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第四十二話
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「ぐわあああああ!!」
エイジが地面で転げまわる。
「な、なぜだぁぁ!!!」
エイジは腕を押さえてこちらを見上げる。
「わざわざ両腕をひらいたんだ。 斬るのが遅いのは当たり前だろう」
「ぐっ、だが、剣なんてもってないはず......」
「これだよ」
おれは消していた剣をみせた。
「それは!? 俺のアサシンエッジ...... 一緒にもっていたのか」
「防がれるのはわかっていたからな」
「くっ、くそ...... ふふふふ、いい、いいぞ! もう一度だ...... もう一度必ずやってやる」
そういってエイジは姿を消した。
「すまなかった......」
怪我の治療を負えたヤマトが謝る。
「なんで謝るんだ?」
「俺がふがいないばかりに......」
ヤマトは肩をおとした。
「別に人を斬れないのはおかしなことじゃない。 むしろ当たり前だよ。 おれだって斬れなかった」
「そうだよ」
「ああ、人殺しを嬉々とする方が異常だ」
アイとテラリスもそういうが、ヤマトはうなだれたままだ。
「サナ私たちは、ラーシェを探してくるよ」
そういってアイとテラリスは奥へといった。
おれとヤマトは沈黙していた。
「俺は...... 人をきれない」
「だから、それは......」
「いや、ちがうんだ。 俺は剣道で相手を怪我をさせちまってからだ...... それ以来剣をもててない」
「それで......」
「ゲームならやれるかと思ってこのゲームをやってみたんだが、やはり思いだしちまう......」
「別に気にすることじゃないさ。 人を殺す必要はない」
「そうもいかないだろ...... 最悪、誰かが殺されそうになっても、そんなこと言ってるわけには......」
「......それはおれも一緒だよ。 仮にNPC《ノンプレイヤーキャラクター》でも最悪の状況でもためらうと思う。 覚悟をきめるとか、そんな強がっても仕方ない。 それが理性だしおかしくはない」
「......そうだな」
納得はいっていないようだが、ヤマトは静かにうなづいた。
「すみません...... まさか刺客がこんなところにくるとは」
ラーシェがあやまった。
おれたちはラーシェについて洞窟にはいる。
「どうやら、魔法がかけられていて道に迷ったらしいのです」
「みたいね。 私の透視じゃないと道はわからないぐらい、見た目が変化してる」
おれたちはアイの透視をたよりに奥へ奥へとはいった。
「あそこにいる......」
奥をみると、巨大なコウモリがぶら下がっている。
「ミラージュバット。 幻影を見せます...... 視覚に頼らないでください。 アイさんの指示で一斉に攻撃を放ちましょう」
ラーシェが合図し、おれたちは一斉に遠距離攻撃をはなつ。
「ギャアオオオオオ」
断末魔を叫びながらミラージュバットは倒れた。
おれたちは宿に戻る。
「とりあえずネストは破壊しました。 次の依頼まで時間がありますからお待ちください」
そういってラーシェは帰っていった。
「まだ、信頼は得てないということか」
「さすがにひとつだけじゃね」
「それより、ヤマトだ......」
テラリスは心配そうにいった。
帰ってから様子がおかしい。 宿の部屋にこもっている。
「やはり、斬れないことを気にしてるのか」
「なにかメールがきてたみたい......」
「えっ? 知り合い。 今までそんな話、一切してなかったけど」
宿の部屋からでてきた。 その手には剣をもつ。
「すまないが、立ちあいをしてくれないか......」
「えっ? 立ち会い...... どういうことだ」
「実は......」
おれたちはヤマトの頼みである草原へとやってきていた。
そこには一人の少年がたっている。
「あれがヤマトが怪我させたムサシか」
ヤマトにかつての道場仲間がメールを送ってきたという。 それはかつてヤマトが怪我をさせた親友だという。
「......ヤマト、あれから稽古にもきてないな」
「......すまん」
「俺がききたいのは謝罪じゃないんだがな」
そういってムサシは剣を抜く。
「お前がこのゲームをしていると人づてに聞いた...... だから俺もきたんだ。 勝負しろ。 まさか俺のたのみを断りはしないよな」
「だけど...... レベル差が」
「俺はかまわんが、お前がそういうと思った。 これを飲め。 レベルを一時的に下げるレベルダウンポーションだ。 同レベルで勝負しろ」
そういってアイテムを渡す。
「なあムサシ、やめないか。 俺は......」
「人を傷つけるのが怖くなったか、それとも俺への同情か......」
「そんなつもりは...... だが今戦うと死ぬ」
