たまたま神さま、ときたま魔王

曇天

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第六十三話

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 おれはリムリーナをつれて、精霊ちゃんのいう人のいない森にいた。

(ここなら町からはなれて人もいないけど)

『すこし時間をください......』

 いつにもまして真剣な精霊ちゃんにおれはだまった。

「あ、あのマサトさま。 すこしよろしいですか」

 そうおずおずしてリムリーナがいう。

「なに?」

「これは話すかどうか考えていたのですが...... あなたの中に何かがいらっしゃいますか」

「妖精姫なら感じるか...... ああ、おれには大精霊がついているんだ」

「やはり、あなたは人間ではないのですね。 精霊をその身に宿すのは、人やモンスターには無理なはず......」

 隠しても仕方ないので、リムリーナにおれのことをはなした。

「神、それは無礼なことを......」

 そう膝まずいた。

「い、いや、いいんだ。 おれも実感がなくて」

「それなら大精霊を身に宿すのも可能ですね...... そうですか、神が人とモンスターの共存を考えていただけるのですね」

 感極まったようにリムリーナが涙ぐむ。

「神というより、おれが...... だね。 最初にモンスターにあって、それで成り行きでこうなったんだ」

「いえ、これは運命というもの。 私も全力でお力添えいたします」

 そうリムリーナは覚悟したようにこちらをみる。

「まあ、たのむよ」

『......私も覚悟を決めました』

「精霊ちゃん? なに覚悟って」

『あなたが黒いものから作った魔力結晶に私が移ります。 そうすれば私も実体化できるでしょう』

「あれに!? 実体化! そんなことできるの」

『ええ、あなたはもう私の力なしに負の力を扱えます。 私が別の存在になれば、私の維持するリソース分、更に魔力がつかえるでしょう』

「でも大丈夫なの」

『誰もしたことがないので、確実とはいえませんが......』

 おれはリムリーナにきいた。

「大精霊をこの魔力結晶に...... 確かにこの膨大な魔力ならば大精霊を実体化させられかもしれませんが...... どうなるかはわかりません」

「やっぱりやめよう。 リスクが高すぎる......」

『いえ、元々あなたが一定にまで育ったら私は消える定め...... あなたの邪魔になりますから』

「えっ!? そんな」

『私はその運命を受け入れていました。 ですが、すこし私もあなたのことをみていたくなった。 運命に抗いたくなったのです』

 そつ覚悟が声からも感じる。

「おれにできることは......」

『信じていてください』

「わかった......」 

(これは止められない......)

『それでは、魔力結晶に触れてください』

 おれは地面に魔力結晶をおき、それに触れた。 体から何かが魔力結晶へと流れていく感覚がある。

「......魔力がより感じられる。 精霊ちゃん」

 呼び掛けても反応はない。

 魔力結晶がさまざまな光を放っていたが、しばらくするとその光はうすくなっいく。

「これは......」

「精霊の力が小さくなっています......」

「まって!! 精霊ちゃん!」

 魔力結晶を手に取りよびかけるも、反応はなく。 徐々に光が消えていく。

「だめだ!! なんとかしないと!!」

 そして光が完全に消えた。

「精霊ちゃん!! だめだ! おれの力!! 神の力を! 【創造】《クリエイト》!!」

 おれは【創造】《クリエイト》を使った。 爆風のような魔力が周囲に放たれる。

 パキィィン

 そう音がして魔力結晶がくだけちり、光の粒子となって消えていく。

「ああ......」

 手の中の欠片も光へと消えていき、おれは地面に突っ伏した。

「精霊ちゃん......」

「ま、マサトさま......」

 リムリーナが肩をたたいた。

 おれが振り向くと、そこには緑の髪をなびかせた女性がたっていた。

「急に魔力を込めないでください。 予想より変質してしまったではないですか」

 不快そうにその少女はほほを膨らました。

「せ、精霊ちゃん......」

「そうです。 なんですかその顔は、涙をふいてください」

「あ、あの精霊ちゃんさま......」

「なんでしょう? 精霊姫」

「そ、そのお姿を早く......」

「すがた......」

 そのとき、おれもきづいた。

「きゃあああああ!!」

 精霊ちゃんの絶叫が森にこだました。


「ほんとに! そういうデリカシーがないのは、なんとかならないんですか!」

 理不尽に精霊ちゃんにおれは怒られていた。

「いやでも、はだかで現れるなんて思わなかったし......」

「ぐっ......」

 精霊ちゃんは顔を赤くしている。

「精霊ちゃんにも恥ずかしいっていう感覚があったのか」

「おそらくマサトさまが魔力を込めたとき、その情緒の概念も一緒にはいったのかもしれませんね」

「本当に非効率ですね! 生き物は!」

 プリプリ怒りながら精霊ちゃんはいった。

「ま、まあ、成功したからよかったよ。 それで精霊ちゃん。 いやいいづらいから、セイちゃん。 それで魔力感知は抜けられそう」

「せ、せいちゃん...... ええ、精霊である私と妖精姫のならば抜けられると思います」

 おれたちはリズミラ法王国へとむかった。

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