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第五十八話

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「はぁ、どこまで続いてんだ......」

 上をみてもまだ頂上ではなさそうだ。 下は雲海になっている。

「ほんとうね」

「ええ、大変」 

「ほんとッスね」

「大変ッス」

「なにいってんだ!! デュセは動く根っこで移動して、リーシェはおれのポケット! ササたちは飛んでるだろ! 歩いてんのおれだけだろうが!」

「空気の精霊や、木の精霊を使えばいいじゃない」

 デュセはそう不思議そうにいった。

「さっきからやろうとしてるけど、精霊がつくれないんだよ」

「むりよ。 ここは精霊が使えないわ。 まあよほど上位の精霊ならあやつれるかもしれないけど」

 リーシェはそういう。

「うちらがだっこして上まで運びましょうか」

(だっこ...... 女の子に、いいかも)

「「だめ!」」 

 デュセとリーシェが声をあわせていう。

「えー なぜッスか」
 
(くぅっ、だっこが......)

 おれは仕方なくあきらめ、神樹をのぼる。

 しばらくすると周囲が暗くなってきた。

『何かが上にいます』

「なにかいるらしい......」 

「......ええ、なんかいるよ」

 緊張ぎみにリーシェがいった。

 みなで構えながら上にのぼると、そこは祭壇のようになっていた。 

「あれは......」

 そこには黒いローブの者が何かをしていた。 おれたちに気づくと、その大柄のローブの人物は、神樹の中から木の人形のようなものを数体よびだした。

「リグレか」

「おかしい、なんで精霊をあやつれるの! 私は呼び出せないのに!」

 そうリーシェが驚いている。

(確かにおれも使えない...... いやいまは)

「リーシェ、デュセ魔法だ!」

「うちらに任せるッス!」

 ササとキキが空を飛んで、その翼をはためかせる。 

「ガストウィング!!」

 すると突風がリグレたちの動きをおさえる。

「ルートウィップ!!」

「リーフバインド!!」

 太い根っこが鞭のように木人形をうちつけ、たくさんの葉っぱが舞うと、木人形に張り付いて固めた。

「魔力剣《オーラブレード》!!」

 おれは伸ばした魔力剣で振り抜き、人形たちを神樹から落とした。

「がぁ!!」

 リグレを固められた葉っぱが地面より伸び蔦《つた》にはねのけられると、そのままリグレにまきついた。

「これは!?」

 蔦がリグレの体をおおい、巨大な人の形となった。

「もう一丁!! ウィングガスト!!」

 キキ、ササの二人の風はリグレをおそうがその中をリグレは歩く。

「なっ!! 効かない」

(リグレの周りになにかが、廻っている!!)

「ストームエレメント......」

 竜巻のような風がキキとササを飲み込んだ。

「きゃああああ!!」

 二人は飛ばされる。

「デュセ!」

「わかってる!」

 根っこがおちていくキキとササをつかまえる。

「こいつ! 風の精霊を使ってる!」

 リーシェがそういう。

(精霊ちゃん! この魔力結晶ならあの竜巻の壁をつらぬけるか!)

 おれは黒いやつを浄化した魔力結晶を握る。

『ええ、ですがそれを使うと、この神樹の上部を吹き飛ばし、ここにいるみんな吹き飛びます。 そして吹き飛んだ上部は下に城や町に甚大な被害がでるでしょう』   
 
(じゃあだめか...... ただあれを抜くのは難しい)

 リグレはデュセやリーシェ、キキ、ササの魔法をまとっている風で弾いている。

『ひとつ撃ち抜ける可能性があります』

「なんだ!?」

『あなたの知識にある銃弾を魔力でつくれば、あれを貫けるでしょう』

(銃弾、魔力で...... か。 やってみるしかないな)

「みんなすこしだけ時間を稼いでくれ!」 

 おれは魔力を集めて放った。 それはリグレの風に弾かれ消えてしまう。

『それでは威力が足りません。 圧縮、回転させて撃ちだしてみてください』

(そうだな。 銃弾は回転しながら飛ぶ。 もっと回転を想像して)

 魔力を回転しながら集める。 さらに圧縮、回転をはげしくする。

「よし! みんなはなれろ!!」

 皆がリグレから離れたとき、おれは魔力弾をうちだした。

 放たれた大きな魔力の弾は音を残しながら飛び、リグレの周りの風をきりさいた。

 ドギュギュギュ!!

 風を弾いてリグレに当たると回転しながらリグレを弾いた。

「ぐ......」

 リグレは奥の壁にぶつかり、祭壇を壊した。

 土煙がきえると、そこにはローブが吹き飛んだリグレが座っていた。 その男の顔がひび割れ、中から女性のような顔がみえた。

「なんだ...... 中に女の人...... 体が人形だったのか」

「ああ! リムリーナさま!!」

 リーシェがそばによる。

「誰だリムリーナって」

「妖精姫よ! 数年前人間たちとでていった!」

「そういえばそんなこと前に聞いたけど......」

『負の魔力をかんじます。 気絶しているうちに、浄化してください』

「ああ、わかった」

 おれはリムリーナから負の魔力を圧縮して魔力結晶を作り出した。



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