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第二十九話
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「ここか......」
私たちは山を越え、森林に入った。
「確かに平地ですけど...... かなりのモンスターがいますわよ。 かなり強い。 魔族でも手こずるほどですわね」
アストエルがいうようにここにくるまでも何体か倒してきた。 普通のモンスターより大型で強い。
「確かに、冒険者クラスじゃないと倒すのは難しい。 そういえば上位魔族はモンスターを召喚できるはず......」
「ええ、ですがレッサーデーモンやワイバーンなどきまったモンスターしか召喚できませんわ。 しかも召喚にはかなりの期間が必要です」
「いま魔族は召喚に時間を費やしてるの?」
「そうですわ。 戦争の準備で、一部の偵察以外は皆て召喚儀式を行っています」
(かなり大規模な侵攻を企てているのか。 一応バルメーラ大臣には伝えたが、角を折れば殺さなくていいなら、【催眠】《ヒュプノシス》を使うしかないな...... だがこの力できればつかいたくはない)
私はそう考えているとアエルが袖を引っ張る。
「なあ、いまは農地の確保だろ。 どうするまたみんなを呼ぶか」
「いや、ここは危険すぎる。 モンスターも強いし、さきにモンスターを一掃する」
「一掃するですって? 何をいっているの。 この数の強大なモンスターをですの? 私たちが一体ずつ倒していっても次から次へと増えていずれ力尽きますわ」
アストエルがあきれている。
「まあ、アストエル、リンに任せろ」
「【空念力】《エアロキネシス》」
風の刃を放ち、周囲にある木々を根本から切り裂いた。
ズオオオン!
地響きと土煙をあげて、視界にあった周囲すべての木々が倒れた。
「なっ!!」
「リンずいぶん切れ味がましたな」
「ええ、この間、アストエルとの戦いのとき、水を圧縮して打ち出した要領で風でもやってみたんだ」
「なんですの! その魔法!! あり得ない! 私の角を切り落とした威力といい! そんな魔法を人間が使えるなんて! そうか勇者!」
アストエルは距離をとる。
「違うぞアストエル、リンは勇者じゃない」
アエルは冷静にいった。
「ですけど、あんな力、普通の人間にできるというの......」
「まあ、普通ではないが...... 私や魔族たちを殺してないだろ」
「た、確かに......」
納得したのかアストエルは近づいてきた。
「さて、アエルにアストエル、あとで炎の魔法を頼むよ」
「わかった」
「えっ?」
「【念力】《サイコキネシス》」
地面に横だおしになっていた木々や埋まってた根っこ、モンスターが空へと浮かんでいった。 それらを上空へと集める。
「ビルド、ファイアショット。 アストエルも」
「えっ、ええ...... ビルド、フレイムブラスト」
球状になった木々やモンスターが炎で燃やされる。
しばらく燃えていたが、灰となった黒い塊が地上に降りてくる。
「し、信じられませんわ。 なんですの...... これ」
アストエルが口をパクパクとしている。
「深く考えるな。 つかれるだけだ。 さあ、これを土に混ぜるぞ。 土魔法は使えるだろ」
「え、ええ、まあ」
アエルとアストエルは地面を土魔法で攪拌し、混ぜ合わせる。
私は土のなかの石などを浮かせあつめる。
「ふぅ、終わった」
「なんとかですわ」
ふたりとも汗をかき座った。
「二人ともご苦労さま。 これで川から水を引いて、壁をつくれば農地の出来上がりだ」
「ほらみてみろリン! 土かふかふかだ!」
アエルは土をさわってはしゃいでいる。
「子供みたい」
あきれたようにアストエルはいった。
「まあ、最近だよ。 あそこまで感情豊かになったのは」
「そうですの」
「ずっと何かを、心に秘めていて、それに苦しんでもいた。 心の中は読んでないけど」
「......まあ、あのこは魔族の世界でも異端者でしたわ。 その分苦しんだみたいですわ」
「それは角が小さいから?」
「......小さいといっても下位魔族よりは大きいでしょう。 角が大きいとそれだけ感情が高まり、理性のコントロールが難しいのです。 私は片方が小さいからか、不安定な気持ちで生きてきましたが、あのこは私よりも苦しんだはず」
そういいながらアストエルはアエルを見つめる。
(それで苦しんでいたのか)
「なのに、他の魔族を助けたり、魔法を下位魔族に教えるなど、危険な行為をしていましたわ。 そしてついに処刑を命じられ逃亡しました......」
「すごいなアエルは」
「ええ......」
「なんだ? 二人ともへんな顔をしてこっちをみて」
「土で顔が汚れているから」
