくる」

 オレはそういって外に出た。
 国王から報奨もでて、財産も名声も得たのに何か満たされない思いがぬぐえなかった。
 
(なんだこの感じ......)

(シンジ......)

 その時頭に声が聞こえた。
 その瞬間見覚えのある場所にオレはいた。

「ここは......」

 それは神殿だった。   
 前の大きな椅子にはあの女神リオリシエが座っていた。

「シンジよ。
 よくやりました。
 まさかあなたが世界を救うなんて思いもしませんでしたよ」

「女神様......」

「あの世界はあのまま滅んでいたかもしれない。
 私の力さえ届かなかったというのに......
 よってあなたの願いを叶えましょう」

「願い」 

「元の世界、あなたが死ぬまえに戻してあげましょう」

「本当!」

「ええ、それほどあなたのこの世界への貢献は素晴らしいものでした。
 何度時間を戻しても不可能なことですよ」

 女神は優しい微笑みを向けている。

「では戻しますね......」

「ちょっとまって!あの、女神様......
 ベルはヴァルザベールはどうなったんですか」

「残念ですがヴァルザベールは消えました」

「やっぱりか......
 じゃあ千年後まで復活はしないんですね......」

「いいえ、もう二度と復活はしません」

「えっ!?」

「あの者は残りの力を使って自らを元のエネルギーへと変換しました。
 そしてエネルギー制御の指輪と融合して魔王ゼロのエネルギー吸収限界を作った。
 結果、吸収限界を超えた魔王は自壊消滅したのです」

 そういって女神は目を伏せた。
 
「あいつが死んだなんて......
 ベルはそれを知ってたのか......
 だったら願いはあいつを甦らせることにしてください!」

「残念ですが、それはできません......
 あの者は神である私すら凌駕するエネルギーなのです。
 もう二度と甦ることはできません
 あの世界のエネルギーとなりました......」

 沈黙が場を包む。 
 そしてオレは覚悟した。

「オレの願いは......」


「ほら、早くおきなさいよ! シンジまさか死んでないでしょうね!!」

 うるさい声が聞こえる。
 身体中が痛い。
 目を開けると、メルアが心配しなから怒っている。

「全く! コテンパンじゃない!
 しょうがないわ! あの森に行くわよ!」

「あの森......」

「そうよ!
 あの森にすごい魔力のものがあんのよ!
 あれを手に入れればきっとあんたでも強くなれるわ!
 さっさと行くわよ!」

「ああ行こう......」 

「なによ。
 ずいぶん素直じゃない。
 絶対ごねると思ってたのに、まあいいわさっさといくわよ」

「ああ、行ってもう一度......」

「は? もう一度なにいってんの?」

「行こうぜメルア!」 
 
「まちなさいよ! このメルアさまをおいてくなーー!」
 

 オレは過去に戻ったのだった。
 もう一度、大魔王の弟子としてやり直すために。

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