オルタナティブバース

曇天

文字の大きさ
上 下
32 / 60

第三十二話

しおりを挟む
(リンキュルはここの人たちより、おれたちにシンパシーを感じているのか...... だからついてきたのかもしれない)

 そうリンキュルの寂しそうな横顔をみる。

(それにしてもここまで、複雑な感情をどうやって情報処理しているんだ...... 信じられないデータ量のはず、特定のキャラクターだけなのか。 いくらなんでも表面上だけだろうが、それにしても)

「そうか......」  

 おれは言葉につまる。

「サナ、お前のもってるスキルをみせてくれないか?」

「クリアを?」

「私はお前たちにとても興味がある...... 特にプレイヤーしか使えない力に」

「ああ、かまわないよ。 クリア!」

 クリアが姿を現した。

「これがスキルか...... 魔力でもなく、なぜ物理的に存在できる? 無から産み出されるのか?」

 リンキュルはそうぶつぶついいながら、クリアをツンツンとさわっている。

(さすがにリンキュルにプログラムされたAIだといっても理解されないか、もしくは理解してもショックを受けるだろうしな......)

「なあリンキュル、その魔導器《マギカレガリア》ってなんなんだ? 普通のアイテムとは違うのか」

「ん? ああ、これは意思をもつアイテムだ」

「意思をもつアイテム?」

「そう。 魔導器《マギカレガリア》は、そのものが生きているようなもの。 所有者の意思を介し発動する。 そうだなこのクリアのようなものだ」

「そんなものが......」

(AIが入ってるアイテムってことか?) 

「おい......」

 おれが考え込んでいると、リンキュルの声色がかわる。

「あそこに人がいる。 プレイヤーだ......」

 見ると複数のプレイヤーらしきものが、歩いてこちらにやって来ていた。

「プレイヤーがくる!」

 おれたちはすぐみんなのもとに戻り伝える。

「くっ! 【廃鬼人】《ディスコードオーガ》か!」

「ヤマト、まだ決まってないよ」

「とにかく戦闘の時のために陣形を!」

 おれたちはかまえた。 戦闘状態になり相手のステータスが表示される。 

(向こうには敵対する意思があるか)

「おー! いるな。 五人か」

「マジで、こんなところにいるってことは、けっこういいアイテムもってんじゃね」

「おい! プレイヤー三人とNPC《エヌピーシー》2体か、 しかも1体はレベル60だぞ! イベントか!」

「60、ボスか...... いやイベントじゃない、プレイヤーもいるな。 あとは30が三、20か...... どうする?」

 五人ほどのプレイヤーがそういっている。 

「最悪よ...... あいつらのタトゥーみて」

 そのタトゥーは二つの頭をもつ蛇だった。

「【双頭の蛇】《アンフィスバエナ》、PK《プレイヤーキル》のギルド...... お前たちここになにしにきてる」

「あん? ああ、なんかここに【廃鬼人】《ディスコードオーガ》の奴らがきてるってきいてな」
 
「そいつら狩りにきたんだよ。 ひゃははははっ」

(こいつら、あいつらと敵対してるのか)

「私たちは敵対するつもりはないよ」

 アイがいうと大笑いしている。

「そっちがなくてもこっちにはあるんだよ。 せっかく獲物がいるのに見逃すわけないわ」

 その中の女がそう笑いながらいう。

「逃げられないな。 相手は五人、全員レベルは40オーバーか...... 問題はEX《エクストラ》スキルだな」

 リンキュルがそう小声でいう。

「やるしかないか」

「いけえ!! パピルザク!」 

 そう向こうの一人がいうと、おれたちは砂嵐に包まれる。

「くっ! 見えないアイ!」

「三人は三方に、二人いないわ! いえ上に一人。 一人が突っ込んでくる!」

「死ね!」

 ビュンビュン、ビュン!

 砂嵐をさいて無数の斬撃がとんできた。

「アイスゴーレム!」

 リンキュルがゴーレムで斬撃を防いだ。 

「ぐっ! 飛んでくる斬撃か!」

「ヤマト!」

「わかった!」

 テラリスとヤマトが剣をふる。

「クロスブレイド!!」

(連携技か! いつのまに!)

 二人の剣が砂嵐を切り裂く。 空に大きな翼のある女性にのる女が飛んでいる。
 
「下からくる!」

 アイにいわれ飛びのくと、地面から鋭い尻尾が飛び出してきた。

「ちっ! はずした」
  
 巨大なサソリにのった男が地面から現れた。

 ヤマトが双身《ダブルボディ》で二人になると剣をふるい、サソリをきりさく。 

「くそ!」

 男は逃げようとしている。 その時、鳥女が砂嵐を起こした。

(あの鳥女が砂嵐か!)

「こいつらけっこうやる。 俺たちもいくぞ!」

 後ろの二人がそれぞれ魔法で攻撃してきた。 

「危ない! テラリス!」

 おれたちは狙われたテラリスの前にたつ。

「アイスフィールド」

 リンキュルが声が聞こえた、その瞬間、砂だった地面は一気に凍りついていく。 プレイヤーたちの足が固まる。

「なっ!」

「くそ! ハーピー! 砂嵐よ!」

「サナ! 空のやつを!」

 リンキュルにいわれ、おれはストームグラディウスで竜巻のような風を空に放った。

「きゃああ!」
 
 地面に鳥女ごと女は落ちてきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...