「だからだよ。 俺にとっては好都合だ。 お前にやられた恨みも返せる」
ムサシの目は怒気をふくんでいた。
エイジが地面で転げまわる。
「な、なぜだぁぁ!!!」
エイジは腕を押さえてこちらを見上げる。
「わざわざ両腕をひらいたんだ。 斬るのが遅いのは当たり前だろう」
「ぐっ、だが、剣なんてもってないはず......」
「これだよ」
おれは消していた剣をみせた。
「それは!? 俺のアサシンエッジ...... 一緒にもっていたのか」
「防がれるのはわかっていたからな」
「くっ、くそ...... ふふふふ、いい、いいぞ! もう一度だ...... もう一度必ずやってやる」
そういってエイジは姿を消した。
「すまなかった......」
怪我の治療を負えたヤマトが謝る。
「なんで謝るんだ?」
「俺がふがいないばかりに......」
ヤマトは肩をおとした。
「別に人を斬れないのはおかしなことじゃない。 むしろ当たり前だよ。 おれだって斬れなかった」
「そうだよ」
「ああ、人殺しを嬉々とする方が異常だ」
アイとテラリスもそういうが、ヤマトはうなだれたままだ。
「サナ私たちは、ラーシェを探してくるよ」
そういってアイとテラリスは奥へといった。
おれとヤマトは沈黙していた。
「俺は...... 人をきれない」
「だから、それは......」
「いや、ちがうんだ。 俺は剣道で相手を怪我をさせちまってからだ...... それ以来剣をもててない」
「それで......」
「ゲームならやれるかと思ってこのゲームをやってみたんだが、やはり思いだしちまう......」
「別に気にすることじゃないさ。 人を殺す必要はない」
「そうもいかないだろ...... 最悪、誰かが殺されそうになっても、そんなこと言ってるわけには......」
「......それはおれも一緒だよ。 仮にNPC《ノンプレイヤーキャラクター》でも最悪の状況でもためらうと思う。 覚悟をきめるとか、そんな強がっても仕方ない。 それが理性だしおかしくはない」
「......そうだな」
納得はいっていないようだが、ヤマトは静かにうなづいた。
「すみません...... まさか刺客がこんなところにくるとは」
ラーシェがあやまった。
おれたちはラーシェについて洞窟にはいる。
「どうやら、魔法がかけられていて道に迷ったらしいのです」
「みたいね。 私の透視じゃないと道はわからないぐらい、見た目が変化してる」
おれたちはアイの透視をたよりに奥へ奥へとはいった。
「あそこにいる......」
奥をみると、巨大なコウモリがぶら下がっている。
「ミラージュバット。 幻影を見せます...... 視覚に頼らないでください。 アイさんの指示で一斉に攻撃を放ちましょう」
ラーシェが合図し、おれたちは一斉に遠距離攻撃をはなつ。
「ギャアオオオオオ」
断末魔を叫びながらミラージュバットは倒れた。
おれたちは宿に戻る。
「とりあえずネストは破壊しました。 次の依頼まで時間がありますからお待ちください」
そういってラーシェは帰っていった。
「まだ、信頼は得てないということか」
「さすがにひとつだけじゃね」
「それより、ヤマトだ......」
テラリスは心配そうにいった。
帰ってから様子がおかしい。 宿の部屋にこもっている。
「やはり、斬れないことを気にしてるのか」
「なにかメールがきてたみたい......」
「えっ? 知り合い。 今までそんな話、一切してなかったけど」
宿の部屋からでてきた。 その手には剣をもつ。
「すまないが、立ちあいをしてくれないか......」
「えっ? 立ち会い...... どういうことだ」
「実は......」
おれたちはヤマトの頼みである草原へとやってきていた。
そこには一人の少年がたっている。
「あれがヤマトが怪我させたムサシか」
ヤマトにかつての道場仲間がメールを送ってきたという。 それはかつてヤマトが怪我をさせた親友だという。
「......ヤマト、あれから稽古にもきてないな」
「......すまん」
「俺がききたいのは謝罪じゃないんだがな」
そういってムサシは剣を抜く。
「お前がこのゲームをしていると人づてに聞いた...... だから俺もきたんだ。 勝負しろ。 まさか俺のたのみを断りはしないよな」
「だけど...... レベル差が」
「俺はかまわんが、お前がそういうと思った。 これを飲め。 レベルを一時的に下げるレベルダウンポーションだ。 同レベルで勝負しろ」
そういってアイテムを渡す。
「なあムサシ、やめないか。 俺は......」
「人を傷つけるのが怖くなったか、それとも俺への同情か......」
「そんなつもりは...... だが今戦うと死ぬ」
「だからだよ。 俺にとっては好都合だ。 お前にやられた恨みも返せる」
ムサシの目は怒気をふくんでいた。
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