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第六十話

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 おれたちは薬の出所を探して、首都ライドアスのスラムへときてみた。 きらびやかな中心部と違い、一区画が全てがスラムとなっており、夕方なのに暗い。

「中心部はおれたちの国より豊かだったのに、こっちはハストワーンのスラムよりひどいな」 

 無造作に布や木で組んだ家らしきものが並ぶ。

「なんでスか? あっちの人たちはお金があるのに、この人たちを救わないッスか?」

「同胞なのに......」

 ササとキキは言葉をうしなっている。

(まあ、モンスターの中で理性のないものは、同胞もただの奴隷か養分だけど、理性あるモンスターは種族の絆が強い。 これは理解できないのかもな)

 小さな子供たちがまとわりついてきて、お金をねだってくる。

「なんとかならないッスか!」

「いや、今だけ助けても......」

 ササとキキは悲しげに見つめてくる。

「......しかたない。 炊き出しでもするか。 お金を渡すから食材を買ってきて」

 ササにお金を渡すと、ササは鍋や食材を買ってきて、調理を始めた。

「ササって料理できたの? 腕は翼なのに?」

「まあ、姉ちゃんは昔から器用ッスからね」

 キキは料理するササをみている。

「でも族長をかけて戦ってなかった」

「うちらは姉ちゃんが無理するのが嫌だったからッス。 でもリーシェ、デュセ姐さんたちがきて張り合って、しっちゃかめっちゃかになったッス」

「なんかごめん......」

「姉ちゃんは無理するッス。 うちらは昔、山の方にすんでたッスが、人間に追いやられて砂漠にすむようになったッス。 その時大勢、大人が殺されて、うちら子供たちだけで生きていくために人間たちからものを盗んでなんとか生きていたッス」

 そうキキはつぶやいた。

(だから、子供たちを助けたかったのかもな......) 

「ここに炊き出しにきてもらうように店に頼むか」


「それで、これがベルセルクっていう薬か」
 
 おれは店でササがもってきた薬瓶をみる。 中には青い液体がはいっていた。

 あれから、おれたちはスラムに毎日炊き出しに訪れた。

「炊き出しにきていた人たちがいってたッス。 この奥にいる【アザイド会】って奴らがその薬を売ってるって」

 ササはそういった。

(国も調べられなかったことを、仲良くなって聞き出したのか。 ササとキキはコミュ力強いな)

「それがこの薬か......」

 おれは分析するため、少しだけ飲んでみた。

「まずっ!!」

(精霊ちゃん、どうだ?)

『これは負の魔力を多量に含みます。 そのことで欲望が活性化して快楽を得られ、依存性を持たせているようです。 いま成分を中和しています』

「これを治せる薬は作れるかな」

『はい、負の魔力は正の魔力で相殺できるようにできます。 正の魔力を込められるサクトやネオン、リーシェ、デュセならば作ることができると思います』

「そうか、ならさっそくサクトたちに連絡して、生成してもらっておくか」

 そう手紙を送った。

 
 そのあとスラムの奥へとむかった。
 
 スラムの奥、光も指さない場所に大きめの小屋がある。 場違いなほど、ほかとは違いきちんとした建物だ。 中からあかりがもれている。

「アザイド会ってとういうやつらなんだ?」

「元々外の裏社会の奴らで、ここに押し入るようにはいってきて根城にしてるらしいッス」

(つまり反社か...... 黒衣の化者《ダークレイス》が関わってるかもな)

 おれたちは建物にはいろうとするものに紛れてなかにはいる。

 奥の部屋にはいると、大勢人相の悪いやつのなか、一人ソファーにどかっとすわって、金を数えている。

(こいつが反社のボスか)

「それにしても、こんな薬で巨万の富をえられるなんてな!」

 そうソファーの男が小瓶を手に笑みを浮かべる。

「......しかし、ボス、あいつら信用できるんですかね。 どうも薄気味悪くて」

「まあな。 たいした金もいらないからこの薬を売りさばけなんて、あまりにもうさんくさい」

「それにこいつを飲んだやつは、おかしくなっちまいます。 仲間も何人かは」

「飲ませるなといっただろうが!」

「すみません。 興味本位で飲んだみたいで......」

「ちっ、明らかにヤバい薬なのはわかる。 どんどん蔓延してるからな。 もしかしたら、他の国の策略かもな...... まあどうあれ、もうすぐここからおさらばして他で売るぞ」

「でも国が目を付けて、まともに販売できやせん。 どうしやすか?」

「心配ねえ。 こいつには依存性がある。 少しずつ霧状にして国にながしるらしいぜ、それを設置してきたんだからな」

「ああ、あの霧ってそうなんですね」

(あの霧か!)

「でも、そんなのヤバいじゃないですか!」

「おれたちも吸ってるってことですか!」

 子分たちはざわつく。

「心配ない。 霧状にしたら飲むより、はるかに体への吸収率は低い。 じゃなきゃ直接おれたちに売らせたりはしないだろう。 長期間吸いつづけなけりゃ効果はうすい。 ただずっと吸い続けると、他の国にいっても買いに来るだろうぜ」

(そんなことをしていたのか、中和薬を作っていてよかった)

「な、なるほど」

 子分たちは安堵したようすだ。
 
「どうするッス。 こいつら全員捕まえるッスか?」

「いや、この薬の出所が知りたい。 対策をとっているすこし泳がせよう」

 それから、帰って散布している場所の捜索と、精霊ちゃんに霧の成分の分析をたのむ。 

 それからスラムに何日かかよい、しばらく監視しているとボス、アザイドがでていった。 おれたちはそれを尾行する。

 アザイドが町からはなれて、森の中へはいった。
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