「えっ?」
アエルは必死に顔をぬぐっているのをみてアストエルと笑った。
私たちは山を越え、森林に入った。
「確かに平地ですけど...... かなりのモンスターがいますわよ。 かなり強い。 魔族でも手こずるほどですわね」
アストエルがいうようにここにくるまでも何体か倒してきた。 普通のモンスターより大型で強い。
「確かに、冒険者クラスじゃないと倒すのは難しい。 そういえば上位魔族はモンスターを召喚できるはず......」
「ええ、ですがレッサーデーモンやワイバーンなどきまったモンスターしか召喚できませんわ。 しかも召喚にはかなりの期間が必要です」
「いま魔族は召喚に時間を費やしてるの?」
「そうですわ。 戦争の準備で、一部の偵察以外は皆て召喚儀式を行っています」
(かなり大規模な侵攻を企てているのか。 一応バルメーラ大臣には伝えたが、角を折れば殺さなくていいなら、【催眠】《ヒュプノシス》を使うしかないな...... だがこの力できればつかいたくはない)
私はそう考えているとアエルが袖を引っ張る。
「なあ、いまは農地の確保だろ。 どうするまたみんなを呼ぶか」
「いや、ここは危険すぎる。 モンスターも強いし、さきにモンスターを一掃する」
「一掃するですって? 何をいっているの。 この数の強大なモンスターをですの? 私たちが一体ずつ倒していっても次から次へと増えていずれ力尽きますわ」
アストエルがあきれている。
「まあ、アストエル、リンに任せろ」
「【空念力】《エアロキネシス》」
風の刃を放ち、周囲にある木々を根本から切り裂いた。
ズオオオン!
地響きと土煙をあげて、視界にあった周囲すべての木々が倒れた。
「なっ!!」
「リンずいぶん切れ味がましたな」
「ええ、この間、アストエルとの戦いのとき、水を圧縮して打ち出した要領で風でもやってみたんだ」
「なんですの! その魔法!! あり得ない! 私の角を切り落とした威力といい! そんな魔法を人間が使えるなんて! そうか勇者!」
アストエルは距離をとる。
「違うぞアストエル、リンは勇者じゃない」
アエルは冷静にいった。
「ですけど、あんな力、普通の人間にできるというの......」
「まあ、普通ではないが...... 私や魔族たちを殺してないだろ」
「た、確かに......」
納得したのかアストエルは近づいてきた。
「さて、アエルにアストエル、あとで炎の魔法を頼むよ」
「わかった」
「えっ?」
「【念力】《サイコキネシス》」
地面に横だおしになっていた木々や埋まってた根っこ、モンスターが空へと浮かんでいった。 それらを上空へと集める。
「ビルド、ファイアショット。 アストエルも」
「えっ、ええ...... ビルド、フレイムブラスト」
球状になった木々やモンスターが炎で燃やされる。
しばらく燃えていたが、灰となった黒い塊が地上に降りてくる。
「し、信じられませんわ。 なんですの...... これ」
アストエルが口をパクパクとしている。
「深く考えるな。 つかれるだけだ。 さあ、これを土に混ぜるぞ。 土魔法は使えるだろ」
「え、ええ、まあ」
アエルとアストエルは地面を土魔法で攪拌し、混ぜ合わせる。
私は土のなかの石などを浮かせあつめる。
「ふぅ、終わった」
「なんとかですわ」
ふたりとも汗をかき座った。
「二人ともご苦労さま。 これで川から水を引いて、壁をつくれば農地の出来上がりだ」
「ほらみてみろリン! 土かふかふかだ!」
アエルは土をさわってはしゃいでいる。
「子供みたい」
あきれたようにアストエルはいった。
「まあ、最近だよ。 あそこまで感情豊かになったのは」
「そうですの」
「ずっと何かを、心に秘めていて、それに苦しんでもいた。 心の中は読んでないけど」
「......まあ、あのこは魔族の世界でも異端者でしたわ。 その分苦しんだみたいですわ」
「それは角が小さいから?」
「......小さいといっても下位魔族よりは大きいでしょう。 角が大きいとそれだけ感情が高まり、理性のコントロールが難しいのです。 私は片方が小さいからか、不安定な気持ちで生きてきましたが、あのこは私よりも苦しんだはず」
そういいながらアストエルはアエルを見つめる。
(それで苦しんでいたのか)
「なのに、他の魔族を助けたり、魔法を下位魔族に教えるなど、危険な行為をしていましたわ。 そしてついに処刑を命じられ逃亡しました......」
「すごいなアエルは」
「ええ......」
「なんだ? 二人ともへんな顔をしてこっちをみて」
「土で顔が汚れているから」
「えっ?」
アエルは必死に顔をぬぐっているのをみてアストエルと笑った。
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