やり直しの大魔王の弟子

曇天

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第五十九話 カイ

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「こ、殺される!」

「に、逃げないと!」   
  
 オレとメルアが逃げ出そうとする。

「あっ! いた!
 ダメだよ! 逃げちゃ! あははは!!!」

 笑いながら撃ち出したカイの強力な魔力弾が空一面を覆い落ちてくる。

「ぐはぁぁぁあ!!」

「きゃぁぁぁあ!!」

 オレたちは吹き飛ばされる。
 立ち上がって走る。

「なんなんだあの人めちゃくちゃだ!」

「くるんじゃなかった!! シンジわたしの盾になりなさいよ!」

「ふざけんな!!」

 ベルが魔力を取り込むため、眠りについてから、オレとメルアはカイにしごかれていた。
 ここには朝や昼などがなく時間がわからないが、かなりの長く叩きのめされては回復しを繰り返す。

「うん! 結構強いね君たち!
 さすがベルくんの仲間だ!」

「い、いや、なんなんすかあなた......
 強いなんてもんじゃない」

「そうよ。 
 それでも人間なの......」

「うん! 私はねベルくんに戦い方を教えてもらったんだ!」

「てことは」

 そう私が最初の弟子、二番目がキサスくん。
 そして三番目が、シンジくん君だよ」

 そういいながらオレとメルアがへばるそばでカイは腰をおろした。

「ベルの弟子?
 人間なのに?」

「そう......
 私はね貧しい国の生まれで、幼い頃に口べらしのために山に捨てられたの。
 そこでモンスターに襲われてたところをベルくんに見つけて育ててもらったんだ」

「でも人間の側だったんでしょ」

「それは、人間の世界が争いに明け暮れてたから気になって旅にでたの。 
 そこで戦争を止めたり人を襲うモンスターを倒したりしているうちに、英雄、勇者と呼ばれていったんだ。
 でも魔族との戦争が起こった......」

「それで、ていよく担ぎ上げられたってわけね」

「そうね......
 私も最初は魔族と話し合いをしようとおもったんたけど。
 仲間を殺されている魔族は怒り狂っていてどうしようもなかった......
 仕方なく人間を守るために戦ったんだけど、結局は罠にはめられてあのエンシェントアーマーの人柱にされてしまったの......」

「ひどい話しだな。
 そうだ。
 二番目の弟子ヴァルキサスってやつはどんな奴なの」

「私のあとにベルくんが連れてきた子供なの。
 自分を迫害し両親と国を滅ぼした人間たちをひどく憎んでいた......
 必ず滅ぼすってね。
 そしてその魔力と頭脳ですぐに錬金術《アルケミー》をマスターして、ベルくんに禁止されていた古代技術を調べていたわ」

「うーん、事情はありそうだけどな......」

「なにがよ!
 自分の過去で他人を巻き込んでるのは許せないわ!」

「おまえ自分を棚にあげてよくそんなことがいえるな」

「なんのことかしら」

 メルアがそっぽを向いた。

「はい! 休憩終わり!
 さあ実戦訓練よ!
 次は本気で行くからね!」

「いーやーだーー!!」

 オレたちは叫んだ。


「むう......」

「やっと目が覚めたかベル......」

「うむ、なんとかな。
 というかお主たちボロボロではないか!
 ......そうかカイか」

「そうだよ! 何回も死にかけたよ!
 泣いて命乞いしたよ! 
 でも笑いながらゼロ距離で魔力弾ぶっぱなしてきたよ!」

「そうよ! 女の子でもお構いなしよ! 
 笑顔で何回首斬られそうになったと思う! 
 カタカタ震えながら隠れていたわよ!」

「すまぬな......
 あやつ加減を知らぬのだ。
 我も朝起こされるのに城に大穴開けられたことがあったからな」

「じゃあ二人とも休憩終わりね!
 ......ってベルくん起きたのね!」

「ヒィ!!」

 オレとメルアはベルの後ろに隠れた。

「ふむ、カイよ。
 少し手荒すぎるぞ」

「えー! そうかな。
 でも二人とも耐えてるし」

「いや、二人がいればオレらいらなくね?」

「そうそう!」

 メルアも、頭をブンブンふって同意した。

「いやまだ魔晶核《グランコア》を吸収したばかりなのだ。
 それを使うにはしばし時間がいる」

「確かにまえと魔力も姿も変わってないな」

 その時、空から声がした。

「ヴァルザベール様......」

「うむ、リューガリアかどうした?」

「今ヴァルキサスが全世界に向けて人間とそれにくみする全てのものを殲滅すると宣言して、モンスターの軍が世界各地に出没しました......」

「ついにきたか......」

「おいおい!! 
 もう魔王復活してんじゃねーのか!!」

「いや、まだだ。
 モンスターの軍を作るためにも、大量の魔力はいる。
 魔王復活には足りまい。
 おそらく攻撃した者たちを魔晶核《グランコア》に変換つもりなのだろう」
 
「ベルくん早く行かないと!」

「うむ」

「行くしかないわね」

「......ちょと先いってて、行けたら行くから」

「逃げられるとおもってんの!!」 

「ちぎれるメルア! ちぎれるーー! あーー!」


 オレはメルアに耳を引っ張られながら門をくぐった。
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