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第四十三話

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「あの数1000、いや万はいる! 嘘でしょ!」

 ケイレスはそう震える声でいった。

 私たちは城の屋上に上がる。

 地上からも地面がうごいているように黒い塊がうごめいている。 それは人より大きな蟻の大群だった。

「あれはシャドウアントみたいだ...... あれは金属並みに固い甲殻をもつ」

 セリナは息をのんだ。

「さすがに、この数を弱ったザルギードさまだけで倒すのは難しいか...... もう少しだったのに...... 次の勇者がいないと」

 フォグが諦めたようにいった。

「あれを退ければ知っていることを全て話をしてくれる?」

「あの数を...... 更に後ろから本隊が来ますよ」

「ええ!わかっている。 とりあえず武具を集められるだけ集めて」

 こちらの目を見すえて、フォグがうなづき兵に指示を出す。

「冗談でしょ! せめてアエル、アストエルとレイエルを呼ぶしかないわ!」

「死ぬつもりか!」

「今は話している暇はないよ。 【浮遊】《レビテーション》」

 空をとび城の上空に浮かぶ。

(本隊が来る前に、尖兵を倒せば...... 横に川がある)

「【水念力】《アクアキネシス》、【空念力】《エアロキネシス》」

 川から風に水が巻き上げられワイバーンに降り注いだ。

「【念力】《サイコキネシス》」

 集められた槍や剣、斧を鎧兜を宙に浮かせて上空に打ち出した。

「【地念力】《アースキネシス》」

 金属を変化させ長い針へとかえ、迫ってくるワイバーンの大群へと打ち出す。  

「グオオオッ!」 

 そう空にワイバーンの鳴き声が轟く。

「【雷念力】《ヴォルトキネシス》」

 そして当たった針に雷撃を放った。

「ギャオオオ!!」

 バラバラとワイバーンが地上に落ちていく。

「【召転移】《アポート》」

 放った針を再び手元に戻す。

 そしてワイバーンへと放ち雷撃をはなつ。 ほとんどのワイバーンは地面へと落ちていった。

(下の蟻たちは水を浴びて雷撃を受けたのに、前へ進んでくる。 電撃に耐性があるのか)

 城の前に蟻たちが迫る。

「【冷念力】《クライオキネシス》、【空念力】《エアロキネシス》、【炎念力】《パイロキネシス》」

 地面へと降り注いだ水が凍りつき、風が炎を巻き上げ蟻たちを包む。

「【召転移】《アポート》」

 ワイバーンにはなった針を手元に戻すと空へと放つ。

「【地念力】《アースネキシス》、【念力】《サイコキネシス》」

 大量の長い針をまとめ、大きな棒へと変化させ 地面へと急降下させる。

「ギギィィイ!!」

 金属を棒を甲殻を次々と貫いていく。 棒の雨のあと蟻たちは動かなくなった。

「これで全部か...... さすがに疲れた」

 私は城へと戻った。

「すごい...... あの数を一人でなんて」 

「ああ、さすがにここまでとは思わなかった」

 ケイレスとセリナは驚いている。

「勇者でもない。 魔族でもない。 あなたは何者です......」

 フォグはこちらをいぶかしげにみている。

「それよりこれで魔族はうごかないの」

「......ええ、おそらく。 尖兵が全滅ですから、さすがに兵力を集めるでしょうね」

「それって諦めてないってこと?」

 ケイレスがいうとフォグはうなづく。

「ひとたび魔王からの命が出れば、魔族は人間への攻撃を止めない。 止めるには勇者の力が必要...... だからこそ次の勇者が生まれるまでザルギードさまがやるしかない。 もしここでザルギードさまが死ねば、とても多くの人間が死ぬのです」

 そう悲痛な表情で答えた。

「ラクエスと共同で戦えばいいんじゃないか」

 ケイレスはそういった。

「無駄です。 私の話を彼らは信じなかった」

 そうフォグが厳しい顔をした。 そしてこちらをみる。

「それであなたはまだ戦えますか?」

「......そうね。 かなり消耗した。 これ以上の兵力ならすぐはかなり難しいね」

「そうですか...... おそらく本隊は更に強いはず、やはり勇者の力が必要ですね」

「そんなディラルはとても戦えないわ......」

「ああ、それに戦えたとしても廃人になる...... アエルたちを呼んでも勝ち目がないな」

 ケイレスとセリナはそういう。

「あなたが調べていたことはなんなの。 魔族をコントロールする方法とはなに......」

 私が聞くと、フォグは少し考え小さくうなづく。

「それを説明します。 こちらに来てください」

 私たちはフォグにいわれるまま城の地下へと降りていった。

 
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