やり直しの大魔王の弟子

曇天

文字の大きさ
上 下
62 / 63

第六十二話 記憶

しおりを挟む
 周りが何も見えない暗闇の中にいる。
 
「どこだここメルア?」

「こっちよ」

 オレは手探りで辺りを調べる。
 柔らかいものに触れた。

「きゃあ! このバカ!!」

「ぐはっ!!」

 メルアに殴られた。

「なんなんだよ。
 ここは!」

「多分......魔法かしら、ほらあそこ光」

 光がある場所にいってみる。
 そこに行くとは周囲にいくつかのほのかな光が点在していた。
 
「これは記憶だわ......」 

 確かにその光りには映像が写っている。
 その一つにメルアが触れると、オレたちは石で囲まれた遺跡のような場所にいた。
 そこには黒い光りの球体の前にヴァルキサスがいた。
 オレが構えると、メルアが止める。

「これは過去の記憶よ。 
 あの宝石がみせているのね」

 オレたちがみていると声が聞こえる。

「本当かそれは」

 ヴァルキサスは狼狽している。

「そうだ......
 このままではいずれこの大地は全て消え去るであろう」

 頭の中にくぐもった声が聞こえた。

「これあの黒い光の声か......」

「もう少しみてみましょう......」

「この世界が人間だけではなく、魔族もか」

「そうだ......
 生きとし生けるもの。
 動物や植物、大地、海、山、そして......」

「父上も......」

「ヴァルキサス......
 我を目覚めさせよ......
 さすればこの世界は救われる。
 ファースト......いやヴァルザベールも」

「だが、私は人間だ......
 それほど魔力も命も続かない......」

「我がお前に知恵を授けよう。
 かつての文明の技術を」

 そこで周囲は消え暗闇に戻された。

「あれは......」

「よくわからんが、あの球体がヴァルキサスをそそのかしてるみたいだったな」

「まずいんじゃない!
 あの球体なんかたくらんでるみたいだわ!
 ベルに伝えないと!」

「でもこっからどうでるんだよ!?」

「......衝撃を与えれば......
 仕方ないわね。
 シンジ歯を食い縛りなさい」

「えっ? 待って!! 待って!!」

 逃げるオレを楽しそうにメルアが追いかけてくる。

「フッフッフッ、さあ、おとなしく死に......
 なぐられなさーい」

「お前楽しんでるだろ!!」

「フェアリーナックル!!」

「ぐへえ!!」

 衝撃で目が覚める。
 
 空では黒い巨人とベルが戦っていた。

「あれを止めねえと!」

 オレは魔力を両手に集めて撃ちだした。
 メルアは魔法を放った。
 ベルは少し距離をとった。

「シンジ、メルア!?」

「おーい! ベル!
 ヴァルキサスは人間への復讐より、お前を救いたいみたいだ!」

「魔王ゼロとかいうのにそそのかされてるみたい!」

「なに!?
 まことかヴァルキサス!」

「......あ、なた、は人間......
 の、愚かさを......しっているはず......
 このままでは......
 いずれ......かつてのように......ヴヴ」

 ヴァルキサスは突然苦しみだした。

「どうした!?
 ヴァルキサス!!」

「久しいな...... ファースト。
 私だ......」

「ファースト...... その呼び名どういうことだ......
 お主はまさか......」

「そうだ私は魔王ゼロ......
 いやプロトタイプゼロ」

「プロトタイプ......
 まさか意志があったのか......」 

「そしていま体も手に入れた。
 これで任務を遂行できる」

「任務まさか!? 
 やめよ!!」

 黒い巨人が息を吸い込むと周囲から黒い霧がどんどん巨人に吸い込まれていく。
 ベルからも黒い霧がでていき空から落ちてきた。
 オレはそれを受け止める。
 見るとベルは子供の姿に戻っていた。

「これは!?
 どういうことだベル!?」

「やつが全ての魔力を奪っておる......
 このままでは全ての魔力がエネルギーがこの星からなくなり、この星は崩壊する......」

「なによそれ!!
 確かに魔力が減ってるわ......」

 地上でもモンスターたちが倒れていく。

「なんなんだあいつ!
 なんのためにこんなこと」

「......おそらくかつての命令なのであろう。
 任務といっておった......」

「任務? それにプロトタイプとかファーストとか......」

「それは我ら大魔王がかつての超文明が作り出したものだからだ」

「作り出した?」

「かつて人類は魔力......
 いやグランと呼んだエネルギーの枯渇に悩んでいた。
 そこでエネルギーそのものに意志を持たせ、生物、無生物、様々なものからエネルギーを吸収利用しようと考えた......
 そこでつくられたのが我ら四体の大魔王、そして試作品のプロトタイプゼロだ」

「それがあいつか」

「そうだ......
 我らは産まれたが人間たちはその力を誤って使い、世界を滅ぼした......」

「誤って使い......」

「戦争だ...... 少ないエネルギーをぐり戦いがおこった。
 我らを兵器のエネルギーとして使ったのだ。
 その戦争の結果人類は激減し、エネルギーは散りこの星は荒廃した。
 我らは星をもとに戻すため古代の技術を使い我らの複製を作った」

「それって魔族......」

「......うむ、そして永い年月をかけて周囲に散った魔力を集め少しずつ星を元にもどしていったのだ」
 
「じゃああいつは」

「あやつには元々エネルギーを集める能力はない。
 ただ貯めて使うだけの試作品だった。
 おそらくヴァルキサスを取り込んでその力を得たのだろう。
 このままではこの星のエネルギーは食い尽くされてしまう......
 やつの元にまで行ければ......」


 ベルは押し黙り沈黙が続いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

素材採取家の異世界旅行記

木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。 可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。 個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。 このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。 この度アルファポリスより書籍化致しました。 書籍化部分はレンタルしております。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

処理中です...