上 下
46 / 71

第四十六話

しおりを挟む
「さて、お前たちだが」

 そうキメラたちをカルネアスのトロールたちの集落にあつめる。 二十体のキメラはさまざまな動物やモンスター、人間を合成した姿をしていた。

「我らはこんな姿だ。 人間でもモンスターでもない。 もはやどこにもいけない」

 最初にあったキメラ、クライオはそういった。

「ただおれは、おれたちをこんな姿にしたものたちへ復讐したい!」

 そう多腕のキメラがそういかりをぶちまける。

「ああ! 必ず殺してやる!」

 キメラたちはそう口々にいった。

「それはまて、お前たちに協力してほしい。 そいつらを殺したところで元にも戻れないだろう。 居場所はおれがつくる」

 キメラたちは顔を見合わせていたが、みんなうなづいた。

「......わかった。 どうせ名前以外はおもいだせん。 お前に力を貸そう」

 そうクライオがいうと、キメラたちはみんなうなづく。

「ありがとう。 とりあえずみんなもおれの領界にいてくれ。 必要なら呼ぶ。 バーン、ネオンはキメラたちとかえってくれ」

「マサトさまは?」

「おれは他の二組と合流するよ」

「わかりました」

 キメラたちも荷馬車にのせ、バーンとネオンはかえっていった。

「さて、この魔力...... やはり、アミネイアとコゴルか」

 おれはアミネイアとコゴルのもとにむかう。


 海風のにおいがする。 目の前に大海原が見える。 ここはマイゼン共和国。 水産資源の宝庫ときいていた。

「でも活気もないな。 市場なのに」

 町にはいると魚介が売り買いされているが、売り物も少なく活気もない。

「なんか聞いてたのとは違うな。 ここにマーメイドがいるのか。 まずは」

 この町の店舗に顔をだす。

「マサトさまですか! 私はマイゼン王国の店舗を任されているスクアともうします!」

 元気な褐色の肌の青年がこたえる。

「それでここにアミネイアとコゴルがきたはずなんだけど?」

「ええー? 大分前にきたのですが、てっきり帰られたのかと」

 不思議そうにスクアはいった。

「それでどこにいくと?」

「ええ、えっと、マーメイドの話をしていましたね。 でも......」

「どうしたの?」

「いえ最近、特に海でマーメイドたちが攻撃を仕掛けてくるんです。 昔は溺れたものを助けてもくれたのですが...... お二人はそれを話すと見に行くといって...... まさかとは思いますが」

 そうスクアは肩をおとした。

「まあ、大丈夫だよ。 二人とも魔法や戦闘もかなりの腕だからね」

「そうですよね!」

 スクアは安心した顔をした。

 
(二人の魔力は感じる。 死んではない...... この近くにはいない。 いったいどこに)

 おれは魔力をおい海岸へとやってきた。

 難破船だろうか、いくつかの船の残骸がある。

 磯のほうをみていた、そのとき、突然海から手がのび、おれの足をつかむと海にひきずりこんだ。

「なっ......」

 みると人魚がおれの足を持って泳いでいる。

(このまま引きずり込むつもりか...... いや横に泳いでいる。 だがそんな早くもない)

 とりあえず、もってた剣の鞘であたまを軽くこずくと、人魚は口から泡をだして海に浮かんだ。

 おれは海面へあがる。

「うっ...... はっ! なに!?」

 目をさました人魚の少女は驚いている。

「いたたっ! あー コブが!」

 涙目で頭を撫でている。

「お前はなんなんだ。 なんでおれを襲う。 めちゃめちゃ弱いのに」

「なっ!? 君! 早くここから離れなよ!」

「離れる? どういうことだ」

「......それは」

 そうマーメイドは口を閉ざした。

(わけありか)

「おれは仲間を探している。 女の子と小柄な少年だ」

「それって、あの二人......」

「知ってるのか! どこにいる」

「ちょっと、そっちに!!」

 マーメイドは更に陸に近い岩場におれを呼ぶ。


「その二人は捕らえられてるの......」

「マーメイドにか」

「ええ、新しくマーメイドの長になったアルピュリアさまが、人間たちに戦争を仕掛けようとしてるの......」

 そうマーメイドの少女、キュルアは難破船をみて悲しそうだ。

「さすがにマーメイドは陸に上がれないし、無理だろ」

「なんか、アルピュリアさまが、すごい力を黒いローブの奴らからもらったって、その力があれば人間たちを支配できるって......」

「黒衣の化者《ダークレイス》か」

「そうそう! でも...... 人間たちと戦っちゃダメって前の長が、だから、あそこから離そうと......」

「それで、おれを...... 前の長はどうなった?」

「幽閉されてる。 そう! そこに二人もいるよ!」

「そうか、ならそこにつれてってくれるかキュルア」

「だめだよ! 捕まっちゃうよ!」

「その二人は仲間なんだ。 頼む」

「えっ...... うーん」

 悩みながらもキュルアは、おれをマーメイドの集落へつれていってくれるといった。

「でもどうするの? 行ってもすぐ捕まるし、まず海のなかだよ」

 そうキュルアは心配そうに聞いてきた。

「大丈夫」

(今のおれなら光の精霊、そのものをつくれるよな)

 おれが【創造】《クリエイト》で光の精霊をつくり、その姿を消した。 

(結構魔力をくったが、できた! あとは......)

 そして、作った空気の精霊とまぜる。

「さあ、いこう」

 不思議そうにキュルアがみている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。

西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ? なぜです、お父様? 彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。 「じゃあ、家を出ていきます」

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

処理中です...