やり直しの大魔王の弟子

曇天

文字の大きさ
上 下
40 / 63

第四十話 絶望と忍び寄る影

しおりを挟む
 オレたちはリープリー海岸に来ていた。

「いい加減泣き止めシンジ。
 とうしたというのだ」

「だって! だって! この世界に水着がないんだもん! 
 うわーん!」

 オレは泣いた。
 死んだときですらなかなかったのにオレは心から泣いた。
 水着がみれるとふんでいたからだった。

「当たり前でしょ。
 あんたの世界はどうかはしらないけど、この世界じゃ海にいっぱいモンスターもいるんだからそうそう泳げないのよ」

「そうですよ。
 さっき聞いた水着とやらは防御力が弱すぎてモンスターの格好のエサですよ」

「でも、ビキニアーマーはあるんだろ! 水着と一緒だろ!」

「防御力が低すぎるからそんな露出の高い装備はありません。
 そこまで伸縮性のある素材はゴムぐらいですかね。
 石油からつくりだす繊維とかいってましたが、そんな技術はないんです」

「石油ならあるにはあるが、ほとんど使わんな」

「うわあああああん!」

「......すごい泣いたわ」
 

 それからしばらくオレは砂浜に棒で字を書いていた。

「あんたすねてないで手伝いなさいよ!」

「まあメルアよ。
 少しそっとしておこう」

 ベルはそういってくれている。
 
「お宝、お宝」

 リーゼルは捨てられたゴミの中から素材になるものを集めているようだ。

(水着がないなんて......
 もう生きる気力もない......
 いや、水着がないならこの世界の下着はなんなんだ?
 オレは何かガサガサな麻みたいなパンツはいてるけど、女物は?
 よし!」

「落ち込んでいても仕方ない歩きだそう!」

「やっとやる気になったのバカシンジ」

 メルアに悪態をつかれたが、オレは海に入ると水をメルアとリーゼルにかけた。
 
「きゃあ! 何すんのよ! バカシンジ!」

「冷たいですよー!」 

(くっくっくっ、こうなったら実力行使じゃい。
 濡らして着替えをのぞき、未知なるものを知ることで知的欲求を満たすのだ)

「シンジ海は危険だ。
 遠くにいくでない」

(この高度なミッション成功のために、この際危険は受け入れよう。
 魔力感知をしているから大丈夫だろうしな)

「シンジあんた後ろ!」

(ふん! 近づいているのはわかっておるわ! 
 がこの距離なら逃げられる。
 あとすこし濡らしてから...... なに!?)

 高速で何かがそばにきた。

「はや!......」

 その瞬間水の中に引き込まれた。
 水の中でみたそれは下半身が魚の女だった。
 オレは人魚に抱えられて海のそこにつれていかれていた。

(これは、人魚......そして柔らかいおっぱいと思ったら固いのもある......)

 そのままオレは意識を失った。


 オレが目が覚めると空周りは岩で囲まれ上には海が見える。

「どうなってんだ海の中か? それにここはどこだ......」

「目が覚めたか」

 オレが振り替えると下半身が魚の女性たちがいた。

「お前ら! やっぱりマーメイドか!」

「そうだ。 強引につれてきたりして申しわけない。
 私はマーメイド族の騎士、デュエリア」

 一人の青い髪のりりしい顔つきの美しい少女デュエリアがそういった。
 オレをここまでつれてきた人魚だ。

「何でこんなことをする」

(まあ、おっぱいはやわらかかったが固いのは貝殻の胸当てか)

「すまない......
 がなぜにやけている」

「いや、べ、別に」 

「実はいまマーメイド族が危険にさらされている」

「危険?」

「ああモンスター、半魚人のサハギンたちに攻められているのだ。

「サハギン......
 それとオレに何か関係があるんだ」  

「力を貸してほしい!」

「な、なんで!?」

「陸に強い魔力を感じた。
 その剣だ。
 それを使えるあなたは強いはずだろう」

「む、ムリムリ! オレは弱いよ!」

「そういわず頼む! 
 我らは先の大戦で魔王の軍と戦い戦えるものが少ないのだ!」

「じゃあ、仲間、ほら陸にいるオレの仲間をつれてくればいいよ!」

「無理だ......
 周囲をサハギンに囲まれていて、一人連れてくるのがやっとだった」

「ダメだって! だって水の中で戦えないもん!」

「それは大丈夫だ。
 この指輪、水神の指輪を使えば水中でも自在に動け会話もてきる」

(いやーー! このままじゃ戦わされるーー! 
 でも囲まれてるから逃げられもしないーー!!)
 
「頼む......
 この里には小さな子供たちしかいないのだ」

「............」

 苦痛の表情で頼むデュエリアとその後ろマーメイドたちがこちらを不安そうに見つめている。

「......で、敵の数とこちらの数は」

「敵はおよそ千、こちらは五十」

「よし! 逃げよう!」

「逃げられるならとっくに逃げているのだ。
 奴らは周到に我らがきづかないうちに周囲を抑え、逃げ道をなくしていた......
 ここまでモンスターが組織的に動くなんて」

「他の里とかないの!!」

「あるいくつかに点在している。
 おそらく各個潰していくつもりなのだろう」

 デュエリアはつかんでいる三ツ又の槍を強くにぎった。

「何でわざわざ潰しにくんの。 
 マーメイドがサハギンに何かしたの。
 おまえら鳥肌たててみろとか煽ったの?」

「そんなことはしていない。
 襲われたのは多分、いくつかに魔宝玉《マジックスフィア》を分割して隠しているからだ」

「魔宝玉《マジックスフィア》?」

「海の魔力を吸収するアイテムだ。
 魔力がモンスターたちに力を与えるのを防いでいる」

「なるほど、それを奪おうとしてるってことか。
 でもこの戦力差はな......」

「わかっている。
 実はこの奥の神殿、海境神殿《アクアテンプル》に我らマーメイドの守護者《ガーディアン》が眠っている。
 私と共にいきそれを起こしてほしいのだ。
 起こせればこの戦いに勝てる」

(仕方ない......
 やらないとオレも死ぬしな)

「わかったよさっさといこう」

「ありがとう感謝する強きゴブリン」

「だ、誰がゴブリンだーー!!」


 海底にオレの声がこだました。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

処理中です...