オルタナティブバース

曇天

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第九話

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「まさか戦うつもりか! いまどういう状況かわかってるだろ!」

 おれは剣をかまえて牽制する。

「ああ、お前たちがシナリオを進めてるのはな」

「阻止するために殺人を行うつもりなのか!」

「......しょせんゲームだろ。 まあたまたまお前たちが死んだとしても、責任はおれたちにあるのか? せいぜいこのゲームの運営が責任にとわれるだけだ」

「俺たちは別に楽しめりゃ、それでいいんだよ」

「それはあなたたちが死んでもいいってことよね」

 アイがそうすごんだ。

「なに......」  

「私たちも全力で抵抗するわよ。 当然そのとき殺してしまっても仕方ないわよね」

 アイがそういい杖を向けると、相手はすこしたじろいだ。

「こいつ......」 

「ハッタリだ。 こいつらが殺しなんてできるわけねえ」

「ああ、いくぞ」

 三人が剣や槍を向けて、後の二人は杖を向けてきた。

「やるしかないよ......」

「ああ、クリア」

 おれはクリアを呼び、剣をかまえた。

「いけえ!」

 三人が走ってきた。 おれは剣から風を放つ。

「ぐっ! なんだ! 魔法じゃない!?」

「こんな序盤にレアアイテムをもってやがるのか!」

「クリア! 後のやつを狙え」

 相手がひるんでいるすきに、クリアに後の奴らを体当たりした。

「な、なんだこいつ!?」

「モンスター!! テイマー、いや召喚術か!」

 アイは魔法を放つ。

「ぐあっ! あちぃ!」

「痛い! 早く回復しろ!」

「こっちのモンスターがさきだろ!」

 前衛と後衛がもめている。

(よし!)

 おれは近づくと足を浅く切っていった。

「ぎゃあああ!」

「いてえぇ!!」

 男たちが転げ回っている。 さらに後の男たちも攻撃を加える。

「ぐえっ!!」

「ぐはっ!」  

 後の男たちも剣の鞘で殴り付けると気絶した。

「どうも痛みが強くなるのをしらなかったみたいだね。 少しきったら一気に動けなくなった」

「こいつらどうする?」

 転がってる男たちをみてアイにきく。

「勝手にあわててたから、こちらが怪我もおってないしね。 殺すわけにも......」

「だよね。 とりあえずそこらに転がしておくか」

「でも、その前に」

 アイは転がってる男たちのお金とアイテムを取り上げた。

「まあナイフとポーションと転送石は残しておいてあげる」

 そうアイはほくほく顔でいった。

(なかなかしたたかだな)

 おれたちはそのまま町へと戻る。


「いたい! いたい! わかったごめんって!」

 ロニーニ村に戻る途中、クリアに体当たりをうけていた。

「洞窟のとき、風で吹き飛ばしたのを怒ってるんだね」
 
「仕方なかっただろ。 あのままだとおれたちは死んじゃうかもしれなかったんだから...... いたっ! やめろ! HPかへるだろ!」

「戻せないの?」

「なんか戻せなくて」

 おれは心から謝ると、クリアはやっと満足したのか、姿を消した。

「あー、いてて...... HP半分持ってかれた」

「AIだから勝手に行動はするのかも.....」

 そうアイは不思議そうにこっちをみている。

「コントロール不能なのはこまるが...... まあ、戦闘でうごいてくれるからいいか。 二人で攻撃をあわせられるのもわかったのも収穫だ」

「ええ、【ファイアバード】ってステータスにのってる。 【連携技】を覚えたみたいね。 攻撃が重なると獲得できるアクティブスキルみたい」

「かなり有効な遠距離攻撃だ。 それにその【蟲飼いの杖】《インセクトスタッフ》が手に入った」

 おれがいうと、アイは蝶のようなレリーフが先端についた杖を掲げた。 

「うん、マザークロウラーを倒したら手に入った。 私よりレベル下の捕らえた虫を召喚する杖。 試しにクロウラーを捕まえて召喚できたよ」

「それはかなりレアアイテムだね。 レキさんのアイテム表にもなかった」

 おれたちは何体かの虫系のモンスターを捕まえながら帰った。


「村だ」

「あっ! サナさん、アイさん!」

 ディーナがこちらにかけてくる。

「ありがとうございました! イモムシのモンスターがみるまに減っていますよ! これでこの村は救われます!」

 村の人たちからとても感謝された。

「でもみたところ産業もないみたいだし、大丈夫?」

「そうですね。 ですが、モンスターもいなくなったことですし、畑や林業を再開できますので、豊かまではいかなくとも、生きてはいけるとおもいます」

 村長さんは少し悲しそうな笑顔でそう話した。

「それで、サナさんにはこれを」

 村長さんから剣の鞘を渡された。

「鞘?」

「これはうちの村に代々伝わる【湛剛の鞘】《チャージスキャバード》と申しまして、剣を納めていると、その間威力が上がり続るそうです」

(つまり使わないほど威力が上がるのか、これがシナリオの報酬か)

「ありがとう。 遠慮せずに頂戴します」

 おれたちは村人と別れて村を去る。

「さて、鉱山に向かおうか」
 
「そうね」

 そしておれたちは鉱山に向かい、モンスターと戦うと宝石を掘った。

「もう少しほろうか?」

「いや、かなり遠回りしてるし、シナリオでは、そんなにレベルも上がらなかったから、先に進みましょう」 

 今はおれがレベル16、アイはレベル18か、ただ名声だけは400になっていた。


「ほら、次の街ワストエルよ」

 目の前に壮麗な街が見えてきた。

「ここからルーテシア王国の領土か」

「そう。 この国は比較的豊かで安定してる」

 おれたちは街へとはいった。 ワストエルは大きな建物が並び、人々も多く身なりもいい。 かなり裕福な街のようにみえる。

「確かにさっきのバストランド王国よりは豊かみたいだね。 何も問題はなさそうだ」

「表向きはね」

「表向き...... ああレキさんのメールにあった話?」

「そうそう。 この国は今王位継承をめぐって息子の二人が争ってるって話」

「でもメインシナリオには関係ないんでしょ」

「うん。 直接はね。 実際にいま内乱が起こる訳でもない。 でも今までの経験から、何かあるとおもわない?」

 そうアイは口に笑みを浮かべた。

(なんか怖いな)

「なるほど、これにもレアシナリオがあるんじゃないかってことか...... でも王国の問題なんて関わりようがないよ」

「うん。 でもレキさんのメールに宝石の話しがあったでしょ」

「ああ前の鉱山、宝石を手に入れるって話し、それと何が関係するの?」

「あれはここのシナリオ【鍛冶屋クエイグ】に必要なんだって」

「ああクエイグが王宮から無理な宝石の注文をうけて困っていて、それをプレイヤーが解決するって話か」

「そう。 それに私たちの名声なら、何か王宮に関わることが起きるかもしれない」

 二人で町外れのクエイグの工房へとむかった。
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