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第六十八話

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「ディランタさまぁ!」

 悶えていたバグラが声をあげた。

(ディランタ、死神のことか!)

「これは...... どういうことです」

 凍り付くような冷たい目でこちらをみていう。

「はいぃぃい! ジェグロムが魔王をアンデッドにしようとしていまして......」

 バグラは怯えた声でいった。

「かつての勇者ですか...... それで魔王は」

「いま、復活を...... そいつに邪魔されて」

 こちらをディランタはいちべつした。

「人間...... いえ違いますね。 神になりかけか......」

「えっ? 神...... そいつが」

「異神のもくろみか......」

(異神、じいちゃん神さまのことか)

「魔王を復活させてどうするつもりだ」

「知れたこと、この地に住むものたちを滅ぼすのです」

 そう事も無げにいった。

「なぜだ!」

「思いどおりに育たなかったからです。 だからやり直すのですよ」

「なっ!? そんなことで」

「早く、この子をよみがえらせなさい」

「は、はいぃぃ......」

 バグラは飛び立とうとする。

 おれは剣でそれをきろうとする。

 ガキッ!

 ディランタはその細い腕で、おれの剣を受け止めた。

(片手で!? だが!)

 精霊剣を爆発させた。 

 爆煙がディランタをつつむ。

(これでは多分倒せない! 早くアグザから作った魔力結晶を......)

 おれは地面をはね壁にぶつかる。

「ぐふっ!」

 どうやら吹き飛ばされたようだ。 

(力の差が歴然だ...... それだけの力があるのに、なぜわざわざ魔王を復活させる...... バグラたちを使ったのもなぜだ......)

 おれは立ち上がり、魔力をためた。

「無駄なこと、どうせその程度の力では死ぬだけ......」

「......お前たちがわざわざ魔王を復活させようとするのは、人間たちの干渉に決まりがあるんだな」

 ディランタの眉がピクリとうごいた。

「......それがどうしたというのです」

(やはりか...... なら)

 おれは光精霊弾を打ち出す。

「そんなもので......」

 ディランタの前で弾は部屋を照らすほど煌めいた。

 次の瞬間、魔王の体がひび割れ、灰のように崩れだした。

「なんだ!? どうなっている!!」

「これは......」

 バグラとディランタは驚いている。

 おれは姿をかくし扉へむかう。

「!?」

 危機感を感じて飛び退く。

「かわした..... ? ただのやりそこないではないようですね」

「くっ、見えるのか」

「なにをしたのです...... 魔王の体は朽ちぬはず...... それほどの魔力をあなたが持っているとは思えません」

(逃げるのは無理か)

「アグザの残した魔力結晶だ...... あいつはお前たちを憎んでいた」

「......あのものを魔力の結晶に、確かに魔力をためられる体になっていた......」

「ディランタさま! 私がやつを殺します!!」

 バグラはこちらをにらんでいった。

 その瞬間、バグラはバラバラに爆ぜた。  

「がっ...... なぜ」

「もはや、あなたは必要ありません...... 私もこの世界にいられる時間がきたようですね」

 表情を変えずにいるが、その言葉は悲しみを含んでいるように聞こえた。

「あなたたちを滅ぼすのは決定事項です。 再びここに現れるまでの間、つかの間の生を享受するのですね」

 そういうと、その姿は消えていった。


「な、なんだと...... ディランタ、死神がそういったのか」

 シュトロム王とみんなは驚く。

「信じられませんね。 神が我らを滅ぼそうとしているとは」

「ええ、魔王まで使って......」

 トルキア王とナセブ王は顔を見合わせる。

「しかしない話ではない......」

「なにか知っておるのかミルティンどの」

 ミルティン女王にザルデン王はきいた。

「かつて我らが生まれる前にも、人や生物がいたそうだ。 しかし神の怒りをかい滅んだという」

「神話の話ですね」 
 
 ブレンダイン王がいうと、ミルティン女王はいう。

「ああ、今まで十の世界がおわり、今は十一の世界だという」

「十回滅ぼされたということか」

 グランド王は腕を組む。

「しかし、なぜ滅ぼすのだ」

「戦争や貧困、いくらでも人間やモンスターの問題はあるだろうね」

 ベルサス王にシュトロム王がいった。

「まあそういう理由もあるのかもしれないけど...... 違うような気もする」

「どういうことですかな? マサトさま」

 おれは自分が神としてこの地におりたったことなどを話した。 それが必要だと感じたからだ。


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