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第五十二話

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「以外に反発が少なかったですな」

 サクトは意外そうにいった。

「ああ、魔王復活の話がきいた。 それぐらい魔王の恐怖がいまだに続いているんだろうね。 しかし、ドワーフ、エルフの国とザイクロフト帝国、アルフレド王国とリドミラ法王国だけは国交を認めなかったけどね」

「色々あるのでしょうが、法王国は人間以外、神の敵と定めていますからな。 教義に背くおこないとして、弱腰だと過激な信徒たちからの糾弾も恐れておるのでしょう」

「そういうものいるだろうな。 まあでも、これではれて国となった。 大っぴらに商品も売れるし、人材の教育もできる」

「はい友好国に人をやって技術の取得させましょう」

 それから、おれたちはいろいろと制度の充実をはかる。 各種族の長と話し合い、それぞれ作った機関の長にすえ、税制など法の制定をおこなう。

(まあ、ほぼサクトがやったけど...... おれに政治なんてわからないしな。 せいぜい人間たちと仲良く、ぐらいだ)

 すこし不安だが、おれははれていく空をみていた。


「ここが、ブレンダインか。 リーシェとデュセはどうしたんだよ」

 おれは砂漠地帯にいた。

 ブレンダイン王にハーピーのことをたのまれたからだ。

「あつい~」

 キュルアはふらふらしながら歩いている。

「なんでついてきたんだ? マーメイドにはきついだろ。 帰るか」

「いや、わたし、そとの世界をみたかったの」

 そうキュルアは水魔法で水浴びしながら歩く。

「ハーピーはこの砂漠の先にいるらしいけど......」

「ええ、竜巻を起こしまくって暴れているらしいね」

「ああ、とめないと、二人の魔力もこの辺から」

 魔力が左右に分かれて感じる。

「同じ場所にはいない。 捕らえられたとかか!」

 おれは近くに急いで向かう。

 岩山を見つけた。

「ここだ!」

「マサト!」

 そこには腕が羽で、鳥のような鉤づめの足をもつ女性たちとデュセがいた。

「なにしてんの、あれハーピー!?」

「まあ、話せば長くなるってゆーか」
 
「姐さん! きましたッス!」

 一人のハーピーが、デュセを呼んだ。
 
「向こうから、なんかくるよ!」

 キュルアがいう方向から竜巻がいくつも見える。

「よし! あんたたちいくわよ!」

「おおお!!!」

 デュセを先頭にハーピーたちが竜巻に向かう。

「なんだ!? あれ、向こうからリーシェの反応が」

「いけぇぇ!! あんたたちあいつらをぶっ潰せ」
 
 ハーピーたちを引き連れて、そう叫んでいるリーシェがいた。

 二つのハーピー軍団が空中でぶつかる。 竜巻があっちこっちで放たれる。

「危ない!!」

 その戦いは激しく、そして勝負がつかないまま、リーシェが撤退していった。

「くっ! また引きわけか!」

 デュセはハーピーたちと戻ってくる。
 
「どういう状況!?」


 おれはデュセから事情をきいた。

「ええ!? ハーピーのリーダーになった!?」

「ええ、いまは私がこのハーピーたちの長よ」

「そうっス。 うちら姐さんに襲いかかってボコられたッス」

 そう元々ハーピーの元々の長の一人ササはそういった。

「それでリーシェは!?」

「うちの双子の妹、キキと組んで別の群れをつくったッス」

「それでどちらが本当のハーピーの長か、勝負してるってわけ」

 デュセは胸を張ってそういった。

(これうちの子たちが問題の元凶じゃん!)

「いや、わかってる!? ハーピーを仲間にするんだよ! なんで支配してんの!」

「だから長になってるでしょ? 仲間よ」

「ちがっ...... とにかく仲直りして、ハーピーたちをひとつに戻して」

「いやよ! リーシェがあやまってくるまでやめない!」

 そう横を向いた。

(仕方ない...... リーシェの方を説得するか)

 おれたちはリーシェの方に向かった。


「いやよ! デュセがあやまってくるまでやめない!」

 リーシェは横を向いた。

(こっちもダメだ。お互い頑固すぎて話しにならない)

「戦いだとお互いに怪我をするから...... 勝っても遺恨が残るから」

「いやよ!」

「じゃあ、デュセさんとリーシェさんで勝負すればいいんじゃないかな」

 キュルアがそう提案する。

「勝負...... なんで勝負するのよ」

「そうですねぇ、お料理なんかどうですか? お互いに公平だと思いますけど」

 キュルアがうなづく。

「いいわ! デュセが受けるならやってやろうじゃない!」

(デュセもリーシェも料理を食べてるとこしかみたことない。 なんかいやな予感がする......)


 その予感は的中し、二人の料理対決の味見はおれがすることになった。 テーブルと食材、調理器具が目の前にあり、二人はエプロンをつけた。

「ちょーとまった! なんでおれが味見なの!?」

「しかたないでしょ。 ここに中立なのあんたしかいないんだから」

「そうよ。 キュルアは審判、マサトは食べてどちらが美味しいっていえばいいだけ」

 二人はそういう。

「まて! 食材だけはみる!」

 おれは用意された食材を吟味する。

(ふむ、肉、鳥、魚、ハーブや野菜、香辛料、とりあえずよくわからんものはないな。 これなら食べ物がでてくるはずだ)

「では、料理はじめ!」

「でやあああああ! リーフスラッシュ!」

「アクアエレメント!」

「ちょっ!! なんで魔法と精霊つかってんの!!?」

「うるさい! 気が散る!」

「静かに! 繊細な作業なんだから!」

 二人に怒られる。

(繊細なら魔法とかつかわないだろ。 もう不安しかない)


 そして目の前に料理をだされた。

「デュセさんの料理、実食です」

(見た目は普通のシチューみたいなものか)

 おれは一口食べる。

「うっ!?」

(ま、まずい!! いや不味いとかそんなレベルじゃない! なんだこれ!? たべたそばから黒い魔力の淀みが染みだしてくる! バグラの触手よりひどい!! 回復してるのにそれを上回ってダメージを与えてくる!)

 デュセは余裕の顔をしてこちらをみている。

(なんでこんなもんつくってそんな期待した目でみれるの!? でも一生懸命作ってたからダメだ食べきらないと......)

「は、はぁ、う、うん......」

「おお! 完食! では次にリーシェさんの料理です」

(見た目からひどい!! なんで食材にない紫の色してんの!? でももしかして食べたらってパターンかも......)

「うっ......」

(ぶはっ! まずい! 見た目どおり! いや、見た目以上まずい! 心と体を侵食してくる! 苦しい...... まだ黎湖《ブラックレイク》飲み干したほうがまし! 異世界きて一番きつい! 死んだときよりきつい! これ黒衣の化者《ダークレイス》たおせる!)

 なぜか、リーシェは勝ち誇った顔で、こちらをみてウィンクしている。

(なんでこれでキラキラした目でみれるんだ!? ダメだなんとか食べないと!)

「は、はぁ...... う、う......」

 根性で食べきったが、おれは力尽き意識を失った。
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