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第五十五話

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「いいのですか? 閉山した原因を解決してしまうと、ザイクロフトへの依存が維持されますが?」

 そうクライオがきき、ブレアもうなづく。

「ああ、それに質のいい武具もザイクロフトに渡る。 このまま放置してはいかがですか」

「いや、ザイクロフトとの関係はそのままでもいい。 一番こまるのはこの国にザイクロフトが攻めてくることだからね」

「戦争よりはまし...... ですか」

「そうなったら、確かに困るのは弱い人たちですからね」

 そう二人は納得してくれる。
 
「あったよ。 鉱山...... これは」

 鉱山から黒いよどんだ力を感じる。

「魔力...... 邪悪な」

「これは、確かに...... どこかにこれを産み出しているものがいるのですか? モンスターでしょうか」

「わからないが、なにかいることは間違いないな」

 おれたちは、鉱山内へとすすんだ。

 どす黒い負の魔力が満ちる坑内をすすむ。 あちこちにつるはしやハンマーが乱雑におちている。

「墜ちている道具が壊れてもいない...... ということは」

 そうクライオがつるはしのひとつを拾ってみている。

「この魔力のせいか......」

 奥へとすすむ。

 モンスターがあらわれるも、クライオの触手とブレアの怪力で簡単に倒した。

「結構固いな」

「そうですな。 普通のモンスターの強さではないです」

(二人とも強いな。 結構ヤバめのモンスターだったろ)

「なあクライオは触手と翼と他になにがあるんだ?」

「そうですね。 隠蔽、雷撃、毒、睡眠、麻痺耐性です。 他のキメラたちも似たり寄ったりの能力です」

「さすがモンスターたちを合成した体、我らの再生力もあるでしょうな」

「ああ、あの研究所はぶっこわしたけど、アルフレド王国では研究そのものは残ってるなら、まだつつけてる可能性はあるな」

「あの老人はジェグオム、アルフレドの軍の魔法兵器担当だとはわかりました」

 クライオはそう告げた。

「あのじいさんか」
 
 アルフレドの病院でみた老人を思い出す。

「まあ、それより先にこちらをかたづけるか......」

 奥から凄まじい魔力が放たれている。

「なんだ!? なにがいる」

 おれたちが覚悟して奥へとすすむ。 その広まった場所はなにか神殿のようでもあった。 そこの奥に黒い影がみえた。 

(動いているモンスターか...... だが)

 その黒いなにかは、一瞬で目の前にあらわれる。 人の姿が目にうつる。

「ガァァア!!」

「速っ!」

 クライオがもとの姿にもどり、触手がそいつの手足をとらえている。

「うお!!」

 トロールとなったブレアの拳がその体をとらえる。

 壁にそいつはぶつかり土煙をあげる。

(暗いから、黒くみえてる訳じゃない! 闇のようなすがたなのか!)

 その這いつくばったような漆黒の人間のようなものは、二つの目だけがらんらんと黄色く光っている。

「こいつは!! 人間か!!」

「ありえません! こんな人間がいるはずが!」

「お二人とも きます!」

 地面を蹴り、高速でせまってくる。 左右へ動き目でおえないはやさだ。

「ぐぅっ!!」

 おれたちをかばってブレアが切り裂かれた。

「ブレア!!」

「だ、大丈夫です。 この程度......」

(くっ! いまはこいつだ! 強すぎる! 魔法剣や魔力剣、精霊剣じゃとらえきれない! 動きをとめないと!)  

「すこしだけ二人であいつをたのむ!」

 おれは集中して複数の複合精霊を作りだした。 その間、二人は傷をおいながら黒いやつをおさえてくれている。

「いけ!!」

 おれは精霊を放つ。 

 空気と火の精霊は風をはなち、突風が黒いやつにあたる。 

「グゴォ!!」

 風が黒いやつを吹き飛んだ。 おれは水と土の複合的精霊を、地面から移動させ黒いやつを土で包むと、石の精霊でそれを固めた。

「ガァァア!!!」

 黒いやつは石を破りでてこようとする。

「うおりゃ!!」

 でようとしてもがいている所を、空気の精霊剣《エレメンタルソード》で叩きつけ爆発させた。 その衝撃で黒いやつは飛び散った。 洞窟が揺れる。

「さすがマサトさま!」

「ええ、あれを倒すとは!」

「いや、倒してない......」

「グ......ガァ」

「なんだと!? あれをくらってまだ!」

「すぐに止めを!」

 黒いやつは吹き飛ばされた箇所が再生を始めていた。 二人はそのまま攻撃を続ける。

(こいつ、ただ倒すだけじゃだめだ。 場所的に頭と心臓を吹き飛ばしたのに生きている...... どうする? 一旦引くか。 いやこのままもし外にでもでてきたら...... あれも魔力を圧縮すれば浄化できるか!)

 おれは更に石の精霊を作り、近づく。

「危険です!」

「だめだ。 こいつは殺せないみたいだ。 浄化変換しないときりがない」

「やめてください! こいつは私でもわかるぐらいに明らかに禍々しい!」

「これは力が大きすぎるマサトさまが危険です!」

 二人はとめる。

(......確かにいままでのどの負の魔力以上に感じる。 だけど、このまま放置するのは危険だと、感覚でわかる......)

 おれはその黒いものに触れ、浄化を試みる。

「ぐぅ!!」

(なんだ!? いままでとはよどんだ魔力の量がちがう!)

 頭のなかに殺意と憎悪、心が乾くような感情が流れてくる。

(や、やばい!! 浄化どころじゃない! 抑えるのさえ...... 壊したい...... 全てを! 何もかも! 破壊しろ!!)

 おれは怒りにのまれ、意識をうしないかける。

(だめだ...... このままだとおれが全てを壊してしまう...... 助けて、誰でもいいおれを殺してくれ......)

『いいえ、死なせません。 浄化処理を開始します』

 そう精霊ちゃんの声が聞こえたような気がすると、おれは意識をなくした。
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