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第三十五話

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「ここか......」

 オークとリザードマンの領界近くにあった鉱山まできた。 確かにその鉱山からは黒い水が近くの川に流れ込んでいた。

「ここは、はるか昔閉山している。 だがなんだこの黒い水は......」

 そう困惑するバーンがいう。

「確かに使われている形跡はない......」

 アミネイアがいうとおり、壊れたハンマーやつるはしが無造作に捨てられて朽ちていた。

「この黒い水...... 負の力が強い」

 リーシェが嫌な顔をしている。

(精霊ちゃん、これは?)

『毒液...... あなたがかつてバグズから浴びた病によくにています』

「あれか...... なかにはいろう」

 おれたちは中へと入った。

 
 洞窟内も嫌な感じが漂っている。 モンスターはいないが、そこかしこに骨があった。

「この魔力にあてられたのか......」

 アミネイアは不快そうな顔でみている。

「アミネイアさん、黒衣の化者《ダークレイス》はどうやって関わってきたんだ?」

「ええ、我々が病が広がり困っている所にあらわれ、それがオークたちのせいであるといい、治療を行ってくれました」

「我らにしたのと同じような手だな」

 ゼオンがいった。 

「みなが完全に信じていたわけではありませんでしたが、オークとの確執ゆえ、疑念がつのり、勝手な行動をとるものがあらわれ、ついには族長に手をくだすよう求めるものたちがふえていったのです」

 そうアミネイアは悲しそうにいう。

「私とおなじか......」

 バーンは肩をおとすと、アミネイアはうなづく。

「それをうまくつかれた。 両方に裏切り者をつくり、争わせるそれが狙いでしょうね......」

「ええ、我らもまんまと彼らに踊らされていた......」

「......いるわよ」

 リーシェがいい、慎重に奥の部屋にすすむ。

 そこには大岩のような巨大なイモムシがいて、流れている排水に黒い液を流しているようだ。

「なんだこいつは......」

「みたことないモンスターだ」

 みんな知らないようだった。

「なんにせよ。 倒すぞ!」

 おれたちはイモムシへ攻撃を加える。

 パシィィン

 イモムシへの攻撃は届かず、弾かれる。

「これは!?」

『ゴブリンキングのような魔法障壁です』

「魔法障壁だ! かなり固い!」

 バーンの斧とアミネイアの槍も弾かれる。

 イモムシはこちらに気がつくと、口から黒い糸を吐き出した。

「アースエレメンタル!」

 リーシェが呼ぶと、地面からゴーレムのような岩の人形があらわれ、その糸を防ぐ。

 ジュウゥ!!

 そう音をたてて岩の人形の腕が溶けた。

「何かの毒か!」

「俺がいきますから、マサトさま! 援護を!」

 ゼオンが銀色のたてがみをなびかせ風のようにはしった。

「よし! 魔力剣《オーラブレイト》!」

 おれは上から障壁をきりつけた。 

 バチバチバチッ!

 魔力できりつけると、障壁にあたり火花が散る。

(これでも壊せないか!)

「ファングバイト!」

 ゼオンが飛び、その両腕から二本の牙のような赤い魔力があらわれ、障壁ことイモムシを切り裂く。

 イモムシはのたうち暴れていたが、ゆっくりと動かなくなった。

「おお! あの魔法障壁をきった!」

「信じられない!」

 バーンとアミネイアは驚いている。

(確かに、あれほどの障壁を切り裂くなんて...... おれももう少し強くなる必要があるか)

『それはおいおい考えましょう。 それより、この黒い液体を浄化をさきに』

 おれはイモムシからでた負の力を精霊ちゃんの力で浄化した。


 戻ったあとオークとリザードマンの両者に真実を告げた。 バーンとアミネイアの進言により、二者の族長はおれたちの仲介で和解することとなった。

「こたびは我らのことでご迷惑をお掛けしてもうしわけありません」

「互いに相手に対する不信感ゆえ、容易く悪意に踊らされるとは面目もない」
 
 オークの族長ザッハとリザードマンの族長ハルバインはそう俺にあやまる。

「仕方ないよ。 黒衣の化者《ダークレイス》はそれを知って両者の対立をあおってたんだろう。 あのイモムシのモンスターも、どうやらこの大陸のものじゃなさそうだしね」 

 おれがそういうと、二人は顔を見合わせてうなづく。

「我らがともに話を進めようとすると、いまだ不満をもつものもいます」

「マサトさまは四種族を従え、かなり進んだ文化をもつと聞いた。 そこで我らを導いていただきたいとザッハどのと話しました」

 ザッハとハルバインはそう頭をさげた。

「わかった。 じゃあそうしよう」

 オークとリザードマンも仲間に加えることとなった。
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